マグネットスペースの要件
マグネットスペースとは、カジュアルに社員が集まり会話が弾む場所を指します。磁石が吸い寄せられるように人が集まるというニュアンスです。
日本では喫煙所と給湯室が知られています。文化によってあり方が異なり、ドイツでは社内カフェ、フィンランドではサウナだったりします。
ですが、パンデミックにより盛り下がっています。落ち着きを見せてから現代に至るまではオープンオフィスが台頭していますが、これらは実はマグネットスペースではありません。
マグネットスペースを取り戻すに、あるいは新しくつくるために、本記事では要件を整理します。
1: 非公式的な場であること
休憩や雑談の場として過ごせること。
会議室など仕事で正式に使う場であってはいけません。また、正式なイベントで使うための予約も認めてはいけません。
ただし、会話の延長で仕事の話になるのは問題ありません。
2: 行きたい人だけが誰でも行けること
まず、オフィスに来た人が必ず通る場所、のような「動線的な強さ」はあってはなりません。目立ちすぎると後述 3: の閉鎖性が損なわれます。マグネットスペースは行きたい人が足を運べば行けるくらいのアクセス性が良いです。
次に、許可なく誰でも使えなくてはなりません。申請や入退場管理などもっての他ですし、できれば施錠もせず開放したいです。
3: 閉鎖性があること
以下の二つが必要です。
出入り口が一つ(複数でもいい)で、出入りを完璧に把握できること
広すぎないこと
同座している他の人の会話が聞こえるか、耳をすませば聞こえるくらい
窮屈無く十数人が居座れるキャパシティを超えないくらい
というのも、マグネットスペースでは仕事やプライベートの話を含む、それなりに濃い会話に発展することが多く、閉鎖性がないとこれらを出しづらいからです。特に状況――誰がいるかをその場で見定めながら、出す話題をコントロールしたりするので、それができるよう、同座している人を把握できる程度の規模感に収まっていることがマストなのです。
そういうわけで、実は昨今のオープンスペースは悪手です。フロア内で心理的安全性が十分であれば別ですが、少人数の組織でもない限りはレアケースだと思います。
オープンだと想定伝達範囲(以下記事参照)が広くて警戒してしまい、体裁を取り繕った表面的な会話から脱しづらくなります。
4: ある程度の開放性があること
3: と相反しますが、閉鎖性が強すぎても問題で、ある程度の開放性もほしいです。
まず密室だと警戒的になり、その場所は人を選ぶものになってしまいますます。たとえば男性の多い職場だと女性は寄り付かないでしょう(逆も然り)。また、狭すぎて圧迫感があっても、居心地が良くないので人が定着しません。
喫煙室のように壁が透明であるとか、給湯室のようにドアがないとかいった例はわかりやすいと思います。
5: 店員など部外者がいないこと
部外者がいると、社外秘を含む仕事の話を出しづらいため、可能な限り排除してください。
※特に現代はコンプラ意識が強まっていることもあり、昔みたいに部外者もいる喫煙所で仕事の話をするなんてことはもうできません or している人は信用できません。このあたりの感覚は意外と鈍い人が多いので、鈍い人はアップデートしてください。
清掃が必要な場合も、なるべく社員が使わない時間帯に行ってもらうのが良いでしょう。
あるいは社員自身が掃除した方が良かったりします。時代に逆行するように聞こえますが、部外者がいて仕事の話をしづらいという機会損失をなくせるのなら軽いものだと思います。むしろ、マグネットスペースを主に使う人達で回したりすれば、それ自体も話のタネになって、盛り上がりに貢献します。