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2018年。
ああ、もう全然。全然だめ。
どうしたらいいんだろ、どうしたら、わたしも、あなたみたいに前に進めるんだろ。
あなたに教えてもらったあのバンド。
まだまだ駆け出しのあのバンド。
CDも買って、ライブも行って、わたしも大好きになったあのバンド。
あなたと別れたあとも、あのバンドを聞いていた。あなたと繋がれた気になって、わたしは手放すことができなかった。
あのバンドのボーカルと、あなたはとても仲良しなのよね。知っているわ。
あなたがとても尊敬していて、憧れている先輩なのよね。わかっているわ。
ああ、あなたと別れたあとの、繋がりだったあのバンド。
あのバンド、解散しちゃうのね。
わたし、言葉が出なかった。
ああ、あなたとの繋がりが。
またひとつ消えてしまうのね。
ああ、わたしの好きなバンドが。
またひとつ消えてしまうのね。
今日はラストライブ。
あなたは絶対くる。わかっているわ。
わたしの好きなバンドのラストライブ。
わたしも行っていいかしら。
ああ、音が鳴り始めてしまったわ。
終わりの始まりね。
音が鳴り止んだら、
わたしの好きなバンドも
あなたとのつながりも、
またひとつ、消えてしまうのね。
あの日のことを思い出す。
別れた後にいちどだけいった食事。
そのとき盛り上がったのもあのバンド。
わたしの好きな曲と、あなたの好きな曲が同じだったのよね。
わたしの好きなバンドになってたことを知らないあなたは、わたしが口ずさむと、眼鏡の奥の目を見開いて、驚いていたわね。
ああ、そう。この歌よ。
この歌なの。おかしいわ。
わたしの大好きな歌なのに、
ステージの上が滲んで見えないわ。
ふと目をそらしてしまったの。
わたし驚いたわ。わかっていても驚いた。
そらした先にあなたがいたの。
あなたは一生懸命ステージを見てた。
あなたの大好きな歌。大好きな先輩。
一生懸命目に焼き付けてたの。
ああ、どうしてくれるのよ。
あなたのせいで、好きなものが増えたじゃない。
あなたのせいで、また失う悲しみ感じるじゃない。
興味なかったの。
今まで全然興味なかった。
テレビに映らないバンドなんて知らなかった。
好きになるはずなかったのに。
あなたは本当にずるい人ね。
わたしをおいてどんどん先に行くのね。
あなたのかけらを何一つ手放せずに、
あなただらけになった毎日で、
あなたがいない時間を過ごさなきゃいけないなんて。
今年の初めに生まれた恋も。
今年知ったあのバンドも。
今年始まったあなたとのことも。
全部全部今年のうち終わっちゃうのね。
みんな真面目ね。几帳面ね。
来年にまた、全部会いに来てくれるのかしら。
あなたは本当にずるい人ね。
ああ、もう全然。全然だめ。
いつになったらこの涙は枯れるのかしら。
秋。