むかし書いた韓国コラム #194
韓国人の姓のうち人口が少ないものは「稀姓」と呼ばれる。ロッテカードのCMを機に最近この稀姓に関心が集まっている。とある新聞に出ていたのは「尊」という姓。全国で100人ほどしかいないのだという。一族の出自を示す本貫は「足利」。本貫と姓を合わせて「安東金氏」などのような書き方をするが、これに倣うと尊さんは「足利尊氏」となる。これは室町幕府の初代征夷大将軍の「足利尊氏」(あしかがたかうじ)と同じ表記だ。
こんなできすぎた話はあるのか、疑問に思い統計庁の「2000年人口住宅総調査および本貫集計結果」(2003年発表)ですべての姓をチェックしたが「尊」という姓は見あたらなかった。この調査は全国に数人しかいない「京」「氷」「宇」などという稀姓まで網羅したもの。100人いるという「尊」がごっそり抜け落ちているとは思えない。新聞のガセネタだったのか、いまいち釈然としない。
【解説】
改めて調べてみたが「尊」という姓の存在はその新聞以外では確認できなかった。100人ほどしかいないとはいえ公的な統計から漏れることは考えられない。長い歴史の中で消えてしまった姓というものもあるが、尊はそうした記録にも含まれていない。なぞの姓だ。
(初出:The Daily Korea News 2009年10月19日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)