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【小説】Good morning 01

AM6:00
目覚ましアラームは仕掛けたけれど
鳴る少し前に、自然と意識が浮上した。

冷えた部屋にエアコンで暖房を入れつつ
身支度をする。

窓の外は、真っ暗、夜の闇のまま。
わたしはこれから、日の出を見に行くつもりだ。

昨日は、日没を少し、過ぎた頃
長時間ドライブを経て、ホテルに到着し
温かいレセプションと暖炉の炎に
身も心も温まり
ほくほくしながら、心地よい眠りについた。

朝食は7:00からだという。
日の出時刻は6:30頃なので、その前に
見に行くことにした。

日の出は、朝食を待ってはくれないからね。

今は、季節的にも、冬で、雪で寒いが
時刻的にも、日の出前は、寒い。

万全の、防寒対策をしてホテルを出て
車に近づいてみると
窓ガラスが、雪?霜?で凍って
真っ白で、完全に前が見えない状況に。

時計で時刻を確認し
慌てて、車のエンジンを掛け
暖房を入れて、車内から窓ガラスを温めた。

少し経つと、凍結が和らいだので
ちょっと強引に窓をこすって視界を作り
日の出の見えるスポットに向かって
出発した。

外が、明るくなってきている。
焦って、急いだけれど
なんとか、間に合ったみたいだ。

わたしと同じく
日の出鑑賞目当ての旅人が何組か
待ち構えていた。

みな一様に、黙って、東の空を見つめ
太陽が顔を出すのを待つ。

同じ目的を持ち
同じ方角を向き
同じ様子で待っていると
言葉は交わさずとも
運命共同体のように感じた。

いや、そもそも
この、同じ地球という星=土台に
生まれて、立っているのだから
誰も彼もみな、運命共同体だ。

地球に何かが起こったら
みな同じ運命を伴にするのだもの。

顔を知らなくても
名前を知らなくても
存在を認識していなくても
わたしたちは、地球で一緒に生きている。

大好きでも、大嫌いでも
同じ世界、時間を生きている、仲間。

空と、樹々と、大地と、雪しかない場所で
じっと動かず
ただ在ることに徹していると
そんなことを、考えた。

幾らか時計の針が進むと
空が、桜色に染まり始めた。

いよいよだ、と胸が高鳴り
さらに、神経を地平線の一点に集中させる。

大地と空の境目が
桜色から、薔薇色に、変わる。

それと同時に
真っ暗で何も見えていなかった周囲
自分を取り巻く世界が
その姿を露にする。

空の色の変化と
視界に現れた風景をぼんやり眺めていると

ぽわっ・・・
地平線から、光が産まれた。

まるい太陽が、その全貌を現すと
強烈な、鮮烈な光の柱が
まっすぐこちらに向かってきて
自分のまん中を、貫いたように感じた。

世界、太陽、自分、一直線に、繋がる。

今日も、伴に在ろう、と、言われたよう。

・・・
何を成しても、成さなくてもいい
存在することに、意義と価値がある
人生に、意味や目的を
自ら探そうとしなくていい
目指さなくとも、それに向かって生きている
ただ、生きて、世界を感じて
自分のハートの声を聴いて、今日を進め
・・・

今日の、太陽のメッセージを聴いた。

かけがえのない、一生で今日だけの太陽。

毎日、同じことの繰り返し
なんかじゃない。

認識があろうと、なかろうと
自分の人生において
同じ一日、同じ瞬間は、二度とない
今だけのもの。

今日、見る景色、音、におい
今日、出逢う人
今日、体験すること・・・

トクベツな予定がないからって
「日常」と括るのは
あまりにも、もったいない。

奇跡が起こる瞬間や
自分の可能性を開く扉に対して
わたしには、無い、見ないと
決めつけて、生きるようなものだ。

わたしは、あなたは、今、生きている。

今しか、見つけられない
奇跡を目撃するために。

今しか、味わえない
しあわせや歓びを、体験するために。

今しか、叶えられない
夢を見るために。

今の自分にしか、開けない
可能性の扉の向こうへ行くために。

今の自分だから、出来ることを
精一杯、やるために。

太陽は、地平線から、少し顔を出すと
その後は、速度を上げて
ぐんぐん、天へ上ってゆく。

大地に、光が伸び、広がり、温められて
永い眠りから、蘇るようだ。

空色は、桜色から、薔薇色、そして
たんぽぽ色に変化し
太陽が、地平線から離れると
見慣れた、薄い青、空色になった。

今日、産まれた太陽が
無事に空へと昇っていくのを確認した後
わたしは、車に乗り込み、ホテルへ戻った。

お待ちかね、お楽しみの朝食だ。

わたしは、旅の朝の食事が大好きだ。
こんなに、心躍る一時はない、というくらい。

旅の朝を、心ときめかせ、楽しむと
その日の昼も夜も
何か、とてもステキなことが
起こるような気がして
まる一日、しあわせな期待とわくわくで
生きることが出来る。

今日の朝食は、ビュッフェスタイル。
何があるのかな、と見てみると
パンケーキ、フレンチトースト、ワッフル、と
乙女の夢、が、勢ぞろいしていた。
ふわふわのスクランブルエッグに
カリカリのハッシュドポテト・・・
ヨーグルトも外せないな。

乙女の夢、的、朝プレートが完成し
コーヒーも添えて
さて、頂きます。

美味しくて、嬉しくて
今、生きて、ここにいられることと
今日、ここまで
自分を運んで来た、過去の自分に
ありがたい、ありがとう、と、思った。

ああ、コーヒーの香りが、たまらなく、いい。

旅に出て、なお、どこかの次元へ
トリップしてしまいそうな
しあわせな、朝だ。


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****** Fin. ******

ーーー{作・或日野絵空}ーーー


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読んで頂き有り難うございます😊 わたしが見たもの・感じたこと・考えたことについて、思いつくままに書いています。めっちゃWonderな地球暮らし、わたしもあなたもFantasista!ここにある言葉たちが、人生を楽しむヒントになれば嬉しいです☆