ペアワーク

ペアワークとはワーク・ゲーミフィケーションの一種であり、ペアプログラミングを一般化した「仕事の仕方」です。

※ワーク・ゲーミフィケーションについては解説しません。以下記事を参照してください。


ペアワークとは


ペアワークで扱える対象

「ひとりがつくって、その結果を別の人に見てもらう」ような仕事が対象です。

また、ここでいう仕事とは、作業のウェイトが大きいものを指します。つまり「時間をかければ確実に前に進められそう」くらいの難易度です。ひらめきや発想法が要求されるレベルの、高度で創造的な仕事は向いていません(※)。

※この場合は単に発想法的なやり方を使います。


Before/After

ペアワークを適用すると After になります。

  • Before

    • つくる人がつくる → 見る人に見てもらう

  • After

    • 二人が同座して、ひとりはつくる役、ひとりはツッコミ役になって、二人一緒につくる


用語

つくる人をドライバー、見る人をナビゲーターと呼びます。

車の運転にたとえられます。操縦者と案内者ですね。

ペアワークのイメージ。


由来

ペアプログラミングから来ています。

従来はプログラミングも通常の創造活動と同様、クリエイター(プログラマー)がひとりでつくって、それを評価者に見てもらう形でした。

※成果物を見てもらうことをレビューと呼びます。レビューを行う人をレビュアーと呼びます。

しかし、これだとレビュアーがボトルネックになってしまう問題がありました。また完成後の成果物しか見れないため、教育面の効率も上がりませんでした。

このあたりを解消するために生まれたのが、ペア(二人組)で一緒につくりあげていくペアプログラミングです。OJT さながらに二人三脚で一緒に取り組むことで、仕事しながらレビューと教育も行ってしまうのです。

このあり方には仕事術一般に拡大できるほどのポテンシャルがあるため、今回当サイトでは「ペアワーク」と名付けて一般化しました。

※このようにソフトウェア開発の世界からビジネス一般に持ち込む流れはよくあります。アジャイルやリーンスタートアップもそうです。


メリット

レビュアーというボトルネックを解消できることです。

多くの階層組織がそうであるように、レビューを行えるような有能な者・権限を持つ者に仕事は集中しがちです。その者のキャパシティ≒チーム全体のパフォーマンス、となってしまうほどのインパクトもしばしばあります。

これは組織力学と言えるほど自然かつ必然的な現象であり、これを打破するには組織のあり方そのものを変えねばなりません。


ペアワークは端的な解となります。

ものづくりを行う現場の、階層的なあり方を壊せます。なぜなら、後述するように、ペアワークはペアとなる二人が双方対等でなければ成立しないからです。成立するということは対等ということであり、(その現場その仕事に限りますが)階層的なあり方から打破できていることになるからです。

実際、パフォーマンスも上がります。

と、小難しく言っていますが、要するに「それなりにつくるのが大変なもの」をつくる場合、一人がつくってもう一人がレビューするよりも、二人で一緒につくった方が早いという話です。


なぜペアワークでパフォーマンスが出るのか

Ans: フィードバックが多いからです。

まず現代では、仕事に対するフィードバックが得られにくくなっています。上述したように階層的なあり方が敷かれていたり、生活水準の向上により無闇に拘束しづらくなっていたりするからですね。

これを何とかするために、ゲームの力(ゲーミフィケーション)を取り入れるのがワーク・ゲーミフィケーションであり、特にフィードバックの量を増やすことに注力しています。ペアワークはその一つです。

つまりペアワークをするとフィードバックが増えます。対等な二人が、一つの仕事に一緒に取り組むわけですから、そうでない場合よりもパフォーマンスが出るのは当然です。

その代わりに、一緒に過ごす分、疲れはします。作業内容にもよりますが、1日数時間しか保たなくても不思議ではありません。


ペアワークの成立条件

ペアワークの成立には色々条件がありますので、整理します。


1: ナビゲーターは、ドライバーと同等以上の実力と権限を持つ者であること

元ネタのペアプログラミングでは、ナビゲーターがドライバーを教育するニュアンスが強かったりします。

要はドライバーが初心者で、ナビゲーターが上級者で、初心者に仕事をやらせて、それをそばで眺めて、リアルタイムにサポートしていくのです。

ペアワークではこのような教育的な用途を許容しません

ナビゲーターとドライバーは対等であるべきです。

対等とは実力と権限の両方を指します。実力に偏りがあると、介護になってしまうのでダメです。また、権限に偏りがあっても、権限を持つ方に合わせてしまう形となりフィードバックが弾まないのでダメです。


2: ナビゲーターは、助言を行う立場にすぎず、命令者ではないこと

意思決定はドライバーが行います。実際にどう作業して、どう完成させるかはすべてドライバーが決めます。

ナビゲーターの役割は助言であり、ドライバーに干渉する権限はありません。ドライバーに全権を委ねることで、余計な摩擦な合意形成を減らすことができます。

別の言い方をすると、ペアワークを行うには意思決定を行える程度の自律性と実力が必要とも言えます。意思決定できない者にペアワークは務まりません。自律性があっても実力が足りないとダメですし、実力があっても優柔不断など性格的に意思決定できないのであればやはりダメです。

といっても、難しい判断を迫られるということはほとんどなく、通常はペアワーク中の議論で自然な結論が出ます。

あるいは、出ない場合は、ドライバーがさっさと決めます。サイコロを振って決めることもあります(し、悩んでもきりがないことをこうしてさっさと決めることこそまさに意思決定です)。

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