オフィス出社の理由、誤解されてるかもしれないです。
あなたの企業で出社を促している理由はなんですか?
リモートワークでも十分に成果を出せると実感する企業が増え、リモートワークとオフィス出社を組み合わせるハイブリッドワークの形を選択する企業も多くなっています。その中で、様々な理由から「出社人数をもう少し増やしたい」と考えることも。この場合、マネジメント層の伝え方、組織の取り組み方によってはオフィス出社が求められる理由をメンバー層が誤解している可能性があります。
アメリカの事例では、Appleがリモートワークを制限する決定をし、従業員から反発の声が上がった事例やテスラのイーロン・マスクが「出社か退職か」を半強制的に通達した事例もニュースで大きく取り上げられました。
出社を促す理由として「コミュニケーションのため、イノベーションのため」という説明でなんとなく伝わるかもしれませんが、具体的なメリットが想像しにくいことも確かです。そこで、重要になるのが「オフィス出社したら、コミュニケーションが進んで、新しいものが生まれた!」が実感できるオフィスでの体験ではないでしょうか。オフィスで集まる体験を設計するために、組織で働くことの観点から「なぜ集まるのか」を考えてみましょう。
なぜ組織で働くのか
組織とは人の集まりですが、ただ集まって単純作業をしているだけではないはずです。情報共有、意見の交換(時には衝突も)を繰り返しながら建設的なコミュニケーション、コラボレーションを日々繰り返して、物事を前に進めようとしています。つまり、人々が集まることの相乗効果によってより大きな事業を動かしているわけです。
採用プロセスの中で、候補者も採用側も「この会社に自分は合うのか」「この候補者は合うのか?」を見極めるために、時間や労力をかけているのではないでしょうか。組織の中で仕事をする私たちは、ただ作業をする機械としてでなく、人間としてコミュニケーションを取りながら仕事を進められる存在として、一定のスキルレベルや企業文化にマッチした人々の集まりだということを忘れてしまいがちです。だから、人の集まりとして相乗効果を生むためにどうすればいいのかを考えるのが、マネジメント層の仕事の一つだと考えられます。そして、その答えはいくつもありますし、企業によっても異なります。
人の集まりとしての相乗効果は、コロナ前の原則オフィス出社の頃には感じやすかったのかもしれません。一緒に仕事をしている人もそうでない人も、オフィスで見かけたり、挨拶やちょっとした会話をしたりということがあっりました。しかしコロナ禍でリモートワークが浸透すると、決まった時間にWeb会議でしか話さない、声は聞くけどカメラOFFなので顔を見ることが減った、テキストベースのやりとりしかしていないなど、状況が大きく変化しました。「このままでOK!」という企業やワーカーもいれば、「組織としての最大価値を発揮するには?」と疑問をもつ経営層、「組織で働く意味あるっけ?」となるワーカーもいます。
偶発的なコミュニケーションのきっかけは意図的に
オフィス出社時とリモートワーク時の雑談の違いはなんでしょう?そのひとつには、「偶発的かどうか」があげられます。オフィスでは「たまたまその場にいたから」ということで、タイミング・相手・内容の点で偶発的な会話が起きやすくなっています。一方で、リモートでは予め設定していたWeb会議でしか話さない、こちらからメッセージを送って会話をスタートするというコミュニケーションが多く、決まった時間・相手・トピックの会話がほとんどになってしまいます。そこで、「たまたまその場にいたから」を誘発するために、意図的にきっかけを作ってオフィスに集まってもらうことが有効です。
例えば、社員総会やチームミーティング、1日研修、ワークショップなど何か集まるきっかけがあれば、その日のうちに雑談が何度も起きるはずです。たとえば、チームミーティングなど少人数しか集まらないイベントでも同じ日に複数開催すれば、普段は関わりが薄いチームともオフィスという媒体を介してコミュニケーションをとるきっかけができます。集まってよかったという体験ができると、「次もやろう」という流れができてきます。
たとえば、セール部門マネージャー会議と技術部門マネージャーのワークショップを同じ日にオフィス開催し、部門を超えた偶発的コミュニケーションが起きれば、問題解決につながる会話も起きることもあります。また、ここで良いオフィス体験ができたマネージャー陣が、メンバー含むオフライン会議を同じ日にやろうと企画すれば、その体験は社内に波及していきます。
マネジメントの「集まって欲しい」を、メンバーの「集まりたい」に変える
リモートワークが普及し、オフィスに集まらなくても仕事ができる時代になりました。なのに、「あえて集まって欲しい」と思うマネジメント層が多いのはなぜでしょうか?それには企業ごとにちゃんとした答えがあるはずです。その思いを伝えるには、メンバー視点で納得できる体験設計が求められています。マネジメントの「集まって欲しい」思いとメンバーの「集まりたい」思いが合致することが理想です。そのためには、実体験を含む試行錯誤を少しずつ繰り返してみましょう。
そして、大事なのは最終目的。多くの企業にとって、最終目的は成果の最大化のはずです。その手段がオフィス出社なのかリモートワークなのか、2つをうまく組み合わせたハイブリッドワークなのかは企業の選択次第です。みんなが働きやすく、パフォーマンス発揮できる環境づくりのため、オフィス体験の設計を選択肢の一つとして取り組んでみるのもいいかもしれません。
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