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「外資系は働きやすい」という幻想

 「次の職場は働きやすさを重視したいから、外資系かなあ」なんてことを、周りでは聞かないが、ネットの記事なんかで目にする(実在するかは別として)

 これに関して、なかなか言いたいことがある。

 まず、働きやすいとは何なのか。多くの場合、有給休暇が取りやすい、残業が少ない、ノルマやプレッシャーが無いなどが挙げられる。しかしながら、民間企業というのは基本的には営利企業だ。営利企業というのは、簡単に言えば商売をして、利益を追求しますよ、という会社だ。「うちは社員が第一!」と言う会社があったとしても、それは利益をしっかり確保出来る製品やサービス、ビジネスモデルが確立されている場合の話であり、そういう意味では真に社員の生活を第一に考えられる企業などないのである。この場合の働きやすい、というのも、(結果をしっかり出してセルフマネジメントしているから)有給休暇が取りやすく、(プランニングをしっかり回して管理しているから)残業が少なく、ノルマ(を見据えて活動している、あるいは達成している)から、プレッシャーが少ない、というのが実態だ。
 桃源郷がそこにある、のではなく、能力がある人が集まっている結果に過ぎない。


 もうひとつ、働きやすさは十人十色、味覚やファッションのように人それぞれ違うということを改めて認識しなければならない。「残業ゼロ、言われたことをやってればいいから楽」という人もいれば、「自分のタイミングで仕事を区切りたいから、強制的な時間管理は苦痛」という人もいる。「マイクロマネジメントは苦手、ある程度任せてもらった方が結果も出る」という人もいれば、「上司には寄り添って欲しいし、細かい案件も伴走するくらいがありがたい」という人もいる。みんながみんな、働きやすい組織なんて存在しないのである。

 次に、外資系とは何なのか。これも大抵の場合、欧米企業のイメージを都合よくツギハギした、実態のないものに憧れているに過ぎない。「2~3週間のバカンスなんて当たり前。日本人は休み方を知らないから」というの人がいるが、「2~3週間不在にするのだから、あなたの抱えている仕事を全部吐き出してね。あなたにしか出来ない仕事なんてないのだから、いつでも代わりがきくようにしてね。もちろん、不正やごまかしがあったらわかるからね」ということでもある。
 また外資系といっても、アメリカとドイツとイギリスとフランスでは違う。もちろん、中国と韓国、ベトナムだって違う。しかしながら、脱亜入欧の思春期から抜けられない日本として、大抵の場合はこういう時は、欧米企業のことを指していることが多い。欧米は無条件に、日本より進んだ社会を有しているといまだに考えられている。しかしながら、アメリカを例にすると、有給休暇の取得率は日本よりも低い。祝日も入れると、圧倒的に日本人の方が休んでいることになる。ホワイトカラーはアメリカもドイツも残業してるし持ち帰り仕事もしている。

 私は「海外では~」と話す人が苦手だ。理由は上述の通り。もちろん、良く聞いてひも解いていくと、それは欧米(これも乱暴なまとめ方だけど)だったり、北欧だったり、中国・東南アジアだったりする。これをまとめて「海外では~」という人は、企業を2つ、国内企業と外資系企業に分けて話す人なんだろう。

 「次の職場は働きやすさを重視したいから、外資系かなあ」というセリフは、そういうわけで、一体なにを指して、なにを言いたいのか、よくわからないものなのである。

 それはそうとして、海外旅行行きたいなあ。

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