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2021年、宗教にできることは?

『スモール・イズ・ビューティフル』
深夜にたまたまNHKをつけると、落合陽一氏が「2021年に読むべき1冊」としてE・F・シューマッハーの『スモール・イズ・ビューティフル-人間中心の経済学-』を推薦し、そこで示される「仏教経済学」を紹介していた。

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へぇ、と懐かしく久しぶりに本棚から取り出してみると、なるほど1973年に出版された本書だが、いま読み返しても頷けることが多い。

「生活水準」を測る場合、多く消費する人が消費の少ない人より「豊かである」という前提(略)仏教経済学者にいわせれば、この方法は大変不合理である。そのわけは、消費は人間が幸福を得る一手段にすぎず、理想は最小限の消費で最大限の幸福を得ることであるはずだからである。(略)
適正規模の消費は、比較的に低い消費量で高い満足感を与え、これによって人びとは圧迫感や緊張感なしに暮らし、「すべて悪しきことをせず、善いことを実践し」という仏教の第一の戒律を守ることができる。物的資源には限りがあるのだから、自分の必要をわずかな資源で満たす人たちは、これをたくさん使う人たちよりも相争うことが少ないのは理の当然である。

--『スモール・イズ・ビューティフル-人間中心の経済学-』第四章「仏教経済学」より

そのまま視聴を続けていくと、番組は【コロナ禍に揺れた2020年を抜け、2021年「大回復=グレートリカバリー」へと歩むヒントを探る】という内容らしい。終盤にドイツの哲学者マルクス・ガブリエル氏が提唱された“NEW ENLIGHTENMENT(新しい啓蒙)”の項は印象的であった。

NEW ENLIGHTENMENT(新しい啓蒙)

「新しい啓蒙」とは、ある人が次にどうすべきか、自分で気づくよう、促すことです。(マルクス・ガブリエル)

なるほど、「促す」行為になにか恣意的な・介入的なニュアンスを感じないでもないが、気づきが大事という点は実感をもって頷ける。NHKはこう続ける。

「社会全体を気づきで満たし、政治や科学ではカバーしきれなかった領域をカバーしていく。非常事態に疲れ果て、政治や科学に反感を持ってしまいがちな今こそ必要な、互いに気づき、気づかされる関係。それが新しい啓蒙」

宗教にできることは?
そこはまさに宗教家が担っていくべき役割なのだろう。冒頭に紹介した「仏教経済学」のように、宗教の見地に立脚したものの見方が求められているのならば尚更だ。

さて今年、当WORKSHOP AIDができることはなんだろうか?
イスラム教・キリスト教・仏教の三宗教が集うわれわれだからこそ、できることはきっとあるような気がしている。

まずは、ここで祈ろう。
読者皆様にとって本年がよい1年となりますように。


<了>


Text by 中島 光信(僧侶・ファシリテーター)


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