インクリメンタルな情報共有と1-3-10-P-D法
情報共有を持続的に行うための一つのコツは、「情報」の見せ方を工夫すること――もっと言えば読み手にとって負担の少ない見せ方にすることです。
一つの考え方とフレームワークを示します。
インクリメンタルな情報共有
インクリメンタルな情報共有とは、段階的(Incremental)に情報量を増やしていくという情報共有手法です。
Before
文書を丸々ドンッと出して「これを見て」
After
文書を1行で要約した情報を伝える
さらに気になる方向けに、5行で要約した情報も書いておく
より詳細が気になる方向けに、文書へのリンクも書いておく
Afterはインクリメンタルとなっています。1行 → 5行 → 文書と3段階で広げていけます。
メリット
Ans: 情報共有に費やすリソース(時間や認知資源)を減らせます。
私たちは、以下の固定観念を持っています。
読み手として:
情報はなるべく全員が一次情報(元の情報)を読むべきだ
書き手として:
情報はなるべくたくさん詰め込んでおくべきだ
しかし、現代の情報社会を見てもわかるとおり、全部をちゃんと読むのは非現実的です。実際、読み手も書き手もちゃんとしている割には、それだけでは済んでいません。結局個別にフォローしたりしてますよね。
ならば、もっと減らせば良いのです。情報を出す側は「かんたんに理解できるサマリー」と「全部読める詳細」の両方を用意してお膳立てをして、読む側もちゃんと読むつもりがないのならサマリー部分だけ読めばいいと割り切ります。
双方が受け入れると、ようやく情報共有に必要なリソースを減らせます。必要ならフォローなどすればいいです(従来と変わりません
)。
つまり、どうせフォローが必要になるんだから、だったら普段の情報共有はもっと肩の力を抜けばいいわけです。これを実現するために使えるものの一つが、インクリメンタルな情報共有です。
1-3-10-P-D法
インクリメンタルな情報共有を行うためのフレームワークで、以下の5段階を使います。
1行でまとめる
3行でまとめる
10行でまとめる
1ページ、A4 1枚、スライド1枚程度でまとめる
PはPageです
文書
DはDocumentです
元々は文書だけか、文書と通知(社内ウェブサイトのページとしてつくるなど)などが多いと思います。そうではなく、1-3-10のようなかんたんなサマリーもつくって、そこだけ読んでも良いようにしましょうというものです。
情報の書き手は、5段階をできるだけ用意します。特に1行、3行などの端的なまとめは一つは用意したいです。
情報の読み手は、1段階目から必要なところまでを読みます。あるいは、書き手がつくれていない段階があったら、つくっても構いません。
まとめかたは主観的で構いません。
書き手自身が、あるいは特定の段階をつくりたい読み手自身が主観でまとめればいいです。
まとめる際の形式も自由です。
組織やチームの好みがあるなら、尊重した方がいいでしょう。
一般的には、1-3-10の3段階までは箇条書きが良いです。4段階目のページは、見出しアリの構造的な文章(ブログ記事のような)か、情報量の多いスライドか、あるいはわかりやすさと見やすさを重視したビジュアルなイラスト(グラレコなどがわかりやすい)になるでしょう。
まとめるのに時間を費やしてはいけません。
まとめかたに問題がある場合は読み手と議論すればいいだけです。たたき台をつくるくらいのつもりで、さっさとつくってしまいましょう。
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軽い情報であれば「文書」はやりすぎです、しかしチャットといったものも扱いづらいです。適切な塩梅は「ページ」なのです――ということを解説しています。