コラボレーティブ・ノートテイキング
主なコミュニケーションツールとしてQWINCSがあり、Nはノート、特に複数人同時編集型のノートを指します。このようなノートのあり方をコラボレーティブ・ノートと呼ぶことにします。
コラボレーティブ・ノートの難しい点は、誰がどこに何を書くかのコントロールです。ファシリテーションと言ってもいいでしょう。コラボレーティブ・ノートだからこそのファシリテーション、を考えねばなりません。
コラボレーティブ・ノートテイキング
コラボレーティブ・ノートを、ファシリテーションつきで上手く成立させることをコラボレーティブ・ノートテイキング(Collaborative Note-Taking、CNT)と呼びます。
ファシリテーションの重要性
ノートを取ることをノートテイキングと呼び、従来はひとりで自由に行うものでした。しかし、コラボレーティブ・ノートでは、
特定の有限性(たとえば会議内でつくるノート)を伴って、
複数人が同時編集をする
との世界観になっています。
対面の会議であればファシリテーションがなくとも表情や雰囲気を読み取って収束していけますが、ノートではそれらも使えません。ファシリテーションは必須です。
よって、コラボレーティブ・ノートを成立させるためには、事実上ファシリテーションも必要であり、この点も組み込んだのがコラボレーティブ・ノートテイキングです。
緩いファシリテーション
ファシリテーションというと、司会進行が皆を導くイメージを浮かべるかもしれませんが、CNTでは違います。
CNTでは、以下の形で緩めにファシリテーションします。
全員がCNTにおける動き方を理解しておく
ノート上でテンプレートや役割を設定して、各自が主体的に動きやすくする
最終的な意思決定は、意思決定者を設けることで担わせる
これを緩いファシリテーション(Flexible Facilitation、フレキシリテーションとも)と呼びます。
CNTで使う3つの考え方
緩いファシリテーションを実現するために、CNTでは以下の3つを使います。
スリーエリア(3種類のエリア)を使う
意思決定者を設定する、また書き込ませる
進め方の型があるので、どれを使うかを決める
以後、詳しく見ていきます。
CNTで使う3つの考え方
まず前提として、CNTでは、1つのノートに複数人が集まり同時編集します。これを部屋としてのノート(Note As A Room)と呼びます。部屋に集まって会議をするように、ノートに集まって会議をするイメージです。
この前提で、以下3つの考え方を採用します。
1: スリーエリア
ノートにはSecret、Private、Publicの3つのエリアを適宜設けます。
Secret
自分にしか見えない
Private
ノート内に書き込める、自分専用の領域
書けるのは自分だけ、でもメンバー全員が読める
Public
ノート内に書き込める、皆の領域
誰でも書き込める
1つのノートはnつのエリアを設けており、私たちは必要に応じてエリアをつくっていきます(あるいは後述するように事前に設置しておいてもよい)。
たとえばメンバー3人でCNTを行う場合、各人のprivateが1つずつ、最終的な結論を書き込むpublicが1つで、計4つのエリアから成るノートを使うことができます。

Secret についてですが、これはいきなり Public や Private に書くのに抵抗がある人が適宜使うものです。Secret は人には見せないのでノートには書きません。
今のところ、各自で別の場所に書くしかないでしょう。将来的にはノートアプリがシームレスに Secret を書ける機能を提供するかもしれませんが、2025/01 現在、これをサポートするノートアプリは無いと思います。ちなみに当サイトでは似た概念を考察しています(下書きとして考察)ので参考にしてください。
2: 意思決定者
CNT では意思決定を書き込む意思決定者を決めます。
というのも、いくらCNTを進めて議論が捗ったとしても、最終的に誰が何をするという決めの問題は避けられないからです。誰かが行わねばなりません。
従来の会議でも、通常はマネージャーなり経営者なり推進者本人なり、誰かしら意思決定を担う者がいるはずです。CNTも例外ではありません。そして CNT はノートですから、意思決定をするとは、意思決定の内容をノートに実際に書き込むことを意味します。
3: 型を使う
CNT の進め方には「型」があります。
今のところ当サイトでは2つほど整理しており、おそらくいずれかを使うと、多くの場合上手くいくはずです。足りない場合は、各自新しい型をつくってください。
型がないと収拾をつけづらいので、CNTにおいて何かしら型をつくって、全員が「今回はこれこれの型でやる」というふうに動けた方が良いのです。
型1: 勉強型
意思決定が存在しないCNT。勉強会など共有・体験に適する。
やり方
事前にノートとエリアを整備しておいて、その通りにうごく
例1: 発表ネタごとにエリアをつくっておいて、発表中自由にコメントを書く
例2: 1人1プライベートエリアをつくってもいいことにして、自由に書く
Q&Aや雑談用のエリアをつくっておくのも良い
型2: 議論型
意思決定が存在するCNT。
やり方
DDDに従う
1 Define(議題の定義)
2 Discussion(議論)
3 Decision-Making(意思決定)
Defineについて
事前にノートにアジェンダを書いておくのがやりやすい
1議題 1エリアをつくるとやりやすい
議題はMust、Should、Optionで分ける
Must:このCNTで意思決定までやりたい
Should:このCNTで少なくとも議論はしたい
Option:それ以外
新しい議題が増えたときは、CNTの最中でもOptionとして適宜追加しても良い
Discussionについて
議題ごとに情報を出す
CNTでは意思決定するための情報を集めると考える
各自の持論も、参考情報も、コメントのやり取りで膨らむ内容も、全部情報と言える
情報の出し方は色々ある
ひとりずつコメントを書き込むだけ
意思決定者が質問を書いて、それに誰かが答える
メンバーが質問を書いて、意思決定者(答えられるならメンバーでもいい)が答える etc
Decision-Makingについて
議題ごとに、意思決定者が意思決定を書き込む
少なくとも「同意 or 不同意 or 不足(情報が足りない)」は書く
できれば次の行動と担当者(Action And Assign)も決める
意思決定者の選定には融通を利かせる
通常は役職の高い人になりがちだが、任せられるなら任せてしまってもいい(その旨は書く)
Q&A
Q: CNTが想定する拘束時間はどのくらいか?
Ans: 1時間以内が推奨です。
読み書きをヘビーに行うので疲れます。真面目にやると、対面で喋って打ち合わせるよりも何倍も疲れます。1時間以内を一つの目安にした方が良いでしょう。
Q: CNTは会議のように同期的なものか?
Ans: はい、そうです。
もちろん、非同期コミュニケーションの文化とスキルが十分であれば、同期的にせずとも「いつでも誰でも好きなときに更新してね」で成立しますが、現時点では難しいと思います(できるなら問題ありません)。
ですので、CNT でも、会議のように同期的に皆で集まって集中して取り組むことを想定しています。
Q: CNTを行うときに、対面やリモートで顔を合わせる必要はあるか?
Ans: ありません。
CNT は、ノートにアクセスして集まるだけでも成立します。言語による議論に集中するためにも、(議論型の方は)最終的にはこれができることを目指したいです。
ただし現実的には、慣れないうちは難しいと思いますので、対面で集まった上で CNT をする、オンライン会議で繋いだ上でやる、と従来の集まり方も一緒にやった方がやりやすいでしょう。