上司という名のお客様 「デファクト・クライアント」
デファクト・クライアントとは、新規事業や組織改善などの新規活動において、事実上のお客様として立ちはだかる存在を指します。
本質は行動の早さと回数
新規活動において重要なことは行動の早さと回数です。
顧客とその候補に対する検証をどれだけ行えるかがすべてとなります。見つかるまでは先に進めません。そうかんたんには見つからないからこそ、とにかく早く動き、たくさん試行する必要があります。
近年では、このあたりを言語化したやり方や考え方も多数あります。
リーンスタートアップ
定量的に素早く仮説検証する
アジャイル
顧客も巻き込みつつ、「使える」を維持しながら少しずつつくっていく
ドッグフーディング
自身が常用するものを公開し、同類を取り込んでいく
etc
立ちはだかる人達
この本質は現代では常識となりつつあると思いますが、わからない人、あるいはわかっていながら行動に移さない人はまだまだ多い印象です。
このような人達の例を以下に挙げます。
上司
上司の上司
お目付け役やアドバイザーといったポジション
審査や評価を担う部門
よくある言い分も挙げておきます。
なぜ稼げるのかという根拠を言え
いつまでにどれだけ稼げるのかというプランを提示してください
これこれの観点を満たしていないので却下します
私たちはベテランであり、色々詳しいのだから聞きなさい
まともなことを言っているようで、その実、無知と無能を晒しているだけです。そもそも土俵からして違います。従来のように与えられた制約を守るように動く世界ではなく、何もない状態で自ら切り開いていき、そこで得られたフィードバックを取り入れていく世界なのです。後者の世界では未来など読めません。だからこそ、VUCA などというわけです。
後者における本質は行動です。かつ、上記の人達はたいてい対象から外れた存在であり、検証対象としての価値などありません。にもかかわらず、その外れた人達が古いやり方で阻んでくるのです。害悪ですらあります。
事実上のお客様であるということ
とはいえ、それらハードルを現実的に取り除くことはできません。人を変えるのは難しいですし、組織や文化を変えることはもっと難しいからです。ほぼ不可能です。
そういうわけで、それらのハードルは事実上最初の顧客として君臨しているようなものです。事実上のお客様、ということでデファクト・クライアントと名付けました。
なお、顧客を表す単語には「カスタマー」と「クライアント」がありますが、「クライアント」の方が関係が中長期的です。そのとおり、デファクト・クライアントも長らく君臨し続けます。というより、異動でもしない限りは居続けます。
事実上のお客様と向き合う
となると、あとはデファクト・クライアントと向き合うだけです。
向き合い方は以下の2パターンです。
受け入れる
受け入れない
受け入れる場合
まずはデファクト・クライアントの存在を受け入れる場合です。
この場合、デファクト・クライアントを突破するための行動を何でもできるかどうかが肝心となります。
根拠が欲しいと言われたら用意しますし、プランを言えと言われたらつくります。何らかのプロセスに則っているなら、それらは全部遵守します。何でもします。
行動という本質は無視して、その最初のお客様のためにとにかく何でもするわけです。
結局、これができるかどうかはやる気にかかっています。そこまでしてでも本当にやりたいかどうか――これに尽きます。
あるなら、四の五の言わずにやりましょう。
ないなら、どうせ越えられないので諦めましょう。
また、ある場合で、かつ、この場所でなくてもできそうという場合は、さっさとそこを見限って別の場所に行きましょう。そこで得られる技術、経験、人脈は使えることがあるので、その調達に専念するのも良いでしょう。
よくあるアンチパターンが「いや、でも、良いこと言ってると思うし……」などとデファクト・クライアントの言い分から学ぼうとすることです。古い世界のやり方を学びたいなら構いませんが、新規活動では役に立たないので意味はありません。時間の無駄です。
※古いやり方も従来の仕事では引き続き役に立ちます。また、新規活動であっても、ある程度成功した頃には必要になります。ですが、それは行動しながらつくればいいことですし、行動しながらの方が得られる情報量も多いのでつくりやすいです。順序が違います。
諦める場合
次にデファクト・クライアントの存在を受け入れない場合です。
受け入れられないからといって、消すことはできませんから、自分の方から離れるしかありません。あるいは、仕事をしている体で時間を潰したいなら、適当に遊ぶこともできます。
ポイントはさっさと見限ることです。さっと諦めて、離れるなり遊ぶなりしてください。中途半端な期待が一番引きずりますし、その間の時間や気力も無駄になりますし、それでも結局何も変わりません。
(関連記事)
行動の早さと回数を稼ぐやり方ができるかは、予算を握っている人がドンと出せるかどうかに帰着されます。これはDXと同じ構図です。
デファクト・クライアントは「やり方を管理している」とも言えます。ならばやり方を管理しない仕事の仕方をすれば良いのです。あります。クエスティブ(Questive)です。
常時チームでいると、既存の空気やルールや文化から逃れにくくなります。新規活動では常識にとらわれず柔軟に、臨機応変に動くことが重要ですから、チームという楔を緩和できると役に立ちます。
『仕事術2.0』では他にも様々な仕事術(仕事のやり方や考え方)を用意しており、行動したい皆さまの背中を後押しします。
また、古いやり方にとらわれている人が、そのことを自覚し、新しい世界に一歩踏み出すための背中も押してくれると思います。
ぜひご活用ください。