夫が克服したもの
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「あ、ありがとう。」
夕方、ベランダに干してあった夫の洗濯物を一緒にしまったら夫が言った。
ごくごく『普通に』。
ありがとう。
夫は、洗い方にこだわりたいお気に入りのTシャツやパーカーなどの洗濯物は自分で洗っている。私が家族の洗濯物をまとめて洗って干し、夫も夫で干す。総量としては多くなるが、自分の干したものだけしまうのも変だし、ついでと言うには労力は倍になるものの、一緒にしまうと夫が言う。
「ありがとう」
こんな普通の「ありがとう」が、少し前の夫には言えなかったのだ。ありがとうが言えないなんて信じられないが、確かに言えなかったのだ。
『感謝』という、人として基本であると子供に教え込むようなことでさえ、夫にとっては苦手なものだった。
私が思うにそれは夫にとって、『アフェクトフォビア(情動恐怖)』の一種だったのだ。
私が不満と感情をぶつけ話し合いをしようとすると、昔の夫は思考停止し、逃げることしか考えていなかった。その場をどう切り抜けようか、としか考えてないことが見て取れた。だからそもそも話し合いをできるようになるまでにひと山あった。
私たちが子供だった時代の『男のあるべき姿』の影響だと思うが、自分に負の感情が起きたときに泣いたり弱音を吐いたりすることが許されなかったために、すべての感情に蓋をしてきたのだろう。それによって人の感情も読み取ることができなくなり、相手がどう感じるか、を学ぶことなく大人になってしまったのだ。大喜びすることさえ『男らしくない』とされていた(る)ために、正の感情にさえ蓋をするという何とももったいないことまで。
あるとき子供時代の思い出を話していて、夫が言った。
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夫婦サバイバル(ワーキングマザー編)
ごく普通の女が結婚して妊娠~出産。35歳で『ワーキングマザー』になりました。 それまで世の中知ったような気になっていたけど、実は何も知らな…
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