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トヨタ生産システムを人事労務業務に応用すると〜生産管理の視点で考える人事労務管理〜

ウッドエイト社会保険労務士事務所/株式会社HCP代表の八木香苗です。
「生産管理」と聞くと、製造業の話だと思いがちですが、人事労務業務も「組織の生産性を管理する」 という点では共通しています。
人材の適切な配置、業務の効率化、無駄の排除は、人事労務においても重要な課題です。

そこで、今回は「トヨタ生産システム(TPS)」の考え方を人事労務に応用するとどうなるか、業務改善のヒントについて考えてみます。


トヨタ生産システム(TPS)とは?

TPSは、トヨタが生み出した生産管理の仕組みで、「ジャスト・イン・タイム(JIT)」と「自働化」を二本柱とし、これに「カイゼン(改善)」「ムダの排除」などを加えて継続的な改善 を進めることで効率化を実現するシステムです。


1. ジャスト・イン・タイム(JIT)を採用・人員管理に活かす

JITとは?
「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給することで、在庫を最小限に抑える考え方です。

💡 人事労務業務でのJIT応用

適切な採用タイミングの設定
人手不足が発生してから慌てて採用するのではなく、事業計画・退職リスク・業務量を予測して、必要な時に最適な人材を確保する。

リスキリングによる柔軟な人材活用
急な配置転換に対応できるように、従業員のスキルを見える化し、不足しているスキルを計画的に育成する。

業務量・労働時間の最適化
業務量と人員配置のバランスを取り、過不足なく適正な人員を配置する。


2. 自働化で労務管理の精度を向上

自働化とは?
機械が単に自動で動くだけでなく、「異常が発生したら止める」仕組みを組み込み、品質を向上させる考え方。

💡 人事労務業務での自働化応用

勤怠管理の効率化
長時間労働や未払い残業の兆候を見える化し、管理者が迅速に対応できる仕組みを整備。

労務リスクの可視化
「労務相談の内容」「退職理由」「エンゲージメント調査」 などのデータを蓄積し、パターンを分析することで、組織の課題を事前に把握しやすくする。

ハラスメントやトラブル発生時の迅速な対応
相談窓口の設置や、問題が起こる前に対話の場を設けることで、大きなトラブルに発展する前に対応できる仕組みを整える。

📌 自働化のポイント
自動的に判断を下すのではなく、「人が気づきやすい仕組みをつくる」ことが重要です。
例えば、定期的な1on1やチェックインミーティングの場を設けることで、社員の変化をキャッチする機会を増やすことも一つの方法です。


3. カイゼン(改善)で業務プロセスを最適化

カイゼンとは?
「小さな改善を積み重ねることで、大きな成果につなげる」考え方。

💡 人事労務業務でのカイゼン応用

採用プロセスの改善
面接官ごとの評価のバラつきをなくすために統一基準を設け、評価を標準化する。
ペーパーレス化を進め、書類選考・面接プロセスを効率化する。

評価制度のブラッシュアップ
360度フィードバックを導入し、上司だけでなく、同僚・部下の視点も反映した公平な評価 を実施。

社内研修の効率化
eラーニングやOJTの体系化を進め、「誰にでも再現可能な研修プログラム」 を作る。


4. ムダの排除で業務のスリム化

トヨタでは、「7つのムダ」を削減することで生産性向上を図っています。
人事業務に当てはめると、以下のようなムダが考えられます。


5. 標準化と見える化で業務の属人化を防ぐ

標準化とは?
作業手順を統一し、「誰がやっても同じ品質で業務を遂行できる」 ようにすること。

💡 人事労務業務での標準化

社内ルール・業務フローの明文化
人事担当者によって対応が異ならないように、マニュアル化し、社内の標準を統一 する。

データの見える化
 エンゲージメント調査を定期的に実施し、従業員の働きやすさを定量的に把握

KPI設定による可視化
離職率、残業時間、エンゲージメントスコアなどを定期的にチェックし、組織改善の方向性を明確にする。


まとめ

生産管理の視点から考えると、人事労務業務も「最適な人材配置」「無駄の排除」「業務効率化」が求められることが分かります。

📌 トヨタ生産システムを人事労務に応用すると…
適材適所の配置(JIT)
業務トラブルを未然に防ぐ仕組みづくり(自働化)
業務プロセスの継続的改善(カイゼン)
ムダな作業を削減(ムダの排除)
制度・データの標準化(見える化)

人事労務業務をより戦略的に改善ために、TPSの考え方は非常に役立つことが分かりました。

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