KKD → QCDS → SSS

仕事、特にものづくりで使われる「拠り所」の変遷を解説します。


KKD

勘、経験、度胸の略。

昭和の価値観です。要するに根性論です。

すぐに身につくものでもなく、再現性もなさそうで、ただひたすら時間かけたり苦労したりしなきゃ身につかないとのニュアンスです。飯炊き3年握り8年もこれですね。


QCDS

Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)、Scope(スコープ)の略。

平成の価値観です。要するにプロセスと定量化です。

まずプロセスの形で世界観を統一します。次に管理しやすくするために、何でも数字に落とし込んで、数字で扱おうとします。

たしかに管理はしやすく、統一感も出しやすいですが、融通が利きません。特に日本は文化的に変化がしづらい(階層的で合意形成的という世界有数の縛りプレイ)こともあって、ウン十年前の時代錯誤なプロセスや数字がそのまま使われていることも珍しくありません。


SSS

Skill(スキル)、System(仕組み)、Standard(標準)の略。

※巷ではまだ言語化されていないと思います。当サイトで言語化したものです。

令和の価値観です。要するに??


スキル

まずはスキルが重要です。

素人が適当にやるのではなく、ちゃんとスキルを持った人を雇うなり、内部で育てるなりします。

これは事実上、それだけのリソースを投資することを意味します。雇う場合はその給料や採用活動に、育てる場合や教育や時間に。いずれにせよ、投資する権限を持つ人が投資できるかどうかにかかっています。


仕組み

次に仕組みも重要です。

私たちはなまじ優秀ですし、退屈は嫌いですし、仕事した気になって酔いたい心理もあるため、忙しさや泥臭さを好みがちですが、不毛なことです。こんなものは1秒も少ないに越したことはなく、仕組みの力でカバーするべきです。

わかりやすい例でいうと、拠点が全国に散らばっているからといって毎週東京本社に出張させるのは大変でしょう。たまに(まれに)集まるのは重要ですが、普段はリモートで十分です。リモートで行える仕組みが重要ということです。これがないと、原始的に毎回出張することしかできなくなります。そして、そういうものだと正当化します。


仕組みの肝となるものは二つあります。

まずはITです。といっても、ITは現実にとって、人間にとって自然なものではありませんから、なるべくITで解決できるようなあり方に変えるには「抜本的な変更」が必要です。DX(デジタル・トランスフォーメーション)と呼ばれます。考え方そのものをシフトせねばなりません。

次に仕事術です。仕事のやり方や考え方という視座に立ち、必要に応じて変えたり、新しくつくったりするということです。これは当サイトで様々紹介しているとおりです。


理想は仕事術をつくってIT化することですが、IT化にはコストや啓蒙もかかります。仕事術に自分達で従う、だけでも違います。

また、当サイトでは扱いませんが、仕事術をつくることをせず、いきなりIT化(特にソフトウェアをつくる)をするパターンもあります。こちらはいわば、仕事術という形での言語化よりも、ソフトウェアという「動かせる非言語的なもの」を使うとのアプローチです。


標準

標準とは、ここではオーダーメイド(個別最適)の対義語です。

従来、特に日本では顧客ごと・組織ごとに個別の対応をする「オーダーメイド」が主流でしたが、これは弊害が大きいです。相手が多いほど負荷も高くなりますし、相手の事情をそのまま扱うことになるので上手くいかないことが多い。要は、複雑なものを、要らないものも含めて複雑なまま扱おうとするのです。

※もちろんビジネス次第ではオーダーメイドこそが良い場合もあります。

標準とは、複雑なものをモデル化してシンプルに扱うことです。そして、できれば汎用化して、他にも応用できるようにすることです。


海外のITシステムや外資系のスタンスがわかりやすいと思います。顧客一人一人にいちいち合わせることはせず、ドンと統一的なものを出して「この通りに使え」としているはずです。

また、QCDSで述べたように「全く変化がない」わけではなく、ある日突然アップデートしたり中止したりもします。サポートセンターも一応ありますが、ベストエフォートだったりします。「お客様は神様です!」のごとき献身はありません。

これを「大企業だから許されたスタンスだろう」と評する人が多いですが、違います(本質ではない)。何が本質かというと、オーダーメイドではなく標準でやっていることです。

標準的なものであっても、出来が良ければビジネスにはなります。オーダーメイドから標準にシフトし、オーダーメイドに費やしすぎていた分をスキルと仕組みに充てることで、現代的なあり方になります。


選択肢を増やす

KKDやQCDSが無用の長物だと言っているわけではありません。使える場面はまだまだあります。

本記事で言いたいのは、選択肢を増やしているということです。

KKD、QCDS以外にも、SSSがあるということです。


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