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むかし書いた韓国コラム #804

 ソウル歴史博物館の前庭に、かつてソウル市内を走っていた路面電車の車両が展示されている。廃止されてからすでに40年が過ぎている。保存場所を転々としながらボロボロになっていた車両だが、なくなっていた部品類も新たに製作され現役当時のピカピカの姿に復元された。おざなりな保存が目に付く韓国では奇跡的とすら思える。

 日本では近代化遺産や産業遺産、機械遺産としてさまざまなものが保存されている。これに対し韓国では古いものはあまり顧みられていないようだ。「漢江の奇跡」と称される高度成長期には国民が一丸となって未来に向かって前進し、昔を振り返る余裕などなかっただろう。しかし韓国もいまでは先進国と肩を並べるまでに成長した。そろそろ過去を振り返る余裕も出てきたはずだ。韓国も近代化遺産などの保存にもっと目を向けてほしいと思う。現在の韓国を作った影の主役たちなのだから。

【解説】
 この車両はそれまで子ども大公園に展示されていた。当時はあまり手入れもされておらず、一部のガラスが割れており、車内も天井がはがれ落ちているなど荒廃していた。それを現役当時の姿に戻したのは称賛したい。写真は2002年当時子ども大公園に展示されていた車両。

(初出:The Daily Korea News 2009年9月3日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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