ティール組織の本質は3P

ティール組織は端的に本質をまとめられるほど単純でもなく、開拓もされきっていません。

だからこそ、端的に整理しておくと理解しやすいでしょう。というわけで、3P として整理します。


小集団(Party)

ティール組織において重要な単位が小集団(Party)です。


小集団は数人から十数人程度の規模とされます。

  • 必要最小限かつ必要十分のバランスを厳しく求めます

    • 無駄な人材、有害な人材、介護が必要な人材は許容ません


小集団はアジャイルです。

  • 計画や管理ではなく、行動や反復を重視します

  • 必要に応じて、助言プロセス(後述)を使います

  • 必要なことは、必要なときにやります


小集団は高密度になることが多いです。

  • コアタイム + フル出社のあり方がよくあります

    • 小集団内で、いつでも誰でも誰とでも連携できるようにするためです

    • 聞けばわかるし、すぐ聞けるし、全員がその前提で居ますし、従来の組織パラダイムにあった数々の制約もないため、実際に「すぐ聞く」が成立します

  • このようなあり方を高密度と呼びます

※高密度が唯一のあり方ではないことには注意してください。逆に低密度な小集団もありますし、「基本的に高密度」「でも例外は認める」「常時低密度的なメンバーもいる」のようなあり方も可能です。


小集団は特定の業務を全面的に請け負っています(業務完結性)。

  • その小集団だけで完結します

  • 意思決定権も、その小集団のみが持ちます

    • 管理職や本部や審査部門といったものはありません

    • 経営層でさえ意思決定を持ちません

  • ただし小集団だけでは難しいケースが多々あり、助言プロセスが導入されます

    • 他の小集団に助言を求めることができます

    • 助言者に意思決定権はなく、助言に従うかどうかは小集団側が決めます

    • 会計などクリティカルな部分については、助言を義務化することがあります。また、助言プロセスは、守らなかったら解雇になるほどの根幹です


小集団には、業務を完結できるだけの権限と裁量があります。

  • 例1: 採用の権限を持ちます

    • 必要な人材は自分達で雇えます

    • もちろん採用に詳しい小集団や人物に助言を求めることも可能です

  • 例2: 働き方も融通を利かせられます

    • フル出社の小集団もあれば、フルリモートフルフレックスの小集団もありえます


会社とは、小集団から成るネットワークです。

  • 階層組織ではありません

    • 小集団は会社全体のヒエラルキーにとらわれず、バックオフィス部門含め中央集権的組織による管理もありません

  • 人材は流動的かつ多様的です

    • 複数の小集団に所属することもあります

    • 必要に応じて小集団を行き来します

    • 一時的に無所属になったり、ひとりからなる小集団(ソロパーティー)もありえます

    • 同じ小集団内で何年も過ごすこともあります

    • 直接業務ではない活動を行うタスクフォース的な小集団もつくれます

      • n人が手を挙げれば、もう始めることができます

  • いつでも誰でも誰にでも頼ることができます

    • 代表的な窓口を置くことはありますが、ティール組織の一員としてはオープンでなくてはなりません


プロトコル(Protocol)

ティール組織は小集団から成るネットワークですが、ネットワーク全体の整合性を取るための共通事項があります。これをプロトコルと呼ぶことにします。

原義は「約束事」「外交儀礼」「通信仕様」などであり、全員が基本的に例外無く使うものです。共通言語あるいは憲法にたとえられることがあります。


プロトコルは動的に文書化します。

  • 文書の形で定義し、いつでも誰でも参照できるようにします

  • 必要に応じて変えることができます(動的)

  • 原理原則、主義思想だけでなく、具体的な手順も盛り込みます


プロトコルはオープンです。つまりインターネット上に公開します。

  • 機密情報やプライバシーなどセンシティブな情報を除けば、公開できるはずだからです

    • 公開できない場合、技術力が足らないか、公開できないやましさがあるとみなされます

    • 公開しない理由を説明できるのなら、それでも問題ありませんが、後述のPeaceを踏まえると、公開しない理由は通常ありません

  • 公開のイメージを掴むために、いくつか既存例を挙げます:


プロトコルには紛争解決プロセスを盛り込みます。

  • 紛争とは容易に解決できない議論を指します

    • 問題のある社員の解雇

    • 新しい事業領域への投資

    • 大きな予算の使用

    • プロトコルの変更

    • 新しい小集団の立ち上げ

    • 例外的な独断を行使する条件の追加・変更

      • 組織なので、どうしても意思決定者による迅速な判断が必要なことがあります

      • 通常は社長などトップが行いますが、ティールではトップであろうと独断は認めませんので、別途定めます

  • 議論の手順や成立条件など、プロセスとして定めます


プロトコルには直接業務以外の活動余地を盛り込みます。

    • 新人にプロトコルを叩き込むための時間(オンボーディング)

    • 勉強や練習のためのキャッチアップの時間

    • ひとりで集中する時間

    • 内省や瞑想を行うための時間

    • 大人数が一同に集まる時間

  • どんな過ごし方をどう盛り込むかに正解はなく、また探求の余地も大きいと思います


平和(Peace)

ティール組織では資本主義に毒されず、真の平和を目指します。

もちろん会社である以上、利益は大事ですが、それは結果として生じるものと考えます。平和を目指して実現してきたことと、その姿勢に世の中が共感して、その結果が利益となって返ってきます。

※このようなあり方を平和指向と呼ぶことにします。ティール組織としては「存在目的」として言及されますが、わかりづらいので大胆に「平和」という言葉で表現してみました。


外への発信、啓蒙、教育を重視します。

  • 自分達を知ってもらうことが最重要だからです

  • 経営者の主要な仕事の一つがこれです

    • 会社を最もよく知り、対外的に便利な顔も持っていて適任だからです


会社がオープンになります。

  • プロトコルの公開については、すでに述べました

  • 平和指向では組織の健全性が高くなるため、透明性も高くなり、組織は自然とオープンになります

    • オープンにならない組織は平和指向が足りず、ティールとしては未成熟です


外からのフィードバックも積極的に受け付けます。

  • 平和指向では、内部に閉じて些細なプライドを守ることはしません

  • むしろ積極的に外からのフィードバックも受け入れて、真摯に取り入れていきます


競合という考え方をしません。

  • 従来なら競合となる相手にも分け隔てなく接します

    • たとえば情報を広く公開しますし、研修や講演もします


サステナビリティも重視します。

  • 実際に行動にて示します

  • たとえばサステナビリティの観点で望ましいから、とビジネス上不利な選択をすることがあります

    • 一時的には不利益になりますが、このような姿勢は未来への投資であり、そのうち回収されると考えます


資本主義の毒牙から会社を守ります。

  • 利益を第一に求めるために不誠実な行動に走ることは非常によくありますが、その毒牙から組織を守ります

  • 経営者の主要な仕事の一つがこれです

    • 経営者はガーディアンです

  • 従業員各々も平和指向を拠り所にします

    • ❌儲からないので、仕方ないけど利益第一なやり方をしよう

    • ⭕平和指向でも利益の出るやり方を模索しよう


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