見出し画像

“支援する”から“参加する”行政へ ~千曲市ワーケーション~

はじめまして、千曲市市民協働課の吉村信彦と申します。
今回の記事では、行政職員の目線から、広がりを見せる「千曲市ワーケーション」との関わり方について触れていきたいと思います。

民間企業からの転職、行政の世界へ

まずは簡単な自己紹介から。
地元出身の職員が多い千曲市役所ですが、私は数少ない県外出身者(奈良県出身)です。
食品メーカーに9年半勤めた後、第3子の誕生を機に妻の実家がある千曲市での生活が気に入り、移住、転職しました。転勤族だったこともあり、それまで地域の活性化にはそこまで関心を寄せていなかったのですが、地方自治体の職員となることで、地域のことを仕事として常々考えるようになりました。

吉村さん

現在は、市民協働課で民間の活力をまちづくりに活かす「協働」を推進する様々な業務を行っています。
千曲市ワーケーションの原動力は株式会社ふろしきや代表の田村英彦さん(以下:田村さん)をはじめとした民間の活動です。私たち市民協働課は、地域の活性化に繋がる公共的な取組みを次々に生み出してくれている千曲市ワーケーションを推進していく立場にあるのです。

行政組織だからこそできる連携体制を

千曲市ワーケーションの最大の特長は、すでにある地域資源や遊休資産をうまく使って企画構成されている点だと思います。例えば、街全体をワークスペースとして捉えることで、参加者が地域との関わりを増やし、市内の回遊性を高める工夫が施されています。平日の稼働が課題だった観光列車をワークスペースかつ移動手段として活用する仕掛け「トレインワーケーション」は、限られた財源で効果的な公共サービスを提供しなければならない私たち行政にとって、見習わなければならい取組み、姿勢の一つです。

ろくもん車内

ワーケーションを推進する担当部署は、観光、移住推進、産業労働など自治体によって様々です。千曲市は当初からDMO(地元と連携して観光名所を作り出す、地域の資源に精通した法人)や産業振興課などがそれぞれの立場でワーケーションを支援してきましたが、ワーケーションを続けることによって生まれる関係人口の増加や、それがもたらす新たな公共的な取組みは、担当部署の垣根を超えるものが増えてきています。

画像3

例えば、今回のワーケーション(2021年11月14日から7日間開催)への参画も、行政の特徴である、縦割り組織による意思決定だけでは気軽に参加しづらいという課題がありました。そこで、機動的な連携、協力を行うためにも、市民協働課が部局横断的な立場で庁内調整を行いました。具体的には、ワーケーションの一部コンテンツである「官民協働によるアイデアソン」を職員研修として位置づけることで、各部署の職員がワーケーションに参加しやすい環境づくりを行いました。その結果これまでで最多となる「7名」の職員がワーケーションに参加し、それぞれの立場で学びを深めることができました。アイデアソンでは、「モビリティ」や「ゼロカーボン」、「ダイバーシティ」など重要な社会課題についての学びのコンテンツが盛り込まれており、行政としても参加する意義にあふれた学びの機会となりました。

行政の参加者

これまで千曲市ワーケーションに参加してきた市の職員はごく一部で、しかもプライベートの参加がほとんどでした。ワーケーションが地域にもたらす良い影響を新たに多くの市職員に実感してもらい、公的にもワーケーションの取組み内容が認められた新たな瞬間として、今回の千曲市ワーケーションは、個人的にも感慨深い回となりました。

行政がワーケーションに参加する意義

私事ですが以前、妻に「ワーケーションって何してるの?」と聞かれた時に、「すごい人たちが千曲市に集まって、すごいことやってるんだよ。」となんとも恥ずかしい説明をしてしまいました。
私の語彙力の乏しさを差し引いても、千曲市ワーケーションについて見ず知らずの人に簡単に説明することは本当に難しいです。
それは行政にとっても同様で、断片的な情報発信だけでは、千曲市ワーケーションの魅力や価値を十分に伝えてこれなかったと感じています。
千曲市ワーケーションの最大の魅力である、参加者間の偶発的な“出会い”と“交流”から生みだされる化学反応は、近くで目の当たりにし、参加することでしか感じられないです。地域外からの参加者と行政を含めた地域住民の関わりを深めていくことで、その輪がさらに広がり、千曲市のまちづくりにまで効果が波及することが期待されます。
市としてもこれからは“支援する”だけでなく“参加する”ことについても重視していきたいと考えています。
そのためにも、ぜひ田村さんには市の決裁がとりやすい企画を練っていただきたいと思います(笑)

「“出会い”が重要な要素」ワーケーション参加者を対象にした過去の調査レポートはこちらから

千曲市ワーケーションは枠のないジグソーパズルのよう

2019年10月から始まった千曲市ワーケーションは、運営主体であるふろしきやの田村さんをはじめ、「参加者」から「参画者」になっている「千曲市ワーケーション常連チーム」の皆さん、ワーケーション参加者を受け入れている「地元関係者」の皆さん、地域との連携調整を担う「信州千曲観光局」の皆さんほか、ワーケーションにご参加、ご協力いただいている全ての皆さんのおかげで、単なるワーケーションイベントから、千曲市の活性化にとって不可欠なプラットフォームとして発展しています。

画像5

回を重ねるごとに広がるその取組を見ていると、さながら枠のないジグソーパズルのよう。
人と人が出会うことで、足りないピースを補ったり、ピース自体が増えてその枠を広げたりと、その図柄がどんどん変化を遂げているのを近くで見れるのが楽しみでなりません。
これからも、千曲市ワーケーションが参加者の皆さんや地域社会にとって、価値ある機会であり続けることを願い、個人としても、市職員としても応援し続けたいと思います。

千曲市ワーケーションに関わる全ての人に感謝を込めて
千曲市 市民協働課 吉村 信彦

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?