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freee会計の「取引の一覧・登録」画面の動作をまとめてみた(2)収益や費用の計上

前回、青色申告で55万円や65万円の控除を受けるのに必要な「複式簿記」や、「発生主義・実現主義、現金主義」といった考え方について説明しました。また、「収入・支出」と「収益・費用」が同じではないことも説明しました。

今回は、これを実際にfreee会計の「取引の一覧・登録」画面の動作に当てはめてみたいと思います。メニューの「取引」から「取引の一覧・登録」を選ぶと出てくる画面です(法人向けも同様です)。

「取引の一覧・登録」の選択

なぜ、この画面を取り上げるかですが、freee会計では仕訳を登録する最も基本的な画面だからです。

前回、「freee会計は使いにくいよね」と言われることがある、と書きましたが、経理の経験があったり、簿記を知っている人にそのようなことを言われます。Money Forwardクラウド確定申告や、やよいの青色申告オンラインなどには、振替伝票や仕訳入力の画面があります。freee会計の考え方をユーザーが理解し、それに合わせて入力するのではなく、「借方・貸方」でどんどん仕訳を入れさせてほしい、ということのようです。

freee会計でも、「確定申告」の中に「振替伝票」があります。

「振替伝票」の選択
振替伝票

確定申告(決算時の仕訳をするため)の機能ですが、日常仕訳も登録できるようになっています。しかし、一番下に「ご注意:振替伝票は入金・支払管理レポートには反映されません。債権・債務データの登録は取引登録をお使いください」と書いてあります。掛けでの取引(売掛金や買掛金、未払金が発生する取引)はここで入れても、入金・支払管理の対象外ということで、それではfreee会計の統合性の良さを活かせません。ここで何でも仕訳登録すればいいということではないようです。

また、「自動で経理」をまず中心に置く考え方もあるのですが、前回書いたように、「自動で経理」は、「銀行口座に入金があった」、「引き落としがあった」といった情報がつながってくるもので、それについての仕訳は自分で登録する必要があります。自動登録ルールを設定すれば、本当に「自動で経理」になりますが、「どういうときに、どういう仕訳を登録すべきか」を理解しなければなりません。なので、まずfreee会計での基本的な仕訳登録を理解した上で、自動化できるところを増やしていくのがいいと思います。

「こういう考え方だから、こう操作すると、こういう仕訳になる」というのを理解すれば、「使いにくいよね」と言っている人のハードルも下がるかもしれません。

画面の動作に戻りますが、まず、以下の2つのパターンに分けてみました。

  1. 収益や費用を計上するとき

  2. 貸借対照表(B/S)の中だけに閉じた取引のとき

これらを2回に分けて説明したいと思います。なお、「仕訳形式プレビュー」を表示させて、「こういう仕訳になる」というのが分かるようにします。

仕訳形式プレビュー

「仕訳形式プレビュー」が出てこないときは、「ユーザー設定」の「表示設定」で、「仕訳プレビュー機能を使う(複式簿記形式を表示する)」にチェックをし、「設定を保存」をクリックします。

「ユーザ設定」の選択
「仕訳プレビュー」の表示設定

パターン1 収益や費用を計上するとき

売上などの収益や、仕入や経費などの費用を計上するときは、画面の言葉どおりに「収入・支出」と捉えるのではなく、「収益・費用」と読み替えた方が分かりやすい気がします。

「収益・費用」への読み替え

パターン1-1 収益のとき

パターン1-1-1 入金がまだのとき

取引例:「サービスを10,000円で提供し、お金は後日払ってもらうことにしした」
仕訳:「(借方)売掛金 10,000(資産の増加)/(貸方)売上高 10,000(収益の増加)」

「収支」は「収入」(収益のつもりで)とし、「決済」は「未決済」とします。

パターン1-1-1 収入・未決済・売上高

貸方に何の収益が入るかによって、借方に何が入るかが変わります。「勘定科目」に「売上高」を入れると、貸方に「売上高」がセットされ、借方には「売掛金」がセットされます。売上高以外の収益を「勘定科目」に入れて貸方にセットすると、借方には「未収入金」がセットされます。

パターン1-1-2 即入金のとき(本当の「収入」)

取引例:「サービスを10,000円で提供し、その場で現金をもらった」
仕訳:「(借方)現金 10,000(資産の増加)/(貸方)売上高 10,000(収益の増加)」

「収支」は「収入」とし、「決済」は「完了」とします。

パターン1-1-2 収入・完了・売上高

「勘定科目」に「売上高」を入れると、貸方に「売上高」がセットされ、借方には「現金」がセットされます。売上高以外の収益を「勘定科目」に入れて貸方にセットしても同じです。

なお、「決済」を「完了」にすると、右側に「口座」が出てきて、選べるようになります。

口座の選択

freeeで言う「口座」は、必ずしも銀行口座だけではありません。「お金を管理している場所」という意味で、手元のビジネスの財布に現金を持っていたら、「現金」という口座になります。クレジットカードを口座として登録することもあります。

ちなみに、上の方に「取引(収入・支出)」と「口座振替」というタブがありますが、ここでの「口座振替」は、いわゆる「銀行口座からの引き落とし」ではなく、「自分がお金を管理しているいくつかの場所の間でお金を移動させる」という意味です(先日、この画面のリニューアル案が一時的に公開されましたが、そこでも「口座振替」という言葉は紛らわしいので変えるかも、との話でした)。

「取引・口座振替」のタブ

もう一つ、聞きなれない言葉が、口座に出てくる「プライベート資金」です。freee会計の個人事業主向けで出てくる言葉ですが、これは「事業主貸」にしたい場合に選びます。

個人事業主の場合、財布をビジネス用とプライベート用に分けていたとしても、「一人の人がやっていること」であり(会社の場合は、「法人」という別の「人」を作り出すので、そうではありません)、2つの財布の間でお金が行き来することは当然のようにあります。

事業主貸・事業主借

収入のときの「プライベート資金」は、ビジネスで得た現金をプライベートの財布に入れたときに選びます。すると、仕訳の借方は「現金」から「事業主貸」に変わります。このパターンを1-1-2'(ダッシュ)としました。

パターン1-1-2' 収入・完了・売上高(プライベート資金)

パターン1-2 費用のとき

パターン1-2-1 出金がまだのとき

取引例:「販売する商品を50,000円で買い、お金は後日払うことにしした」
仕訳:「(借方)仕入 50,000(費用の増加)/(貸方)買掛金 50,000(負債の増加)」

「収支」は「支出」(費用のつもりで)とし、「決済」は「未決済」とします。

パターン1-2-1(その1) 支出・未決済・仕入高

借方に何の費用が入るかによって、貸方に何が入るかが変わります。「勘定科目」に「仕入高」を入れると、借方に「仕入高」がセットされ、貸方には「買掛金」がセットされます。「仕入高」は、販売する商品を仕入れるときにかかる費用です。仕入高以外の費用を「勘定科目」に入れて借方にセットすると、貸方には「未払金」がセットされます。

取引例:「事務所の机を10,000円で買い、お金は後日払うことにした」
仕訳:「(借方)消耗品費 10,000(費用の増加)/(貸方)未払金 10,000(負債の増加)」

パターン1-2-1(その2) 支出・未決済・仕入高以外の費用

パターン1-2-2 即出金のとき(本当の「支出」)

取引例:「アルバイトに給与3,000円を現金で支払った」
仕訳:「(借方)給料 3,000(費用の増加)/(貸方)現金 3,000(資産の減少)」

「収支」は「支出」とし、「決済」は「完了」とします。

パターン 1-2-2 支出・完了・費用

また、ここでも「口座」から「プライベート資金」を選ぶことができ、個人事業主が、ビジネスでかかったお金をプライベートの財布から出したときに使います。すると、仕訳の貸方は「現金」から「事業主借」に変わります。これをパターン1-2-2'(ダッシュ)とします。

パターン1-2-2' 支出・完了・費用(プライベート資金)

以上がパターン1 です。「未決済・完了」は、取引が掛けで行われたのか、現金で行われたかを選ぶものですが、その前に、現金での取引で使う「収入・支出」のどちらかを選ぶように言われるので、「ん?」となります。「収入・支出」は、「今は掛けかもしれないが、最終的に現金が行き来するときに、収入になるのか、支出になるのか」を聞いている、と理解する必要があります。

次回は、「パターン 2 貸借対照表(B/S)の中だけに閉じた取引のとき」について書き、まとめをしたいと思います。
(当初、それもこのページに入れていましたが、分けました)

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