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夫が知らない『蜜の味』

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姉の引っ越しの手伝いに行った。

ひとり暮らしの姉はシェアハウスに住んでいる。ここ数年の感染症が始まる前に住み始めた。

感染が拡大し、出勤がなくなり、住人同士の交流もできなくなり、キッチンやお風呂やトイレを終始シェアするスタイルにむしろ不安を覚え、広い戸建てに住む友人宅に避難したりしていた。

そんな生活も2年を超え、そもそもほとんど帰らない家に家賃を払うのがばからしくなったらしい。
荷物は実家などに一時退避させ、家を持たない生活をしてみると言う。

身軽で比較的時間に余裕のある彼女には確かに良さそうだ。

郵便物は実家や妹(私)の住所を使い、複数の拠点を行き来する生活。年を重ねれば広い家を持つ友人も増えるというもの。
やってみて不便ならまたどこかに借りると言う。

そんな姉のシェアハウスから荷物を運び出す手伝いに行ったのだ。

彼女の荷物は少なく小さいものばかり。軽自動車を借りてひとりでちょこちょこと実家に運ぶと言う。

シェアハウスは大きな一軒家タイプ。2階にある彼女の部屋から棚を一緒に運んだ。軽自動車のトランクに入るような小型の棚だった。

世間話をしながらゆっくり階段を降ろし、荷台に積む。


「こっち向き?」

「え、わかんない。ちょっと1回置いていい?」

「こっちかな。」

「そうだね。」

「手気を付けて。せーの・・・」

「いいんじゃない?」

「そだね、ありがと。」


私も姉も、引っ越し屋さんでアルバイトをしたこともないし、荷物を運ぶことを生業にしていない。
ただの『普通の人』だ。

そんな『普通の人』ふたりが、協力してトランクに荷物を積み込むという、ただただ『普通のこと』。
でもこの『普通』をこの時私は、しみじみと、それはそれはしみじみと嚙み締めたのだ。

この『普通』がとても愛おしく、恋しい。


ご存じかどうか、私は真冬と真夏以外は月2回ペースでキャンプへ行く。テントは張らないヘタレだが、我が家にとってキャンプはちょうどいいレジャーなのだ。今の時節的にも。

そしてご存じだろうか。

キャンプの荷物は多い。

たとえテントを張らなくても多いのだ。

小屋だけがあるようなキャンプ場へ行くので、イスやテーブル、BBQ台、そして当然食材を持参するので、トランクはいつもパンパンでバックミラーは見えないことが多い。
それくらいの荷物を、マンションの12階から運んでレンタカーのトランクに積むのだが、これまたなぜかずっと、毎回夫と喧嘩になっていたのだ。
出発前の喧嘩はお互いに消耗が激しかった。

だから今では、運ぶのは私、積み込むのは夫と、分担することで平和を見ている。


でも期せずして姉との積み込みをしてみて、『トランクに荷物を積み込む作業』でどうして夫とはあんなにも喧嘩になってしまうのかと、改めて考えたのだ。

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ブログ『ワーキングマザー・サバイバル』で特にたくさんの方の共感、反論、議論を生んだ『夫のこと』カテゴリー記事。夫の会社の人にバレそうになり、止む無く会員限定記事に。 その間筆者の仕事の状況も変わり、ブログ『ワーキングマザー・サバイバル』から『夫のこと』だけスピンオフ(?)させてnoteで連載することにしました。 ワーキングマザーの方もそうでない方にとっても、参考になるかは未知数。 (月4回更新/初月無料)

ごく普通の女が結婚して妊娠~出産。35歳で『ワーキングマザー』になりました。 それまで世の中知ったような気になっていたけど、実は何も知らな…

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