確率思考の戦略論:市場構造を形作る「本質」とは何か? #6
今回の本は、「森岡毅さん(マーケター)」と「今西聖貴さん(市場調査のプロ)」の「確率思考の戦略論」です!
著者のお二人がP&Gで得たマーケティングや市場調査の力で、USJの集客人数を約600万人増やし、ディズニーを抜いて、USJを一度、日本一のテーマパークにした際のお話が書かれています。
内容はすごく専門的な所が多く(特に今西さんのは数学が難しくて分からなかった。。。笑)、知れて良かったと思った知識や、僕なりに感動した箇所を書きます。
細かい内容は他の人のブログや実際に本を読んでみて確認してください!笑
1,資本主義社会の本質(DNA)は何か?
結論から言うとそれは、「消費者のプレファレンス」です。
プレファレンスとは、消費者のブランドに対する相対的な好意度(簡単に言えば「好み」)のことで、主にブランド・エクイティー、価格、製品パフォーマンスの3つによって決定されています
「市場競争とは、1人1人の購入意志決定の奪い合いであり、その核心はプレファレンスである」という真理に辿り着きます
マーケターの森岡さんが大切にしているのが、「目に見えているものに惑わされず本質を洞察すること」です。
この世の中は1企業ではコントロールできない事が溢れており、そこに無駄な経営資源を投下しないためにも、「本質」を捉える事が重要です。
人間の「欲」を本質として、資本主義社会では様々な現象を起こし、複雑な社会構造を作り出しています。
要するに、マーケティングで常に考えるべきなのは「消費者視点」であり、自分のアイデアがどれだけいいと思っても、消費者にとって良くないといけないと言う事です。
企業は、消費者の購入意思決定の争奪戦をしているため、経営者は経営資源を、消費者のプレファレンスを上げるために投下すべきです。
消費者が自然と選んでしまう商品を作るためにマーケターが意識すべきポイントらしいです。マーケティングを学ぶ際には、この本質をしっかりと意識して忘れないようにしたいです。
僕はプレファレンスの章を読んで、「経済の需要と供給」を見る事も消費者視点で考える時に必要ではないかと思いました。
それを、僕が今、動画クリエイターをやろうとしている事で考えてみました。
これから世の中が5Gになり、動画需要が増えると予想される中で、ビジネスとして取り組むには良いタイミングかなと思いました。ただ、コロナウイルスによる観光業での広告需要が減る事も考えると難しいです。。。
逆に、需要がなくなって来た時(十分AIによる自動化が進めばありえる?)は、その時点で伸びている事業を見つける嗅覚って必要かなと反省しました。
僕の本質は「沢山の人を幸せにする」事なので、目標達成のためにプライドを捨てられるサイコパスになりたいです。
サイコパス性とは、感情的葛藤や人間関係のしがらみなどに迷うことなく、目的に対して純粋に正しい行動を取れる性質のことだと。暴力的なサイコパスはその性質が犯罪として表れているだけで、自分の欲求に対して純粋で素直に行動してしまうのだと。
2,プレファレンスを高めるには?
・エボークトセットのシェアを高める
消費者の頭の中には、今までの購入経験から買って良いと思ういくつかの候補となるブランドがあるという事です。たとえばビールを買う場合の私のエボークト・セットには4つのブランドが入っています。ザ・プレミアム・モルツが筆頭、ヱビスビールが次点。その次は一番搾りと黒ラベルの2つが大差なく並びます。この場合は、買っても良いと思っているその4つのブランドのまとまり(エボークト・セット)の中からその時々で買うブランドをランダムに選んでいるのです。消費者は誰しも「エボークト・セット」を持っており、プレファレンスに基づいてそれぞれのブランドを購入する「確率」が決まっているのです。
森岡さんのビールのエボークトセット
ザ・プレミアム・モルツ 50%
ヱビスビール 30%
一番搾り 10%
黒ラベル 10%
森岡さんがビール買う際は、上記の4つのビールの中から、その時々にサイコロをふるように選ぶことになります。
なので、消費者に商品を選んでもらうためには、消費者のエボークトセットのシェアに入ることや、高めることが必要になります。
確かに、何か選ぶ時、すでに頭の中に候補はあり、そのシェアは市場全体のプレファレンスを表しているという事が納得できました。
森岡さんは、戦略は3つしかないとおっしゃっています。
1つはこれまでに書いた、「プレファレンスを高める事」で、その他2つが、「認知を高める」と「配荷を高める」事です。
認知を高めるは言葉通りで、どんな顧客をターゲットに広告を打つのか?その広告は既存の顧客のプレファレンスに影響を与えないか?どんなポジショニングを狙うのか?(消費者のエボークトセットに入る)などです。
配荷を高めるは、実際に店頭に並ぶ商品の陳列や需要にあった供給の調整、地域ごとに違う商品の重要の見極めと調整などです。ここを高める事も売り上げに直結するそうです。
僕は、この本を読むまでは、マーケティングは広告で認知を高めるイメージが強かったのですが、マーケティングで大切なことは、目的に対し、今企業がとっている戦略は何かを把握し、消費者の事を考えて行動する事なんだなと思いました。
3,リーダーに必要な要素
企業のリーダーにとって最初の大仕事は、「明確な目的設定」をする事です。「結局、どうしたいの?」と言う話で、そこが決まっていないと戦略は作る事ができません。
USJだったら「〇〇年に〇〇万人の集客を達成し、経営をV字回復させる事」を目的に定めていました。
そして森岡さんは、その目的が達成できているときの状況を想像力と数値を使って徹底的に考えることが大切だとおっしゃっています。
目的があり、その達成のためのギャップを数値化し、どう埋めていくのか戦略を立てるのです。これが僕には、今までに読んできたマッキンゼーでの考え方のMECEや論理的思考などが重なって見えました。
ここで、企業の出口は4つあると言う事を思い出しました。
「上場、売却、継承、倒産」
倒産が目的はあり得ないけど、どこをゴールに定め起業をするのか、どれくらいの規模になっていたいのか、どんな理念を掲げて世の中にサービスを出すのか、そのサービスは消費者が好きになってくれるのか、、、
沢山考えることはありそうですし、ちゃんと具現化したいです。
そして、この目標達成のため、リーダーは様々な意思決定をしていくことになります。その際、感情は邪魔になります。
1でも少し触れましたが、サイコパス性です。
感情が邪魔して、目標達成に1番確率が高い選択を選べないようでは、それを成し遂げる事ができません。
サイコパスと聞くと、危ないイメージを抱きますが、その危ない印象の正体は、どんな目的であっても、達成のため意思決定できる事です。
大企業の経営者の多くはサイコパス性を持っているそうです。その意思決定で不幸になる人も当然出てきますが、そこに感情を持ち込まず、目的達成のために舵を切れるのです。
僕は感情的な人間です。ただ、感情的な人間でも、努力でサイコパス性は身に付けられる事も分かっており、僕も目的に向かって、感情に左右されず、確率の高い選択ができるようにしたいです。
4,組織は人体と似ている
森岡さんの言葉ですごく印象的だったのが、
「使うこと」と「使われること」は素晴らしい
です。
この事を人体に例えて説明されていました。
「腸」と「脳」ではどちらが重要でしょうか?多くの人が「脳」だと答えると思います。しかし私はその考え方は必ずしも正しくないと思うのです。「腸」がなければ「脳」は活動に必要な栄養を摂取できなくなって、いずれ死滅してしまいます。私は「腸」と「脳」は同等に重要だと考えているのです。腸は脳を利用し、脳は腸を利用しています。美しい共依存関係にあるのであって、どちらが重要な訳でも偉い訳でもありません。
企業活動においても、さまざまな組織部門が人体における臓器のように編成され、それぞれの社員がそれぞれの部門で細胞のように働いています。できれば人体組織のように、高次元で統合された共依存関係で社内組織を成立させ、社外との厳しい生存競争を勝ち抜いていきたいものです。そのために部署間には「役割の違い」はあっても、「上下や優劣」がある訳ではないことを組織の隅々まで徹底して認識させねばなりません。
組織の隅々まで「上下や優劣がある訳ではない」と認識させるという点に、すごく感銘を受けました。
経営者に弟子入りをすると、多くの場合は搾取されると聞いた事があります。そんな表現が少し印象に残っていたので、何となく企業に入ることに抵抗が生まれたのも覚えています。
森岡さんが繰り返し強調していたのが、「人間1人でできる事はたかが知れている」という事です。
組織は人体のように、生き抜いていくため協力しあうもの。
組織を作る上で大切な価値観を学べたし、企業に対するイメージが変わりました。
5,最後に
今回の紹介では、マーケターの森岡さんの章から学んだ事が中心でした。今回紹介したもの以外にも、僕の知識では上手く書けない大切な概念が沢山詰まっている本です。
また、今西さんの市場調査の章も数学がふんだんに使われて書かれています。(理解出来ないところが多かった。笑)
ただ、マーケティングが組織の脳であるなら、市場調査はマーケティングの判断を助ける耳や目などにあたります。
市場調査が正しくないと、マーケティングのブレが出てきてしまう。
本当に組織ってすごいなと思いました。是非、今西さんの章も読んでみてください。そして僕に教えてください。笑
最後まで読んでくださりありがとうございます。この本も、何度も読み返したい本でした。