freee会計の「取引の一覧・登録」画面の動作をまとめてみた(3)B/S内だけの取引
ここまで、「複式簿記」や、「発生主義・実現主義、現金主義」といった考え方について説明しました。また、「収入・支出」と「収益・費用」が同じではないことも説明しました。前回からは、それをfreee会計の「取引の一覧・登録」画面の動作に当てはめています。
パターン2 貸借対照表(B/S)の中だけに閉じた取引のとき
前回の説明ですと、この画面は、売上などの収益や、仕入や経費などの費用を計上するためのもので、それが「掛けでの商売」(未決済)か、「現金での商売」(完了)かを選ぶことで、相手側の勘定科目に「売掛金・未収入金」や「買掛金・未払金」、または「現金」を自動でセットするためのものということになります。
そのとき、画面上の「勘定科目」には、収益が何なのか(売上高なのか、その他の収益なのか)や、費用が何なのか(通勤交通費なのか、消耗品費なのか)をセットします。家計簿の費目のような感じになっていて、「収支」で「収入」か「支出」のどちらを選ぶかで、表示される勘定科目の候補も変わります。
しかし、この画面では、そのような収益や費用を計上する取引に限らず、B/Sの各要素だけに関係する取引も登録できます。その場合は、「収入・支出」を「収益・費用」に読み替えなくてもいいと思います。
勘定科目の候補に、P/LのものもB/Sのものも混ざって出てくるので、そこからB/Sのものを選ぶ必要があります。
パターン2-1 収入の場合
取引例:「銀行から1,000,000円借りた」
仕訳:「(借方)現金 1,000,000(資産の増加)/(貸方)短期借入金 1,000,000(負債の増加)」
パターン2-2 支出の場合
取引例:「銀行に200,000円返した」
仕訳:「(借方)短期借入金 200,000(負債の減少)/(貸方)現金 200,000(資産の減少)」
ただし、同時に利息の支払いもする場合は、借方が「短期借入金」と「支払利息」になりますので、「詳細登録」で複数行に渡る仕訳登録(複合仕訳という)をしなければなりません。
もう一つ、例を挙げてみます。
取引例:「200,000円のパソコンを買った(通常の固定資産扱い)」
仕訳:「(借方)器具工具部品 200,000(資産の増加)/(貸方)現金 200,000(資産の減少)」
10万円を超える資産を買ったときは、このように計上し、合わせて「確定申告」の「固定資産台帳」で、資産の登録などをしなれけばいけません。
ただし、この話は、借入で現金が入ってくる、返済で現金を返す、固定資産の購入で現金が出ていく、といったことを想定していて、「決済」は「完了」を選択しておかなくてはなりません。固定資産をクレジットカード払いで購入するといったときは「未決済」を選ぶことになり、パターン1と同じように、「まだ支出が起こっていないが、最終的には支出になる取引」として記録することになります。
まとめ
いかがでしょうか。パッと見たところ、家計簿やおこづかい帳のように、現金の収支のみを登録する画面のように見えつつ、実際には、以下のようになっていて、それらを理解していないと、正確な登録は難しいような気がします。
収益と費用が登録できる
「決済」を「完了」にすると、収入と支出の入力になる(厳密には、こう指定したときだけ、家計簿やおこづかい帳と同じような記入になる)
「口座」を「プライベート資金」にすると、ビジネスの財布とプライベートの財布を超えた取引(「事業主貸」と「事業主借」)が記録できる(個人事業主の場合)
「勘定科目」に何をセットするかで、相手方の勘定科目が変わることがある
ただし、勘定科目はP/Lの収益や費用の種類だけを意味せず、B/Sの勘定科目を指定することで、B/Sの中で閉じた仕訳も登録できる
いつも自分が取引登録するときには、毎回、このようなことを頭の中で考えながらやっていますが、いまだに間違えることもあります。例えば、プライベートの財布で費用を払ったときに、無意識に口座を「現金」にしていたため、あとでB/Sを見たら現金がマイナスになっていた、などです。
「仕訳プレビュー」を見るのは、必須のように思います。そして、それで合っているかを判断するには、簿記の知識も必要になります。Money Forwardや、やよい(弥生)にすると、なおさら必要になるので、「急がば回れで、まず簿記を学んだ方がいいですよ」とお勧めしており、今回も、まずは背景となる簿記の知識を書いた上で、ソフトの使い方を書いてみました。
「ここまで紐解かないといけないなら、もう、普通に仕訳を入れさせてほしい」という経験者の方の意見も分かる気もします。それだけでfreeeを嫌いになるのは、もったいないですが・・・
また、実際に使い始めてみると、この画面で最初から取引を登録することは少なくなってくるかもしれません。「自動で経理」で、連携されてくる口座の金額の増減情報に対して仕訳をしたり、請求書の発行機能で仕訳をすることも多いように思うからです。むしろ、そのような「流れ」で使った方が、freee会計の良さを活かせるでしょう。しかし、そのような他の機能で取引登録する場合も、考え方や使われる用語は同じで、それを理解していないと、間違った登録になってしまうため、まずこの画面から説明しました。
初心者の方、経験者の方の助けになれば嬉しいです。
次回は、「Money Forwardクラウド確定申告」の取引登録画面の動作について、まとめてみたいと思います。「各社のウェブサイトを見ただけでは、違いが良く分からないし、お試し利用といっても、どう試せばいいか分からない」という方は、ざっと見ていただくだけでも、参考になるかもしれません。