予定ドリブン(会議ドリブン)

予定ドリブン(Schedule Driven)とは、自分を予定に従う機械と見立てて、ひたすら予定を消化していく過ごし方を指します。

予定≒打ち合わせとなることも多いので、会議ドリブン(Meeting Driven)と呼ぶこともあります。


概要


やり方

自分の時間枠を開放して、誰にでも使えるようにします。

細かい運用の仕方は色々あります。

  • 現代ではグループスケジューラーを開放して「用がある人は勝手に予定をぶっこんでください」とするスタイルが主流です

  • 古典的には、特に階級が高い者が秘書を経由させます

  • 原始的には、スケジューラーでは管理しないが、声をかけられたら対応する(対応中なら他の人はそれが終わるまで待つ)というリアクティブなスタイルも使われます


メカニズム

マネージャーなど人その他リソースを使う・管理する側の立場になると、基本的に予定ドリブンになります。というのも、以下の事情が伴ってくるせいで、他に適した働き方がないからです。

  • キャパオーバー

    • 物理的にすべてを処理しきれないほどの仕事量・情報量、もっと言えば判断の量がある

  • タスク管理の欠如

    • このような人達は素早さと意思決定を生業としており、タスク管理という泥臭い営みのスキルとモチベが無い

  • グルーミング

    • 人間関係の構築・維持・修復も絡むため、会話や対話の時間をどうしても取る(場合によっては重ねる)必要がある

このようなシビアな状況下では、自分の時間を開放した上で、

「皆さん、必要なら私の時間枠を予約してください」
「私はそのとおりに動きますんで」

とするくらいしかできません。


対象者

人を含む「リソースを使う・管理する」ウェイトが増えれば増えるほど、予定ドリブンになりがちです。

例:

  • 管理職

  • マネージャー

  • ディレクター

  • 経営者

例を見ればわかるように、上下関係が存在します。立場が上の者が持つ貴重なリソースを、立場が下の者が取り合うという構図です。

※ちなみに「予約が必要なサービス」や「広く仕事を受け付けるフリーランス」など需給関係として予定ドリブンが成立することがありますが、本記事では扱いません。


メリデメ


メリット⭕

本人が楽できます。

予定に従うだけでいいですし、権限もたいていは本人にあるので、(労働時間や判断量が多くて疲れはしますが)ラクチンです。

最も楽な働き方の一つに数えられるでしょう。実際、予定ドリブンは非常に身近な働き方で、よく見かけます。


デメリット❌

本人自身がボトルネックになります。

  • 統一性と再現性がありません

    • 権力者として自分のリソースを自分の判断で分け与えることに等しいので、好き嫌いが反映され、政治がはびこります

    • 有能と無能・有害と無害がはっきりと分かれます

    • この塩梅は人によって違うので、管理される側はしばしば振り回されます

  • 変化に弱いです

    • こまぎれの時間で反射的に捌く世界になるので、新しい事柄や深い事柄にリーチできません

    • そんな反応的な生き方が恒常的で、日頃から疲れているので、自ら新しく・深く考える体力や習慣もありません

  • 不在や消失に弱い

    • 情報が本人の頭の中に閉じてしまう上、情報共有を行うスキルやモチベもないため、広がりません

    • 自分は難しいことをしているというプライドを守りたいため、むしろ情報を出し惜しみます

    • 結果として後進が続かず、バックアップもなくて、本人の切れ目≒停滞になりがちです


ボトルネックを解消するには


組織パラダイムを変える

諸悪の根源の一つは「階層的な組織」にあります。

階層的ですと、力学的にどうしても上の立場が多くを抱えることとなり、予定ドリブンで凌ぐことしかできなくなります。これを防ぐためには、権限委譲をもっと進めるしかないのですが、階層という組織パラダイムではできません

ですので、全く別の組織パラダイムが必要となります。たとえばティール組織などです。


非同期を推進する

ボトルネックの原因は、予定ドリブンを行う本人の出し惜しみです。

本人との予定(打ち合わせ)でしか情報がやり取りされず、状況も進まないようになっているわけですから、そりゃボトルネックにもなります。

加えて、仮にn人集めたとしても、同時に一人ずつとしかやりとりできないので、その一人以外の全員を無駄にします。ここまで来るとボトルネックを通り越して、有害ですらあります。

よくある会議の一例。

これを打破するには、予定無しでも進むようにしなくてはなりません。つまりは非同期コミュニケーションです。

情報を読み書きできる場所をつくり、誰でもそこで議論できるようにします。

そうすれば、本人が絡まなくても勝手に進みますし、意思決定も自分のペースで下せば済みます。情報として残っているので、自分に何かあったときも何とかなりますし、何なら自分でなくても何とかなることがわかってきます。


ですが、非同期を行うためには相当にツールやメンタルモデルを変えねばなりません。

ここが文化的に不足しているせいで、日本は(日本も)いまだにリモートが定着しません。あるいは、してもオンライン会議ばかりという悲しい実態に終始しがちです。

当サイトでは非同期的に働くための仕事術を多数揃えておりますので、ぜひ読み漁ってみてください。


あそびを取り入れる

予定ドリブンの実践者は、多忙を是としがちです。この点は(主に経営者向けですが)以前言語化しましたが、

大局的に言えば、資本主義的価値観に毒されています。

現状最も強い自分を最大限使うことが最大の利益に繋がりますし、実際つながるので、予定ドリブンをやめられません。現代人は情報の洪水に依存していますが、ビジネスパーソンも仕事の洪水に依存しています。どちらも同レベルの依存であり、身も蓋もない言い方をすると病気です。

これは宗教や文化といったレベルで染み付いており、変えるのはおろか、自覚させることすら非常に困難です。

たとえば「稼いで何が悪い」「稼げてない雑魚が何をいう」などと返ってきます。

たしかに、稼ぎという意味では最適ですが、現場の生活水準や多様性など軽視されているものもまだまだ多いです。そして、何度も述べているとおり、本人がボトルネックとなっているので、本人が終われば終わってしまいますし、本人以上の伸びもありません。


この現状を打ち崩すには、荒療治が必要です。問題は何を使うかですが、たとえばスラック(余裕)があります。

前段として、コミュニケーションタイムの概念も役に立つでしょう。

よりわかりやすく言えば「あそび」です。

あそびにより、資本主義的な多忙を緩めることができます。その分、各々の生活水準に手がまわり、余裕が出てくるので、多様性も確保できます。

余裕と多様が手に入るので、中長期的に見ると大きなパワーとなります。少なくともVUCAには対抗できます。変革も起こせるかもしれません。

VUCAな世の中では何が起こるかがわかりませんが、想像もしなかったことが起きて私たちを助けてくれます。これと同じことを、自分の組織内で、自分の配下で、もたらせるようになります。


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