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#5 「難しい」は人の思考を止める悪魔のワード

こんにちは、ワークショップデザイナーの相内洋輔です。

先日とあるアイデア共創のワークショップを開催していたら、会場から「難しい.…」という呟きがぽつぽつ聞こえて来たんですよ。

正直お題の難易度はそんなに複雑ではなく、一般的な大人だったら問題なく考えられる内容でした。

にも関わらず「難しい」という気持ちが先行するということは、アイデア出しに対する抵抗感、言い換えると自己開示への嫌悪感が、組織全体に蔓延しているのだろうと感じました。

アイデアが出せない大きな原因の一つは、心理的安全性の欠如です。

「難しい」という言葉はワークの難易度が高い時だけではなく、この人たちの前でアイデアを披露するのはツライと感じている時にも用いられるのです。


「難しい」は思考停止を誘発する

この「難しい」という言葉って本当に恐ろしい力を持っていて、百害あって一利なしなんです。

というのも「難しい」という言葉は、人が本来持っている思考力を著しく低下させてしまう悪魔のワードなんですよね。

以前、ファシリテーターが言ってはいけない「参加者の思考を止める」NGワードという記事をブログに書いたのですが、

「難しい」という言葉は参加者を「難しいモード」に引き込み、実際は考えられる内容も考えられなくしてしまい、難しいからできなくて大丈夫だよねというムードを蔓延させ、場が停滞してしまうのです。ですから使えば使うほど、対話の成果が下がります。

そのためファシリテーターは「難しい」という言葉は避けるが吉ですし、参加者が「難しい」を連発するようなら、即座に介入が必要です。放置しておくと、ワークショップはどんどん手詰まりになっていきます。

ワークショップに限らず、口癖のように「難しい」を連呼している組織は要注意です。知らず知らずのうちに、自分で自分に呪いをかけてしまっていまないか、一度チェックしてみることをおススメします。

ネガティブを転換する「リフレーミング」

同様のマイナス効果をもたらすネガティブワードは、他にも多く存在します。そのためファシリテーターは自らの発言と参加者の発言に常に気を配り、全体に悪影響を及ぼす可能性のある言葉には、素早くリフレーミングのテクニックを活用することが求められます。これはファシリテーターにとって不可欠なスキルです。

リフレーミングとは、一見ネガティブに感じられる事象も、視点や捉え方を変えることで、解釈やムードが大きく変わるという心理学の用語です。

ネガティブな物事や状況も別の視点から捉え直すことで、前向きな視点が獲得され、コミュニケーションが盛り上がり、ポジティブな空気を生み出すことができます。

リフレーミングの一例としては、「コップに入った半分の水」の話が有名です。「コップにはもう半分しか水が入っていない」と解釈するか、「まだコップには半分も水が入っている」と思うかで、状況の捉え方が変わる、という話です。

どちらも水の総量は変わらないのですが、どう解釈するかによって、思考に伴う感情や感覚は大きく変わるものです。

リフレーミングはビジネスパーソンの必須スキル

ファシリテーション中は、参加者のネガティブな発言、ネガティブな態度に直面することがしばしばあります。これらを放置すると、場のエネルギーは急降下してしまいます。

エネルギー無き対話に、未来はありません。

このため、相手の意見や、意見に伴う感情ははしっかりと受け取りつつも、リフレーミングを上手に活用して、ネガティブなムードの蔓延を防ぐことが重要です。

例えば、「新しいサービスを営業したら、◯◯な点が使いにくいから要らないと断られた。全くダメだ」という共有があった場合、

「つまりサービスの改善点を発見できた商談だったんですね! それは次に向けた収穫でしたね」とポジティブな視点にフォーカスを当てられたら、参加者のマインドや場の雰囲気はガラリと一変します。

リフレーミングは、上述した心理的安全性の醸成とも相性バッチリです。昨今の心理的安全性ブームを鑑みれば、ファシリテーターに限らず、ビジネスパーソンは必須で覚えておいた方が良いスキルだと思います!

リフレーミングは日々のクセづけから

リフレーミングを身につけるためには「ネガティブな出来事に出会ったら即座にリフレーミングしてみる」を習慣化するに限ります。

例えば「人の話を聞かない方」に出会ったら、「芯が強い人だな」「外部環境に振り回されないな」「自分の世界を持っている方だ」なんて言い換えてみるんですね。

1つのパターンだけでなく、複数のアプローチを考えることで、より物事の本質的な側面が見えてきますから、数にはある程度こだわりましょう。

そうして何回もリフレーミングを繰り返しているうちに、ネガティブな事象に隠れたGoodポイントを探す思考回路が備わり、ある瞬間から息を吸うように言い換えができるようになります。ちなみに私は、1年くらい意識してトレーニングしました。

ポイントは「始めのうちはこじつけでOK!」というマインドセットで取り組むことです。最初から完璧にやろうとしすぎると、身に付くものも身に付きません。中学生の悪ノリくらいのイメージで、楽しくやってみてください。リフレーミングは使える機会が幅広く、生涯を通じて活用できるスキルなので、コスパ抜群です。

冒頭で取り上げた回も、もし参加者の誰かが「難しい。でも、考え甲斐があるということだね!」「みんなで知恵を出し合うべきテーマということだね!」と一声リフレーミングした意見を共有してくれたら、高確率でアイデアが生まれ続ける時間になったろうと思います。

ネガティブをそのままにしない姿勢が共創を生む

ということで今日は「難しい」というワードを切り口に、リフレーミングの重要性について書いてみました。

「難しい」という言葉はアイデアの芽を摘む悪魔のワードであり、特にワークショップなどのコラボレーション環境では心理的安全性を損なう原因ともなります

ファシリテーターはこの言葉の使用に警戒し、参加者がネガティブな言葉を連呼する場合には、リフレーミングのテクニックを駆使してポジティブな方向に場を転換する必要があります。

また、リフレーミングはネガティブな出来事に対する新たな視点を見つけ、コミュニケーションを活性化させる重要なスキルであり、ビジネスパーソンにとっても必須の能力と言えます。

みんなが上手にリフレーミングできるマインドとスキルを持っていたら、アイデア共創力が高まり、ひいては日本全体のイノベーション増加につながるはずです。

衰退していく日本にはアイデア共創が必要!

これから日本がより直面していく人口減少×超高齢化の社会では、既存の延長線上で物事を考えるのではなく、新しい枠組みでアイデアを考え、パラダイムをシフトしていくことが必ず求められます。

特に私が生まれ育った東北地方は、この傾向が顕著です。私は日本のローカルな部分がとても好きなので、地域のコミュニティが心身共に健全な未来を作っていくために、引き続きたくさんの対話、アイデア共創ワークショップをお届けしていきたいと思っています。

ぜひたくさんのご依頼をお待ちしております!

ワークショップデザイナー
相内 洋輔

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