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(英文会計)経理のプロセス

前回は、会計には「財務会計」(financial accounting)と「管理会計」(management accounting)があり、経理の仕事は、決められたルールにしたがって淡々とするものというイメージがあるかもしれないが、必ずしもそうではなく、経営者などにも重要なデータを提供する仕事で、かつダイナミックな側面があると書きました。

それをもう少し別の観点で見たいと思います。下の図の上半分は、経理のプロセスを示したものです。

まず、発生する取引を記録していきます。次に、それを帳簿の作成といった形で集計したり、可視化していきます。その技術が「簿記」(bookkeeping)と言えるでしょう(「帳簿記入」の略とされる)。そして、そこからインサイト(気づき)を得て、アクションにつなげます。そのあとは、また取引の記録に戻り、サイクルを回していく中で、前に取ったアクションがどのような効果として表れたかを検証するとともに、次のアクションを取ることになります。

経理のプロセス=データ分析のプロセス

そして、そのプロセスは下半分、データ分析のプロセスそのものです。

ITの進展で、トランザクションの記録や集計・可視化の部分は、だいぶ楽になってきました。

まず、トランザクションとして、取引を仕訳(journal entry)といった形で記録します。ここは、SAPのような大きな会社向けのシステムでも、freeeやMoney Forwardのようなクラウド会計でもそうですが、販売管理や銀行口座の情報、請求書発行といった他機能で生成された情報などをシステム連携させて、なるべくイチから記録しなくてもいいように工夫されています。

特に最近、クラウド会計はEnterprise Resource Planning (ERP)へのシフトが進んでいて、会計だけでなく、人事労務、販売、その他まで領域を広げようとしているようです。顧客の囲い込みと、顧客単価の上昇も当然狙っているでしょう。

[補足] ERPは、「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源をどのように配分し、最適なアウトプットを出すかを支援するシステムです。それがリアルタイムに近い形でできることを売りにしています。

次に、集計・可視化ですが、総勘定元帳(general ledger(G/L))や試算表(trial balance(T/B))、そして財務諸表(financial statements(F/S))といった帳簿への転記や集計も、自動で行ってくれます。また、データを外部のデータベースに出力し、経理以外の情報もカバーした情報基盤を作り、TableauやPower BIなどのBusiness Intelligence(BI)ツールで可視化したりするかもしれません。例えば、モノやサービスの提供が完了し、売上が上がったあとの「事後の情報」だけでなく、見込み客への提案の状況や、受注の情報などを組み合わせることで、「起こったこと」だけではなく、「これからどうなりそうか」までを示そうとするなどです。

このように、今まで手間だったトランザクションの記録や集計・可視化が楽になることが、最近、経理のデジタルトランスフォーメーション(DX)で盛んに語られています。しかし、それは一部だと思います。本来、そのあとには「インサイトの獲得」や「アクション」があるはずなのです。そこにAIといったものが入り、リスクを教えてくれたり、判断をアシストするような機能が出てくれば、本当に「経理のDXが進んできた」と言えるかもしれません。

いずれにしても、ITの進化により、最初の情報をちゃんと入力していけば(それがネックになることが多いのですが)、集計や可視化までは、手間なくほぼリアルタイムに行われるようになってきています。

それにより、経理の仕事が、決められた書類の作成や税金の計算にとどまらず、経営の情報をタイムリーに社内に提供し、経営陣の判断につなげる役割をさらに担うようになっている気がします。

また、経理を経理スタッフや専門家に「お任せ」ではなく(助けは必要かと思いますが)、起業家や個人事業主、フリーランスなど、経営者自身が直接扱える時代になってきているのでは、と思いますし、数字を使った経営のためには、そうあってほしいと思います。

次回は、取引とは何か、そして財務諸表の代表的なものである貸借対照表(balance sheet)と損益計算書(income statement)について、英語での表記も交えながら、説明していきたいと思います。

まとめ

経理のプロセスは、データ分析のプロセスであるともいえ、取引の記録や集計・可視化だけでなく、そこからインサイトを得たり、アクションを取って、サイクルを回していくことが大切になる。

ITの進化は、それをタイムリーに行うことを可能にし、「経理の民主化」を後押しする要因になっている。

  • 仕訳(journal entry):取引を帳簿に記録する方法

  • 総勘定元帳(general ledger、G/L):仕訳を科目ごとに集計したもの

  • 試算表(trial balance、T/B):総勘定元帳から数字を転記し、ミスがないかを確認するために作るもの

  • 財務諸表(financial statements、F/S):財務会計の最終的なアウトプットで、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)などがある







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