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アニメ『メダリスト』1話を観た

主題歌を米津玄師氏が逆オファーしたと話題になったアニメ『メダリスト』を観てみた。

まずその逆オファーの話を聞いて、原作を全く知らない筆者は少し意外に感じた。幼い少女たちが主人公の作品で、ビジュアルだけで観ればアニメの画風がいわゆるよくある〝萌えアニメ(死語)〟のように見えたからだ。いわゆる「きらら作品」みたいな。

しかしあらすじなどを見てみれば超王道スポコン的であり、先日公開されたノンクレジットオープニング映像についた原作ファン達のコメントが非常に熱量が高く、益々興味をそそられた。曲もめちゃくちゃ良いしね。

さて、現在そのアニメ視聴を終えたところなのだが、この胸中に湧いた思いをここに日記のように率直に連ねてみようと思う。

このブログはアニメ第1話の内容を含みます

物語は26歳の青年と11歳の少女のダブル主人公で進行する。原作者・つるまいかだ先生が声優の春瀬なつみ氏のファンであり、春瀬氏に「会社を辞めて漫画家になります。春瀬さんに主人公の声を演じてもらうのが夢です」とファンレターを送っていたのだが、確かに少女の主人公・結束いのりは相当なハマり役である事は疑いようがない。

〝ミミズ〟が好きだという少女・いのりは自身の姉がリンク上で怪我をし、スケートを引退していた。それ故に母親はいのりがスケートをやることに猛反対。しかしスケートリンクの受付のおじさんが飼っている小鳥の餌としてミミズを賄賂として渡すことで、こっそりリンクに忍び込ませてもらって練習していた。横浜から名古屋へ働き口を探すために来ていた元アイスダンスの選手である青年・司(つかさ)に忍び込む瞬間を見られてしまったところから物語は動き出す。
司から逃げるいのりはおどおどしていて小心者のようでいて、実のところ非常に大胆で、賄賂で侵入して練習していたのもそうだが、逃走時は階段の手すりを滑り降りたり、高所へ逃げたりと彼女の二面性が垣間見える。

ミミズ……は筆者は苦手なのだが、司もミミズが苦手でちゃんとビビってくれるので味方がいて安心する。

この作品はキャラクター達の心情が非常に生々しく描かれており、共感性の高さからグッと引き込まれていった。

いのりは自身に誇れるものや「好きだ」と言えるものを渇望していて、何者にもなれていない自身を払拭したい。どうしてかは分からないが、夢中になれる、諦めきれない思いがスケートリンクの上にずっと乗っていて、何年も憧れ続けている。しかし姉がスケートで脚を怪我し、引退しているため母親はいのりにスケートをやらせたくないのだ。「どうしてもやりたいことがあるが、親に言い出せない」という葛藤を続けていた。子供は親に道を通せんぼされてしまうと、その先には進めなくなってしまう。周囲の反対に押し潰されてしまった経験が、大なり小なり皆さんにもあるのではないだろうか。

司という人物はその末の人生を物語っている。
幼い頃、親に言い出せなかったのか周囲の子供より始めるのが遅くなってしまい「もっと早く始めていればどうなっていたんだろう」と夢想のような気持ちを抱えながら、取り戻せない過去を引き摺ったまま生きていた。
そんな彼がいのりに乗せる気持ちはそれこそ「祈り」のようであり、自身の夢を彼女に託すような強い思いを抱いていき、きっとその願いはこれからどんどん大きくなっていくことだろう。

大人になった我々がいのりを通じてあの頃の夢を思い出し、司を通じて今の自身の胸に強く問いかけてくる。会社を辞めてやりたかった漫画家の道に思い切って踏み出した作者・つるまいかだ先生の執念のような想いは、間違いなくこの2人の主人公を動かし、我々の心に貫く矢として放たれ、深く深く刺さっただろう。

1話が終わり、矢が刺さった胸に飛び込んできたのは米津玄師氏が手掛けた主題歌『BOW AND ARROW』の美しいイントロだ。

その美しさ、壮大さを抱く音色が『メダリスト』のタイトルと共に訪れた瞬間、筆者の両目からは大粒の涙が突然に溢れ出した。「感動」という言葉の本当の意味を知ったような気がする。この瞬間感じた思いを逃したくなくて、切り取っておきたくて、自分の大事なアルバムに取っておきたくてこのブログを書き出したところがある。

先のノンクレジットオープニングの映像で何度も何度も聴いていたはずだった曲なのに、この1話の終わりに流れた時だけはまるで初めて聴いたような、突風のような衝撃が吹き荒れたような錯覚すら覚えた。イントロのまさに一音目が聴こえた瞬間に、鍵が開けられたように感情が決壊したのだ。

自分の人生は誇れるものだろうか。
そうでなければ、誇りを勝ち取るための執念はまだ胸に眠っているだろうか。
どこかに置いてきてやしないか。まだそこで眠っているのならば、とっとと起こしてやらねばなるまい。

自分の人生は豊かだろうか。
苦しくても辛くても、他の何もかもを犠牲にしてでもやりたいことに出会えているだろうか。
どこかに転がっていやしないか。まだ本気になれるものがないならば、さっさと見つけてやらねばなるまい。

『メダリスト』は我々の手をそうやって引っ張り、過酷な氷上へと連れ出す。
きっとこれは生涯のバイブルとなるであろうと、筆者は既に確信している。

アニメ『メダリスト』はディズニープラスで最速配信。その他のサイトや地上波でも視聴可能だ。
まだ観ていないあなたも是非。

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