出島戦略はかなり難しい

大企業におけるイノベーション、との文脈でよく語られるのが出島戦略ですが、これは相当難しいものです。

何が難しいかを整理します。具体的には「必要なこと」を挙げることで間接的に難しさを表現します。

逆を言えば、ちゃんと出島戦略をやりたいなら、これくらいはやらないといけないとも言えるでしょう。


会社を分ける(くらいに区別する)

同じ会社内だと文化やルールに阻まれてしまいます。

先日、革新的な人材をテーマに以下記事を書きましたが、

障壁となる因子は無数にあります。同じ会社内の別組織程度だとおそらく越えきれません。特に文化は自覚しづらいものであり、無自覚に文化を押し付けて妨害していることがよくあります。

出島戦略は人材が重視されがちですが、それ以前に、とにかくまずは場所です。その名のとおり、真の意味での出島をつくることから始まります。これができないと正直意味がありません。


異分子を登用する

これも上記記事で書きましたが、イノベーションを成せるのは異分子的な人材です。固定観念に凝り固まった、その辺の一般社員や有能な社員に成せるものではありません。異分子に、自社のテーマにフルコミットしてもらうことこそが鉄板なのです。

これは実質的に、異分子の登用を意味します。

DXの文脈ですが、書籍『ソフトウェア・ファースト』ではエイリアン(社外から)、ミュータント(社内から)という言葉で強調しています。異分子的なニュアンスがありますよね。


アダプターを採用・育成する

組織なので、会社と出島を繋ぐ存在が必要です。これをアダプターと呼びます。

アダプターは、会社から出島を守ります。これには出島という聖域を死守することもそうですし、出島の成果を適切にアピールして持続性を確保することも含みます。

当然ながら、守れるだけの裁量や権限も必要です。いわば出島組織の社長であり、会社と対等にやりとりできることが望ましいです。


継続的に投資する

少なくとも2~3年はフルコミットできるだけの投資が必要です。

大企業であれば、その程度のお金はあるはずですから、ここは実質的に経営層が腹をくくれるかどうか次第です。DXと同じですね。


遊びに来れるようにする

会社の社員が自由に遊びに来て、試用や意見やフィードバックができるようにします。大企業ですので、何千何万人が自由に遊びに来ることと同義です。

これには二つの効果があります。

  • 1: 従業員からヒントを引き出せる

  • 2: ファンが増えてくれる

    • この人達が社内で存在や価値を広げてくれる

出島での仕事は中長期戦になりますから、ヒントは多い方がいいですし、会社から切られないためにも社員の声も大きくしておきたいのです。一朝一夕ではなく、少しずつ積み上げていくものなので、初期の段階から確立した方が良いでしょう。


注意点としては、遊びに来た人達によって出島が邪魔されないようにすることです。

何を見せるかは、出島の方でコントロールすれば済みます。出島の中にプレイグラウンド(砂場、遊び場)を設けて、ここなら自由に遊びに来ていいよ、とします。

プレイグラウンドにサポートの義務はありません。出島の人達が律儀にすべてに応対する必要はないのです。無いのだということを、プレイグラウンドの方針として周知するべきです。出島の本懐はイノベーションの結実であって、遊びに来た人達のサポートではないからです。


出島にも検証の権限を与える

出島は社内でユーザーを募って使ってもらう、社内にリリースする、社外向けにお金を取る商売をする、といったことができなくてはなりません。

イノベーションには仮説検証も必要です。会社でやるとボトルネックになるので、この部分も出島でやります。ですので、できるだけの権限が要るのです。

ただし、会社のリソースを使うことは許容します。むしろ、一から開拓するのは大変なので積極的に許容します。ここで、会社側の管理が入りがちですが、堪えてください。あくまで主導権は出島にあり、出島が自分達のやり方考え方で検証できねばなりません。


遊ぶ

出島戦略として、現状最もわかりやすい例はNTT東日本の登大遊さんだと思います。

最も本質的なことはただ一つで、遊ぶことです。

上述の異分子も加味すると、イノベーションとは異分子的な人材が遊ぶことで起こります(起こる率が高くなります)

異分子の遊びを容認することと、遊んで出来た成果(ゼロイチのイチ)を価値につなげること。この二つを行うのが出島です。


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