(英文会計)財務会計と管理会計
皆さんは経理の仕事にどのようなイメージを持っていますか。売上を計上する、社外からの請求書を受け付ける、社内の経費を精算するといったイメージかもしれません。また、最終的に貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成するイメージかもしれません。これらの仕事はどうして行う必要があるのでしょうか。
今回は、英文会計に入る前のそもそもの話として、経理の仕事の意味と、「財務会計」と「管理会計」の違いについて書ければと思います。
きっかけ
本題に入る前に、私がこの投稿をしようと思ったきっかけについて、少し触れたいと思います。
私が経理系の仕事に初めてついたのは、米国で上場している日本の会社の投資家向け広報(IR)でした。それまではプロダクト担当や法人営業の仕事をしており、経理系は未経験でした。
その会社は当時は米国でしか上場しておらず、有価証券報告書にあるような日本語の財務諸表ではなく、米国証券取引委員会(US SEC)に提出する年次報告書(Form 20-Fという)にある、英語で書かれた財務諸表にいきなり触れることになりました。また、転職してからは、外資系の会社で、管理会計という、社内の数字を扱う仕事や、データ分析の仕組みづくりをしてきました。
そこで今回、今まで自分が培ってきた英文会計についての知識をまとめたいと思うようになりました。なお、私は米国公認会計士などの資格は持っておらず(簿記2級や、以前にあったBATICのアカウンティングマネージャーレベルの資格は取りました)、会計処理の細かい話は分かりません。どちらかというと、「財務諸表などに出てくる経理データをどのように理解し、活かすか」に関心があります。
財務会計(financial accounting)
では、経理の仕事の意味に戻りたいと思います。売上を計上したり、請求書を受け付けたり、経費を精算したりして、最終的に貸借対照表(balance sheet)や損益計算書(income statement)などの財務諸表(financial statements)を作成する、それらにどのような意味があるのでしょうか。
ひとつは、「それが社外から求められるから」です。
あなたの会社が金融機関からお金を借りるとします。金融機関からすると、「この会社、ちゃんとお金を返してくれそうかな?」と思いますよね。
投資家に出資をしてもらうとします。投資家からしたら、「この会社、つぶれないよな?」、「儲かっているのかな?」と思いますよね。あなたの会社が上場していて、株式が一般の投資家に売買されていたら、なおさらです。
あなたの会社に物やサービスを売っている会社はどうでしょうか。「この会社と掛けで商売して(お金を払うのは後日で大丈夫です、とすること)、ちゃんと約束した日にお金が入ってくるのだろうか」と心配になると思います。
そこで、これらの金融機関や投資家、取引先などの第三者に対して、「現在の会社の状況はこうなっていますよ」と示す必要があります。
その際に重要なのは、「他の会社と同じ基準で取引を記録し、財務諸表を作成する」ことです。会社によって、売上や経費を計上するタイミングが違ったらどうでしょうか。他の会社との比較ができなくなります。すると、例えば、投資家が、あなたの会社と別の会社のどちらに投資すればいいかを決めることができなくなります。
よって、対外的に使われる財務諸表を作成するにあたっはルールが定められており(会計基準といいます)、それにしたがって行う会計のことを「財務会計」(financial accounting)といいます。
[補足] 会計基準は英語で「Accounting Standards」や「Accounting Principles」といいます。アメリカの会計基準のことは「Generally Accepted Accounting Principles in the United States」、略して「US GAAP」と呼び、日本の会計基準は「J-GAAP」といったりします。私は外資系の会社で両方を扱っていましたが、「USではこうだけど、Jではこうだよね」などと言っていました。国際会計基準は「International Financial Reporting Standards」、略して「IFRS」です。それぞれ、ルール化の経緯や、どう定められているかが異なるようですが、目的は、同じルールで作られた財務情報が(横並びで)見られるようにするためです。海外の投資家に自分の会社のことを分かってもらいたいのであれば、日本の会社がIFRS(以前はUS GAAPの場合もあった)を採用することもあります。
管理会計(management accounting)
それに対して、社内で使うための数字を扱うことを「管理会計」(management accounting)といいます。これは、経営者が自分の会社の運営のために必要とするもので、「このルールでやらなくてはいけない」ということはありません。例えば、費用を毎月かかる固定部分と売上に応じて変動する部分に分けて、損益分岐点を見つけ、「黒字になるだけの販売ができているか」を管理する方法や、予算を設定して実績と比較する方法、営業拠点ごとに売上や費用を管理する方法、経理以外の数字も含めて主要な経営指標(key performance indicator、KPI)を設定し、それをモニタする方法など、会社に応じて必要となるルールや仕組みを作り、運用すればいいことになります。
以上の内容を図にしてみました。
どちらも大事
次回からは、まず、取引の記録から財務諸表ができるところまでの一連の流れに沿って、英文会計についてまとめていきたいと思います。財務諸表は対外的に示されることが多いものですから、どちらかというと財務会計に当たるかと思います。ただ、私が両方に携わってきたからなのかしれませんが、そもそも、財務会計のほかに管理会計もあること、また、経理というと、決まったルールにしたがって淡々と処理をするというイメージがあるかもしれませんが、実は経営者に対しても重要なデータを提供する仕事で、かつダイナミックな側面もあることを分かっていただきたいと思いました。
まとめ
経理の仕事には、以下の2つがある。
定められたルールにしたがって、対外的に情報を示す「財務会計」(financial accounting)
会社によって自由にルールを決め、社内で経営者などに必要な情報を提供する「管理会計」(management accounting)