川上未映子の「黄色い家」、少女たちの黒歴史
川上未映子の「黄色い家」を読んでみた。
ネタバレにならないように感想を述べてみたい。
主人公のわたしは、15歳のときに知り合った黄美子さんがネット記事で女性を不法に監禁し裁判にかけられていることを知る。
そしてわたしは黄美子さんが自分たちと過ごした過去のことを話していないか不安になる。そう、彼女はひとに知られたくない過去を持っていたのだ。それは少女たちの黒歴史。
その黒歴史はわたしが東京の郊外の古くて小さな文化住宅に住んでいた十五歳のときにはじまる。母親は地元のスナックを転々とするような生活をしていて、ある日突然黄美子さんが家で隣に寝ていて、素性は分からないものの、冷蔵庫に食べ物をいっぱいにしてくれりして親切にしてくれる。
わたしはファミレスでバイトをして72万円貯めるが、母親の彼氏のトロスケに盗まれて、すべてやる気をうしない、黄美子さんに誘われて家を出る。
そして三軒茶屋で「れもん」というスナックをはじめ、運にもめぐまれて繁盛する。わたしは黄美子さんとあらたに蘭と桃子という女の子もふくめて共同生活してせっせとお金を貯めていく。彼女たちにはお金しか頼るものがなかったのだ。
だがその順調な生活も突如暗転する。そこからわたしはかなりやばいやり方で必死にお金を貯めることになる。
この小説を読んで感じたことは、川上未映子の小説はディテールがしっかり描かれていて、ほんとにこんな子がいるだろうな、と思わせることだった。
また「血を流しながらほほえみ、強く肩を抱きよせてくれるようなギター、そして終わり近くのドラムの迫力と悲しみの連打は、まさにいま息絶えながら甦ろうとしている魂を見つめているような瞬間そのものだった」「ファミレスから五人で通りにむかって歩くとき、わたしはふいにしあわせを感じて立ち止まり、胸をおさえた。青春みたいだと思った」などの文章もいい。
一種のノアール小説だと思うが、どこか青春の痛み、居場所のない人間のやり切れなさや人のもっているまがまがしさを感じられる小説だと思った。
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