抗体医薬と免疫
ジェンナーの天然痘
牛の乳搾りをしている女性に牛の痘疱が伝染ると天然痘にかかりにくくなる現象からジェンナーは1796年、使用人の息子に牛痘を植えてみた後、天然痘の膿を皮膚から接種してみたが天然痘に罹患しなかった。
天然痘ウイルスはDNAウイルスだったことも幸いした。
サル免疫不全ウイルス(SIV)が変異しエイズウイルス(HIV)になると極めて凶暴になる。インフルエンザウイルスやエイズウイルスはRNAウイルスであるため変異しやすい(コピーミスが生じやすい)。
北里柴三郎と抗毒素
ロベルト・コッホは1882年に結核菌のワクチンを開発しようとしていた。フランスのパスツールは1885年に狂犬病のワクチンを開発していた。
ワクチンは病原体の毒性を人工的に弱めて罹患させることで獲得免疫に記憶させることで免疫を確保する。
破傷風は病原菌自体が引き起こす病気ではなく、病原菌が放出する毒素が原因であった。
柴三郎はコカイン中毒に注目し、少量から始めて次第に量を増やしていくと中毒が起きにくいことから、破傷風にも応用が効くと考えた。その理由を、柴三郎は血液中に毒素を中和する物質が入り込んでいると考えた。
血液を赤血球と血清に分離したら血清に中和物質があることを発見した。それを「抗毒素」と名付けた。現在の「抗体」のこと。
柴三郎より3年遅れてコッホの研究所に入ってきたベーリングはジフテリアの研究をしていた。ジフテリアも破傷風同様に病原菌が毒素を放出することから、柴三郎と共同で研究をし共著として血清療法を発表したが、ベーリングはノーベル賞になったが、柴三郎は黄色人種であったためノーベル賞の対象にはならなかった。
二人の研究は抗毒素が特異的に働くという発見もあった。ジフテリアの抗毒素はジフテリアだけに効き、破傷風の抗毒素は破傷風にだけ効く。
免疫の使徒
病原体を見つけると「マクロファージ」が病原体を破壊しに行く。病原体の断片を「ヘルパーTリンパ球」に届けると、ヘルパーTリンパ球は病原体を特定し、迎撃体制を「Bリンパ球」と「キラーTリンパ球」に伝える。これを「抗原提示」という。
ヘルパーTリンパ球からBリンパ球に情報を伝達している物質がいくつか見つかっている(約30種)。
インターロイキン6
「Bリンパ球に抗体を作らせる」「発熱炎症を起こす」「リウマチを起こす」「血小板を作る」「骨髄腫細胞を成長させる」「悪液質に関与する」という具合で、インターロイキン6には善と悪の両面を備えている。
スペイン風邪の致死性にもインターロイキン6が関与していた。リウマチは、インターロイキン6が過剰分泌されることで引き起こされる。大きく関与しており、大阪大学が中外製薬と組んで「アクテムラ」として製薬化している。