ファサード戦略
理不尽な相手と付き合う際、相手が納得してくれる「ダミー」をつくってしのげると楽ちんです。
これをファサード戦略と呼びます。
内部向けと外部向け
ファサードには内部向けと外部向けがあります。
内部向けの例
内部向けとは、チームメンバーや上司など一緒に働く者に対するファサードです。
例としてファサード・プログレスがあります。
これは「もう終わっている仕事を、あたかも進行中であるかのように報告する」ことです。
たとえば一週間後に提出する仕事があるとして、これを2日目時点で終えたとしましょう。素直に提出しても、3日分の自由時間はおそらく生まれません。新しい仕事を入れられたり、細かい指摘をされて、仕事は残る3日分を食いつぶすまで膨張するでしょう。パーキンソンの法則と呼ぶこともあります。
自由を守り、膨張から守るためには、「進行中です」的な見せ方をするのが無難です。
※ファサード・プログレスの是非は状況次第ですが、この場合は「1週間後に提出すればいい」と決めたはずなので問題ありません。自由を侵害したり、膨張させたりする相手側が理不尽だと考え、理不尽から守るために偽るのです。
※ちなみにファサード・プログレスは外部向けとしても使えます。しかし、パーキンソンの法則に抗えない人は「理不尽」であり、そのような人から内部にも多いので、内部で使える場面は多いと思います。
外部向けの例
外部向けとは、チームの外に対するファサードです。
例としてファサード・パフォーマンスがあります。
社内外の声が大きい人達を納得させるためのものを専用でつくり、それを見てもらうというものです。うわべのパフォーマンスですね。一方、それ以外の人達向けのものは別でつくります。
以下ポストがわかりやすいです。
社内政治による情報設計(IA)の歪みを上手に回避しているベストプラクティスはマクドナルドのスマホアプリだと思っている。ホーム画面にいくら情報が溢れても、ユーザー体験は歪まず、社内の声が大きい人も満足させられている(と思われる)。

構造としては、
1: ユーザーは「ホーム」以外の動線を使っており、現状スッキリした見せ方にして成功している
2: 声の大きな人達は色んな情報を載せたがる
3: 2を1に侵食させると、ユーザー離れが起きてしまう。でも2は無視できない
となっているので、2を満たすために「ホーム」をファサードにしています。ホームを見ると実際に色んな情報が載っているので「ほらね、言われたとおりにやったでしょ?」と主張できるわけです。
もう一つの例がファサード・シチュエーションです。
これは理不尽な相手に対してのみ、お受けできないんですよ的な状況をでっち上げてお伝えするというものです。
こちらもわかりやすいポストがあります。
……こんな電話が多々ある。世代的にはある程度の年齢の日本人男性。 初対面でなんでため口?もう客の気分になってんの? 名乗りもせず、お前誰やねん!?
そういう方には「あいにく今日は満室でございます」 と断る。もちろん部屋が空いてても。
一発目にこの態度で電話かけてくるレベルの客はいらん。泊めてもめんどくさくないのが読めるから。
そもそも泊まっていらん。客になってほしくない。
ホテルに電話を掛けて、今日は満室です!と言われるのが多い方。このパターンで施設から避けられてまっせ!
メリット
Ans: 理不尽な相手からリソースやビジネスを守れることです。
特に日本の価値観だと「正直に伝えねば」「あり方は一つでなくては(平等主義)」と考えがちですが、だからといって理不尽な相手向けに合わせると割りを食います。
ですので、理不尽な相手に対してはファサードを用意してしのぎ、本来のリソースやビジネスを守ります。
ファサードの語源
ファサード(Facade)とは「うわべ」「見せかけ」といった意味があります。
いくつかの業界では用語として存在します。建築用語としては「建築物の正面・外観」を意味します。プログラミング用語としては「複雑な手続きを統一的に使うための窓口的な役割」を意味します。
(関連記事)
似た戦略としてアダプター戦略があります。