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【アジカンSSのお時間⑥】君という花嫁

「ただいまぁ! ミサも一緒だからさぁ。勝手に上がるよぉ!」

 玄関で家中にきこえるような大声で叫ぶ雪斗さんにも驚いたけど、カラーテープで五つに区切られた三和土たたきにはそれ以上に愕然とした。

「ごめんね、靴はこの白いテープのところに脱いで。うち、ちょっと今、家族がややこしいことになっていてさ」

 先に靴を脱いだ雪斗さんが申し訳なさそうに私に説明する。

「ううん。びっくりしたけど、区切ってあると、靴をきれいに揃えようって気になるよね」

 結婚前のご挨拶のため、雪斗さんのご実家に初めての訪問。その緊張をほぐすように、出来るだけポジティブな面を私は探すことにした。
 板張りの廊下にかけられた鳩時計の鳩が小窓からクルッポーと顔を出し、午後三時を告げた。

「鳩だけは僕たちのお出迎えをしてくれるなんて、さすが平和の象徴だよ」

「なつかしいなぁ、鳩時計。昔、おばあちゃんのうちにあったんだよねぇ」

「そうなんだ。うちのばあちゃん、ミサと会えたらきっと喜んだだろうなぁ。あの鳩時計、ばあちゃんが買ってきたものなんだよね」

「あとで、お線香あげさせてもらうね」

 雪斗さんのおばあさんは五年前に亡くなられたらしい。その後、雪斗さんが上京し、現在はご実家には雪斗さんのご家族が四人で暮らされているとか。
 一時間後の出番に備えて鳩が小窓の奥へと引っ込むと、再び廊下は静まり返った。

「まずは、キッチンにいる母さんから挨拶に行こうか」

「まずは?」

「来る前にも話したでしょ。今、うちの家族、お互いに冷戦状態というか。見ればわかると思うんだけど」

 廊下の奥に進み、キッチンに繋がるドアを開けると、金属パイプバーのドアチャイムがぶつかり合って軽やかな音を奏でた。

「いらっしゃい、ミサさん。雪斗の母です」

 ドアを開けると、目の前に雪斗さんのお母さんが待っていた。

「初めまして、ミサです。こちら、お口に合うとよいんですが」

 手土産に持ってきた焼菓子をひとつお母さんに手渡す。

「あら、美味しそうねぇ。お気遣いありがとう。早速、いただこうかしら。今、コーヒーを淹れるから、くつろいでいてちょうだい」

 ダイニングチェアに座って、キッチンを見回してみると、ガスコンロやシンクや食器棚はもちろんだけど、テレビやベッドもあって、ワンルームのような空間になっている。最も気になったのは、隣のリビングとの境目が洋服ダンスや小物入れなどで隙間なく塞がれていて、壁のようになっていることだった。

「ごめんなさいねぇ。ここから隣には通り抜けられないから、向こうの国境から入国してもらうことになるわね」

 塞がれた壁をじっと見ていた私に、お母さんがコーヒーとクッキーをテーブルへと運びながら言った。

「こ、国境ですか?」

 思わず、私の声が裏返る。

「もういつまで続けるつもりなんだよ。この暮らし」

 雪斗さんがクッキーを齧りながら、ぼやいた。

「これでも結構、楽しいのよ。久しぶりの一人暮らしを満喫できて。あら、このクッキー美味しいわねぇ」

 お母さんもクッキーを齧り、コーヒーを飲む。

「ミサさん、雪斗をよろしくお願いしますね。そうそう、今日は泊まっていくんでしょ? 夕飯はぜひ、ここで食べていってちょうだいね。お肉も奮発して買ってきたの。それに、ほかの国じゃ、まともな料理はでてこないと思うから」

「あ、ありがとうございます。ぜひ、いただきます」

 

 しばらくお喋りをしてキッチンを後にすると、私は雪斗さんの服の袖をつかんで小声できいた。

「家族が冷戦状態って……その、なんか、思っていたのと違うんだけど」

「戸惑うよね、ごめんね。簡単にいうと、うちの家族は今、ひとつ屋根の下には住んでいるんだけど、それぞれが独立国家を築いているんだよね。だから、みんな顔を合わすことなく、それぞれの領地で生活しているんだ」

 雪斗さんがこっそりと私の耳元で教えてくれた。

「だから、お土産も五個に分けて買ったんだ」

「こんな家族が分断している中、結婚の挨拶にきてもらって、本当に申し訳ない。みんな、悪い人ではないんだけどさ」

「まぁ、一人一人とじっくりお話できるのは嬉しいけどさぁ」

 想像を超えた家族情勢に、私は少しとまどっていた。
 リビングへと続くドアを開けると、今度はドアにかけられたベルが鳴った。

「父さん、ただいま」

「おお、まぁ座りなさい。ミサさんもどうぞ」

「失礼します」

 雪斗さんのお父さんが国を築くリビングは、キッチンよりも広かった。リビングの脇には冷蔵庫とカセットコンロが置いてある。
 手土産をお渡しして、ソファに座っていると、お父さんがお茶を淹れてくれた。

「最近、ピクルスをつけているんだけど味見してみますか?」

 お父さんが冷蔵庫から瓶の容器を取りだして、私に見せた。瓶の中には赤・黄・緑の色鮮やかな野菜が漬けてある。

「お茶とピクルスって」雪斗さんは苦笑い。

「口がさっぱりしそうじゃん」

 隣に座っていた雪斗さんを私はひじでつつく。瓶の中からスティック状の大根を選ぶと、「いただきます」と言って、私は一口食べた。
 三人でポリポリとピクルスを食べながら、色々とお話をした。

「いやぁ、雪斗にはもったいないくらいできたお嬢さんだ。ゆっくりしていって下さいね。夜になったら、お酒でも飲みにきてください」

「ありがとうございます。楽しみです」

 隣のキッチンとの境目にはやはり本棚や段ボールが置かれて壁のようになっている。向こう側にいるお母さんは、この会話をどんな気持ちで聞いているんだろう、と考えずにはいられなかった。


 
 雪斗さんのおじいさんが国を築く和室の襖を開けると、何かが私に向かって飛んできた。

「ミサ、危ない!」

 雪斗さんが、私の顔に向かってきた何かをギリギリのところで手でつかんでくれた。よく見ると先端に吸盤のついた矢だ。

「おお、雪斗。よく帰ってきたなぁ。可愛らしいお嫁さんを連れて、ばあちゃんも泣いて喜んでいるだろうなぁ」

 和室の奥でおじいさんが座布団に座っていた。

「もう、じいちゃん、挨拶にくることはわかっていたんだからさ。トラップ解除しておいてよ」

「なぁに。お前がお嫁さんを守ることができるか試したんじゃよ」

 雪斗さんと二人で、仏壇のおばあさんに手を合わせる。雪斗さんと結婚することや鳩時計がとても素敵だったことを、私はおばあさんにお伝えした。
 和室には、小さい冷蔵庫と電子レンジが置いてある。
 おじいさんはみかんと缶の麦茶でもてなしてくれて、雪斗さんが小さかった頃の話をたくさん聞かせてくれた。
 和室の障子の向こうには庭が見えた。

「広いお庭なんですねぇ」

 おじいさんが障子を開けると、縁側の先にホームパーティーが開けそうなくらいの広さはある芝生の庭が広がっていた。

「庭自体は広いんじゃが、あの事件があってから庭も分割したもので、一人当たりだと猫の額くらいの広さじゃよ」

 庭にも玄関にあったカラーテープと同じ色の旗が刺さっていた。おそらく家族ごとに、自分の領地を色分けしているのだろう。

「ミサさん、また帰りにでも、ばあちゃんにお線香でもあげていってください。次は何も飛んでこないから」

 おじいさんが笑いながら、仏壇のおばあさんに手を合わせて、おりんを鳴らした。

「はい、もちろんです」


 一階に国を築いた家族にご挨拶をすませた私たちは、二階へと上がった。
 二階には二部屋あって、奥の部屋のドアを雪斗さんがノックした。

「美雨、いるのか? 入るよぉ」

 部屋の中から返事はなかった。雪斗さんがドアを開くと、貝殻で作られたドアチャイムがカランカランと鳴る。妹の美雨さんの部屋は、たくさんの本や雑貨がきれいにディスプレイされていた。

「妹さんはお留守?」

「そうみたい。おかしいなぁ、今日、ミサと一緒に帰るっていったんだけどなぁ」

 部屋には他の国と同じように冷蔵庫があって、カセットコンロや電子レンジが棚に整然と収納されていた。

「ごめんごめん、お兄ちゃん! いらっしゃい」

 ベランダから声がして、窓のほうを見るとキャップ帽をかぶった若い女性がベランダの手すりの向こうから顔をだした。

「ミサさん、初めまして! 美雨です。ちょっとコンビニとか色々、買い物にいってて」

「玄関から入れよなぁ」

 雪斗さんは呆れながらも、美雨さんが手に持っていた荷物を受け取った。美雨さんは手すりにつかまって体をひょいと持ち上げると、慎重にベランダへと飛び降りた。

「すごいところから登場したから驚いちゃった」

 私がベランダから外を覗くと、手すりの部分に梯子がかかっていた。玄関を通らずに、外と部屋を行き来できるようになっているというわけだ。

「ごめんなさい。玄関でお父さんと鉢合わせしたくなくて、こっちのルートをたまに使うんです」

 美雨さんは買ってきた食材を冷蔵庫にしまうと、紅茶とチョコレートをだしてくれた。

「このチョコレート、甘すぎなくて美味しい!」

 チョコレート好きの私好みの味に思わず感激した。

「でしょう! ミサさんがチョコレート好きなこと、お兄ちゃんからきいていたから。色々と食べ比べてみたんだけど、そのお店の限定商品をどうしてもミサさんに食べてもらいたいなぁと思って!」

 美雨さんが身振り手振りを交えて、熱っぽく語ってくれたことがとても嬉しかった。

「ありがとう。すごく美味しいよ」

 そう私が伝えると、美雨さんはガッツポーズをして、にこにこしながらチョコレートをパクッと食べた。
 私と美雨さんはすぐに意気投合して、たくさんお喋りをした。

「まだ、父さんと仲直りをする気はないのか?」

 一通り話し終えたころに、雪斗さんが美雨さんに話を振った。

「だってさぁ」

「あのぉ、部外者が知ることじゃないかとは思うんだけど、一体どんな事件があったんですか?」

 私は美雨さんに真相についてきいてみた。

「ミサさんは家族になるんだから、部外者なんかじゃないですよ。すべての始まりは、焼肉事変です」

「焼肉事変?」

 私の声がまた裏返ってしまった。

「そう。今から一年前のことです。その日の夕飯はホットプレートで家族で焼肉をしたんです。その時、私が大切に育てていたお肉をお父さんが食べたんです」

 美雨さんがまっすぐな目で私に語りかける。

「えっ?」

「さすがに一回目は仏の心で見逃したんですよ。二回目は軽く注意。でも、三回目は許せなかったんですよねぇ」

「好きに食べたらいいだろう」

 雪斗さんが深いため息をついた。

「お兄ちゃんはその場にいなかったからそんなこと言えるんだよ! お父さんったら、私のお肉を食べただけじゃないの! ビールをお母さんに取りにいかせている間に、お母さんのお肉まで食べたんだよ。だから、お父さんのお肉を食べ返したら、今度は私の野菜にまで手を出して。そこから、気がついたらホットプレート上が無法地帯になってたの」

 ここまで深刻な事態になるまさかのきっかけに、私は思わず言葉を失ってしまった。

「お父さんはホットプレートに国境みたいな区切りなんかない、家族だからいいだろうと主張してさ。でも、家族とはいえ、区切りがなくても越えちゃいけない線があると思わない? それで、私たちのやりとりを見ていたお母さんが、これからはお互いに干渉せずに線を引いて独立国家として生きていきましょう、って家族は分断したの」

「そんなことでこんなに情勢が悪化するかなぁ……」

 改めて、事件の経緯をきいた雪斗さんは納得がいかない様子だった。

「そんなことが争いの引き金になるんだよ。ミサさん、ごめんね。変な家だけど、治安は悪くないからゆっくりしていってね。夜に、恋バナしよっ!」

「う、うん、しよっ!」

 精一杯の笑顔で私は返した。


 お風呂は中立国ということで、時間制で使っているらしく、少し安心した。私たちは最初にお風呂に入らせてもらった。シャンプーやボディソープは浴室に置いてなく、各自で準備する。
 お風呂から上がり洗面所をでるときには、入口にひっかけておいた白の木札を外した。時間になると、まるで銭湯にでもいくようにお風呂セットと色違いの木札を持って、次の利用者がやってくる。この木札はトイレ使用時も同じだった。
 夕食はお母さんが作ったステーキをキッチンでご馳走になった。
 食後にリビングでお父さんとお酒を飲んで、寝る前に美雨さんの部屋で恋バナをした。
 雪斗さんの部屋に戻ってきたときには、すっかり日をまたいでいた。
 外では雨が降り始めて、明日の午前中まで降り続ける予報だった。

「みんないい人たちだねぇ」

 眠る準備をしながら、今日一日を私は振り返っていた。

「なんだか色々と気を遣わせちゃったね」

「ううん。私、みんなのこと本当に好きになったし、この争いを本気で終わらせたいと思っちゃった」

「僕が言っても聴く耳を持ってもらえないけど、ミサの声ならもしかしたらこの状況を変えられるかもなぁ」

 ベッドに寝転がっていた雪斗さんが起き上がって、私の肩を揉んでくれた。
 何か良い方法はないものか、と私が考えているとき、雪斗さんの部屋の片隅に置いてあったある物を発見した。

「なんでこんなものが家にあるの。これって、まだ使えるの?」

「学生時代にイベントで使ったのを記念にもらったんだよ。多分、使えるはずだよ」

「いい作戦を思いついちゃった!」

 私は雪斗さんに閃いたばかりの起死回生の戦略を話し始めた。


 翌朝、私は階段をそっと降りると、家の中心地でもある鳩時計のある廊下に立った。

「皆さん、おはようございます! ミサです。昨日は、私を歓迎していただき本当にありがとうございました!」

 私が話し始めると、お父さん、お母さん、おじいさんが部屋から一斉に飛びだし、美雨さんは慌てて二階から降りてきた。
 雪斗さんの部屋にあった拡声器で話した声は戦略通り、みんなを自国から引っ張りだすことに成功したようだ。久しぶりに顔を合わせたみんなは気まずそうな顔をしている。

「休日の朝からごめんなさい。でも、どうしても皆さんに私の口からお伝えしたかったんです。昨日、たくさんお話をさせていただいて、ずっと楽しい素敵な時間で、皆さんのことが本当に大好きになりました。お料理上手で優しいお母さん、不器用だけどよく笑うお父さん、孫思いでお茶目なおじいさん、しっかりしていてとても可愛らしい美雨さん。皆さん、私の緊張をほぐそうとたくさんお話してくれました。もうその気持ちだけで、私の胸はいっぱいでした。雪斗さんと結婚して、皆さんとの繋がりができたことが本当に嬉しいんです。
 だからこそ、私の正直な気持ちをお伝えさせていただこうと思います。皆さんと一緒に、もっとたくさん素敵な時間を過ごしたいんです。一人一人ではなく、皆さんと混ざり合って、笑い合って、もっとたくさんお話ししたいんです。だって……絶対に楽しいだろうなぁってわかるんです。今、皆さんがそれぞれの国を築いて、生活していること。そのきっかけについても知っています。そのときから、一年が経ったと思います。もう、本当はお互いのことを許してもいいと思っているんじゃないですか? 昨日、お話している中で、時折、皆さんは寂しそうな表情をされていました。もしかしたら、きっかけを探しながらも、なかなか後戻りできないでいるんじゃないかって……。
 なので、私の自分勝手な願いをお話させていただきます。皆さんと一緒にお庭で焼肉パーティーをしたいです! あんなに素敵なお庭で皆さんと食べるお肉なんて、絶対に美味しいはずです。楽しいはずです。もう一度、焼肉から再出発しませんか? これが私の願いであり、心からの祈りです! ご清聴、ありがとうございました!」

 言葉に詰まる瞬間もありながらも、私はありったけの思いを話し終えた。気がつくと、私はぽろぽろ涙を流していた。こんなつもりじゃなかったのに。
 みんなは私の演説後、お互いの顔を見合わせて、最後には頷き拍手を送ってくれた。

「ありがとうございます!」

 私は深々と頭を下げると、ずっと隣にいてくれた雪斗さんと抱き合った。
 鳩時計がクルッポーと鳴きだしたのは、そのときだった。

「ばあちゃんにも響いたんじゃないか、さっきの名演説が」

 鳩時計を見ながら、おじいさんが笑って言った。

「本当よ。それにあの話し方。おばあちゃんにそっくりだったわ。ミサさん、ありがとう」

 お母さんと私もがっちりと抱き合った。

「ねぇ、雨やんでるよ!」

 窓の外を見た美雨さんが興奮気味に叫んだ。
 外を見ると、予報よりも早く雨はやみ、雲間からは陽の光が差し込んできている。

「よしっ、ミサさんのお願いだ。手分けして、焼肉パーティーの準備をしようじゃないか!」

 お父さんの声掛けに、みんなが一斉に片手を突き上げた。
 庭でバーベキューの準備をしたり、買い出しにでかけている間に、家の中にあった壁や分断のすべてがとっぱらわれた。
 キッチンでお母さんと私が野菜を切っていると、庭の準備を終えたお父さんが手伝いにきてくれた。

「じゃあ、これ運んでいくよ、母さん。あ、ミサさん、庭にくるときにアレもひとつ持ってきてちょうだい。口の中がさっぱりするから」

 両手にお皿を持ちながら、お父さんが私に目で合図をする。

「はい! 皆さんにも食べてもらいたいです」

 キッチンからリビングへと抜けて、私はお父さんに頼まれたピクルスの瓶も一緒に運んでいく。
 和室を抜けて、庭へとでると、バーベキューコンロやイスが用意されていて、雪斗さんと美雨さんの火起こしも終わっていた。

「それでは、ミサさんと雪斗の結婚を祝しまして、乾杯!」

 お父さんの音頭で、縁側に座るおばあさんの遺影を含めた七人は青空の下で乾杯した。

「どんどん焼くから、たくさん食べてね」

 お父さんが次々と焼いたお肉をみんなのお皿に分配していく。

「私、野菜を焼いているからさ、お父さんもお肉食べなよ」

 美雨さんがお父さんが持っていたトングを奪いとる。

「庭での食事なんて久しぶりねぇ」

 お母さんもお肉を食べながら、とても楽しそうだ。
 縁側に座って食べるおじいさんと一緒におばあさんの遺影の表情も、昨日よりも笑っているようだった。
 雨上がりの空には虹がかかっていて、いつも見慣れた虹とは少し違う形をしていることに私は気がついた。
 七色の虹でできた大きな旗が大空ではためいているようだった。


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