「フレキシブル・アロケーション」でダイナミックケイパビリティを手に入れる

ダイナミック・ケイパビリティの本質は「配分を動的に変えていく」ことです。VUCAな世の中についていくために、何にどれだけ費やすかという配分を、動的に微調整していきます。

経営論ということもあり、アプローチはトップダウンのみが想定されていますが、もう一つあります――ボトムアップにやっていくこともできます。


背景

ダイナミック・ケイパビリティは経営論ですので、アプローチとしてはトップダウンが想定されています。

つまり、経営層が「動的な変更」を覚えた上で、組織全体に落としていくわけですね。しかしながら、トップダウンですのでスピードは遅いですし、経営層のバイアスも入ります。きめ細かくないのです。

この問題に対処するために、ボトムアップベースの動的な変更も取り入れます。


フレキシブル・アロケーション

フレキシブル・アロケーション(Flexible Allocation)とは、組織を構成するチームや個人が「配分を動的に変える」ことを実践していくことです。


メリット

Ans: ダイナミック・ケイパビリティを身につけることができます。

特に経営層からのトップダウンではなく、現場からのボトムアップによる「変更への耐性」が手に入ります

要は、現場側で各種配分を動的に変えること、もっと言えば融通を利かせられることが当たり前になるので、その分、変化に強い組織になります。

現場から発しているものなので、トップダウンほど一方通行ではなく現実に即しています。加えて、現場自体が変化に強くなっているので、トップダウンによる変更をキャッチアップするスピードも上がります


何の配分を変えるか

変えられる配分は多岐に渡りますが、いくつか例を示します。

  • 時間の使い方

  • 権限

  • 付き合う人や話す人

  • 使うツール


時間の使い方

過ごし方と言い換えても良いでしょう。

たとえば毎日朝会をしている場合に、朝会をしないという過ごし方に変えた場合、これは「時間の使い方」の配分を変えたと言えます。

何も変えない場合、朝一に朝会をするという過ごし方から脱せません。以下記事でも言及していますが、

おそらく一人のマネージャーがボトルネックとなるあり方から脱せないでしょう。

逆を言えば、朝一に朝会に費やすという配分を変えることで、異なるあり方を開拓できます。たとえば、当サイトでは、現場とマネージャーのスケジュール観が違うと述べた上で、両者がお互いに歩み寄れるハイブリッド・スケジュールを提案しています。

ハイブリッド・スケジュールにより、現場はまとまった時間でしっかりと仕事でき、マネージャーは現場を邪魔せず、しかし必要なコミュニケーションはコンパクトに高密度に行えます。win-winを取れます。


権限

権限は、配分が変更されないものの筆頭です。

これを変えてみることにより、膠着した組織に科学反応を起こすことができます。

たとえば普段は必ず承認を敷いていたり、提案すべてに計画とコストなどの妥当性を説明させているとします。このあり方では承認者がボトルネックになっていますが、これは変えられます。

どこまで適用するかはさておき、承認や提案なしに、とりあえず始めてもいいことにする(権限の配分を変えています)のです。当サイトでは提案2.0という概念をお伝えしました。


付き合う人や話す人

私達はプライベートでも仕事でも、固定的な人とだけ付き合う傾向がありますが、これが融通の無さを生みます。

付き合う人を変える(誰と付き合うかという配分を変える)ことで、これを打破できて、より融通が利くようになります。

たとえば「社員全員と接する存在」を立ち上げることで、社員全員に刺激を与えることができるでしょう。当サイトでは社内エバンジェリストを取り上げました。

社内全員が誰でも誰とでも議論できる、というあり方も盲点とされがちです。これにより、チーム内や部門内といった井の中に閉じてしまう弊害を防げます。

もう一つ、日本では平等思考が強くて、チームメンバーとは必ず接しなければならないと考えがちですが、そんなことはありません。極論、モンスター社員であれば、一部の専任者とだけ接するようにしてチーム全体を守る方が建設的です。当サイトでは「隔離」というテクニックをご紹介しました。

いずれも「誰と付き合うかという配分」を変えています。変え方次第で、こんなにも融通が利いたり、広がりをもたせたりできます。


使うツール

仕事の質やパフォーマンスはツール次第なところがあります。どのツールをどれだけ使うかという配分を変えることで、質やパフォーマンスのテコ入れができます。

たとえばコミュニケーションツールとして Teams や Slack などのビジネスチャットを使っている組織は多いと思いますが、他にもあります。

ビジネスチャット(Chat)以外にも、Wiki や Q&A や Issues といったものがあります。

これらを使うことで、当然ながらチャットではできなかったこともできるようになります。質疑応答や議論が捗ったり、会議を減らせたりできるでしょう。

また、私達は何かと会議をしがちですが、会議には交流とプレゼンスが混ざっており、分離することができます。

会議では会議だけ行って、交流やプレゼンス確認はそれ用のツールを別途使うのです(会議中についでに充足させようとしない)。

これにより、会議にばかり費やしているという原始的な配分から脱せます。


(関連記事)

フレキシブル・アロケーションとは、言い方を変えると「働き方の多様性」を上げるとも言えます。

ですので、働き方の多様性を上げることを考えることで取り組みやすくなるでしょう。このレベルを測る指標も開発したので、ぜひご利用ください。


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