恐縮ですが、育児中。 《6》 ショッピングモール
地元に帰省するたび、車窓から見える何やら巨大な施設を眺めては「へえ、昔は田んぼだったのに、こんなところに建物ができたんだ…」なんて呟いていた自分が、毎週のようにそういった場所を訪れる事になろうとは、思いもよりませんでした。
その場所とは、ショッピングモールです!(以下ショピモ)
以前から噂には聞いていましたとも。「駅前商店街はシャッター通りと化し、住民はクルマで郊外のモールを訪れるように…」なんてニュース。
圧倒的な資本力で地元の文化を破壊する、ブラックバスみたいな外来の悪役というイメージ。
しかし、そう決めつけていた当方が愚かでした。実際は、育児者にとってこれほど便利な場所はありません。
子連れって、とにかく移動が面倒なんです。ちょっと歩いてるだけで、すぐに「疲れた」とぐずり出すのがお子様。
そこへいくとショピモって、いったん入場さえしてしまえば、 全てが至近距離に揃っています。
スーパーマーケットもあれば、ホームセンターもある。100円ショップがある、書店がある、安売り子供服がある(デザイン的には若干ヤンキー寄りのセンスを感じなくもないが……)
ゲーセンだシネコンだフードコートだ、チョイと買物すれば駐車場は無料だ…と、いたれり尽くせり。
どうせなら構内に仮設住宅でも建ててくれれば、一生ここで暮らせるんじゃないか?と考えてしまうほどのパラダイスっぷりです。
子どもができると、人は往々にしてクルマを買ったりしますが、それって実はショピモに行くためだったのか!ユリイカ!
けれども世の中、良い面ばかりとは限らない。ショピモにも「負」の面は存在します。
こちらとしては初めて行く時もホームページで調べ、そんな区画は存在しないかのように避けまくっているのに。
子どもは野生の嗅覚で、あの派手な看板を見つけてしまうのです。
そう、それは『トイザらス』とか『ディズニーストア』といったオモチャ屋さんです!
「え?今日は映画を観に来ただけでしょ?」といった親のわざとらしい疑問符には全く反応を示さず、瞳孔を開きっぱなしにしてフラフラとそちらに進んでいく子どもの姿は、さながら墓から蘇ったゾンビのごとし。
ああ、今日もまた玩具メーカーにお布施を払うことになるのか…… と、どよーんとした気持ちになる瞬間です。
子どもがオモチャに向ける欲望、果てしなし……。
とはいえ、親だって実は「子どもと公園で遊ぶのは疲れる」「家でお絵描きや工作につきあうのもめんどくさい」「あちこち行くより、どこか1カ所で時間をつぶしたい……」と、自分の都合や欲望を優先してるからこそ、ショッピングモールに来ているわけです。
結局「子は親の鏡」といったところでしょうか。
まったくもって、恐縮です!
明和電機ジャーナル 第17期 第6号 (2011年3月15日発行) 所収, に加筆修整