kanako-kikaku

記者・編集者・批評家・恋愛評論家。ときどきTVドラマや映画やお芝居の批評を更新します。もっと時折、その他のことも書きます。

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最近の記事

NHK、お前もか! 野菜高騰報道、テレビ各局の取材先がみな同じ

このところ、テレビ報道で気になることがある。野菜高騰、野菜不足を報じる「店頭の絵」が、民放のワイドショーやニュースからNHKの「朝イチ」まで、どこも同じスーパーで取材されているのだ。町ネタには記者クラブも「縛り」(取材規制)もないはず、なのに。いまの取材現場の裏事情が透けて見える。 テレビ報道で常連になっている店は、東京都練馬区のスーパー「アキダイ」だ。 野菜なら「アキダイ」、各局御用達 天候によって野菜が「高い」「安い」といったニュースは定番ネタである。その時、その事実

    • 「なんだかな」の3つの理由 映画「シェイプ・オブ・ウォーター」”美女と野獣”なのだけど(ネタばれ有)

      鳴り物入りの映画だったのだが、なんだかな、なのである。 映画「シェイプ・オブ・ウォーター」。 その、「なんだかな」が、何なのか、ずっと考え続けている。 米アカデミー賞の作品賞、監督賞など4部門受賞作品である。ベネチア映画祭でも金獅子賞を獲得。名匠・ギレルモ・デル・トロ監督による話題作であることは間違いない。 1962年米国の、とある秘密研究所を舞台にした「美女と野獣」だ。ディズニー版で、美女ベルに横恋慕した乱暴者ガストンが、邪魔な野獣を殺そうとして死んでしまうがごとく

      • チャーハンの男

         土曜の昼は、いつもチャーハンだった。    冷凍ご飯に、冷蔵庫の隅っこで干からびかけたピーマンや玉ねぎ、賞味期限を2日過ぎたハムや卵、時には前日の残り物の冷えた唐揚げが刻まれて入ったりもした。  作るのは、「ちゃーちゃん」だ。  ちゃーちゃん。47歳、バツイチ。優しすぎるのが玉に瑕の、さえない中年男。ちゃーちゃんの「ちゃー」は、チャーハンの「ちゃー」。やる気はあるものの、からきし料理が下手なちゃーちゃんの、唯一の自信料理がチャーハンだった。  休日の気安さで、遅寝を

        • MONDO GROSSO「偽りのシンパシー」はJ・ジュネか「危険な関係」か フランス近代恋愛小説の濃密な官能性を想起

           MONDO GROSSOの楽曲「偽りのシンパシー」がいい。  TBSドラマ「きみが心に棲みついた」(火曜22時~)の挿入歌だ。アイナ・ジ・エンド(BiSH)の歌声が官能的なのもいい。何かを、思い起こさせる。めくるめく、濃密な「堕ちていく」感覚。この、遠い、懐かしい、既視感(デジャヴュ)——  ドラマは、いじめのような、厳しい支配・従属関係にあった男女の関係性を描く。それは疑似恋愛だ。支配側だった男性は相手を「おもちゃ」として捉え、従属側だった女性は相手と「恋愛」している

        • NHK、お前もか! 野菜高騰報道、テレビ各局の取材先がみな同じ

        • 「なんだかな」の3つの理由 映画「シェイプ・オブ・ウォーター」”美女と野獣”なのだけど(ネタばれ有)

        • チャーハンの男

        • MONDO GROSSO「偽りのシンパシー」はJ・ジュネか「危険な関係」か フランス近代恋愛小説の濃密な官能性を想起

          少女の鬱屈と成長描く、映画「大和(カリフォルニア)」 基地の町の被抑圧感=未成年の不自由さ

           映画「大和(カリフォルニア)」(宮崎大祐監督)は、現代日本版「青春の蹉跌」だ。首都圏の郊外に住む10代の少女の鬱屈と成長を描く。貧困と無知ゆえに明日への希望も展望もなく、ただ若さを持て余してイラつく未成年の不自由さは、舞台である米軍基地の町の被抑圧感に通じる。  神奈川県大和市が舞台。高校に進学せず、友達もいない少女サクラは、シングルマザーの母とオタクの兄と3人暮らし。貧しさや社会や自分自身に、いつも苛立っている。ラッパーに憧れ、一人で歌を作っているが、発表する場も勇気も

          少女の鬱屈と成長描く、映画「大和(カリフォルニア)」 基地の町の被抑圧感=未成年の不自由さ

          もう六段、中学生棋士の藤井五段、羽生竜王に勝つ 将棋界の貴乃花vs千代の富士

           中学生棋士の藤井聡太五段(15)が2月17日、将棋の朝日杯で優勝して六段への即日昇進を決めた。しかも公式戦初顔合わせとなった羽生善治竜王を破ってのこと。優勝インタビューで「まだまだ自分に足りないものは多い」「日々精進して上を目指したい」と答えるなど、おごらない姿勢は相変わらず。羽生・藤井対局は、さながら21世紀の千代の富士vs貴乃花。世代の対決がしばらく楽しめそうだ。  藤井六段は2016年10月にプロ入りしたばかり。わずか1年4カ月で、四段から六段になった。この間、プロ

          もう六段、中学生棋士の藤井五段、羽生竜王に勝つ 将棋界の貴乃花vs千代の富士

          福田美蘭、たすき掛けの「だまし」 ドラえもん展、行ったら見える 現代アートの罠

           28人の現代アート作家が、自らの「ドラえもん」を表現する展覧会「THEドラえもん展TOKYO2017」(東京・森アーツセンターギャラリー、2018年1月8日まで)。アニメのパロディーと言ってしまえばそれまでなのだが、現代アートという「ひみつ道具」を使うことで、商業作品=消費財=が耐久財=アート=へと価値転換がなされた。現代アートのフェイク性を認識したうえでの企画コンセプトは、さすがは現代アートの旗手・村上隆による企画だ。  村上の呼びかけで参加したのは、奈良美智、森村泰昌

          福田美蘭、たすき掛けの「だまし」 ドラえもん展、行ったら見える 現代アートの罠

          かき揚げそば族急増中?ドラマに影響されて

           やっぱりNHKはすごい。その影響力の大きさを感じる、こんな出来事があった。  今日の昼、遅い昼食をとった時のことだ。立ち食いそば屋で、「かき揚げそば」を食べた。そして、カウンターで注文の品が出てくるのを待つ間、後続客から次々と入る注文を聞いていて、ふと気づいた。「かき揚げそば」率、異常に高し。  改めて見渡すと、一つ置いた隣の30代女性客も、奥のテーブルの中年男性も、「かき揚げそば」だった。3人か4人に1人くらい、違う献立が混じるが、それにしても「かき揚げそば」は大人気

          かき揚げそば族急増中?ドラマに影響されて

          座間事件9遺体の衝撃 不動産オーナーの心配とリスクヘッジ

           神奈川県座間市のアパートで、男が9遺体を隠していたという報道が10月30日夜、流れた。衝撃を受けた不動産オーナーも多かったのではないか。アパート経営を副業にするサラリーマンや年金の足しにする高齢者にとって、最大のリスクが「空室リスク」。こんな事件が起きたアパートは、この1棟まるまるが事故物件となり、今後の客付けに苦労することは想像に難くない。自分の物件がそういうリスクをヘッジするには、どうしたらいいだろう。(写真は本文とは関係ありません)  新聞によると、アパートの室内か

          座間事件9遺体の衝撃 不動産オーナーの心配とリスクヘッジ

          ひよっこ「母不在の東京」が暗示するもの みね子は「昭和のおっかさん」化、だから懐かしい?

           NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」は、さまざまな深読みが可能なドラマだ。その一つが、なぜ、奥茨城村の家族はどこも父母が揃っているのに、東京の家庭はどこもみな「母不在」の片親なのだろう、という疑問だ。「母がいない東京」は、何かの暗喩なのだろうか。  赤坂、という場所柄だろうか。まず、主人公のみね子(有村架純)が働く「すずふり亭」のシェフ省吾(佐々木蔵之介)は妻が他界、一人娘・由香(島崎遥香)は母不在の中で育った。その由香を慕う幼馴染、近所の和菓子屋の一人息子ヤスハル(古舘

          ひよっこ「母不在の東京」が暗示するもの みね子は「昭和のおっかさん」化、だから懐かしい?

          イルカ漁の町が主人公 捕鯨問題で荒らされ「そして誰もいなくなった」 映画「おクジラさま」 地方と都市の衝突も描く 9日公開

             なるべく全体像を見せたいという佐々木芽生(めぐみ)監督のジャーナリスティックな視点で製作された映画「おクジラさま」は、周囲に翻弄される「和歌山県太地町(たいじちょう)」が主人公である。伝統的なイルカ漁が、反捕鯨映画「ザ・コーヴ」で動物虐待だと非難され、世界中の注目を集めたのが2009年。以来、様々な人や団体が次々と勝手に押し寄せては、意見を言い、行動し、やがて去った。突然の大嵐が過ぎて後に残ったのは、荒らされ傷ついた小さな地方都市だ。   佐々木監督は淡々と、起きてい

          イルカ漁の町が主人公 捕鯨問題で荒らされ「そして誰もいなくなった」 映画「おクジラさま」 地方と都市の衝突も描く 9日公開

          捨てられないノート 懐かしい字は…

             きれいな文字を書く人だった。  その字が書かれた1冊のノートが、捨てられないでいる。表紙にタイトルが書かれ、中は最初の2ページだけが使われている。10年前の日付と、購入した物についてのメモ。備忘録のようなものだ。壮年期の字とは違って、ややたどたどしくはあるが、丁寧な文字面は間違いなく、懐かしい父の手である。  その父が書いた大量の書類を今年の2月、実家の引っ越しを機に、すべて、丸ごと捨てた。いま流行りの「断捨離」である。  父は昭和一ケタ生まれ。軍人だった祖父の

          捨てられないノート 懐かしい字は…

          富と情報は偏在する 不動産投資はもう危ない

           富は偏在する――それは真実だと、個人投資家向けの無料の投資セミナーに通ううちに実感した。富だけでなく情報も、あるところにはあり、ない人にはない。うまい話も儲け方も、富裕層には情報が巡ってくるし、実行に移す時間的な余裕もある。持てる者はより富み、持たざる者は貧しいまま、という残酷な現実が、構造的に再生産されている。そんな中、持たざる者から収奪することで利益を上げようとする「悪い奴ら」もいる。これ以上奪われないように、せめて自衛はした方がいい。  格差社会というが、最大でかつ

          富と情報は偏在する 不動産投資はもう危ない

          ひらがなだらけの手紙 「ひよっこ」世津子の哀しみ

           NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」は小道具の使い方もうまい。8月7日放送の第109話では、ひらがなだらけの手紙が一途さと切なさを物語った。  昭和40年代初頭、庶民の意思伝達手段は手紙だった。縦書きの白い便せん、茶封筒など、リアルな懐かしさを持って描かれる手紙は、登場人物の性格や背景までも伝える。  第109話には主人公みね子(有村架純)宛の二つの手紙が出てきた。一つは、みね子の行方不明だった父・実(沢村一樹)を保護し、同居していた俳優・川本世津子(菅野美穂)からのも

          ひらがなだらけの手紙 「ひよっこ」世津子の哀しみ

          「ひよっこ」に学ぶ 「食うため、生きるため」誰もが必死だった

           「食うため、生きるためにやってきたから、他に出来ることがなくて」  NHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」で7月26日、みね子(有村架純)の働く洋食屋に、客として訪れた俳優の川本世津子(菅野美穂)が漏らしたセリフだ。会計を済ませた帰り際、素晴らしい仕事をしている、と褒められて答えた。  この言葉に、みね子は、はっとしたような表情を見せる。  そう。みんな結局は「食うため、生きるため」に必死なのだ。みね子も、川本も、みんな。  どんな仕事だって、誰もが、一生懸命に働いて

          「ひよっこ」に学ぶ 「食うため、生きるため」誰もが必死だった

          「ひよっこ」みね子を応援する訳 理不尽を耐え忍ぶ姿に自らを投影、幸せな結末を信じたい

           あえて好きな彼のため、身を引く--NHK連続テレビ小説「ひよっこ」で7月24日、微笑ましいお付き合いを続けてきた、主人公みね子(有村架純)と、大学生の島谷(竹内涼真)が、さよならをした。号泣したファンも多いだろう。我慢することが当たり前だった時代とはいえ、みね子は次々と、自分ではどうにもならない理不尽に見舞われ続け、耐え忍んできた。父の失踪、工場の倒産、そして今回は初めての恋人との別れ。みね子ファンは、不条理に屈せず必死に生きる彼女に、自らの姿を重ねて見てしまうのだろう。最

          「ひよっこ」みね子を応援する訳 理不尽を耐え忍ぶ姿に自らを投影、幸せな結末を信じたい