ことば遊びとショートショート19『余韻泥棒』
余韻の残る映画館。
『大変だ!館内に余韻泥棒が!』
係員が叫んだ。
余韻泥棒?ぶち壊し屋ね。余韻が台無し……あ。
『余韻はいただいた』
係員に変装した泥棒は消えた。
泥棒は少女に会いにきた。
少女の両親は彼女を部屋に閉じ込め、自由を与えた。泥棒は不思議なお話をよくきかせた。
「素敵ね。何もないや、私」
突然、泥棒は彼女のへそに鍵を差した。
『開け、ごま』
鍵を回すと、部屋の線カラー色々と飛び出した。
おシロでチャチャチャを踊るブルードック。いダイダイばぁと赤ん坊をあやすパープルのパプリカ。金海を泳ぐよりどりミドリの魚群。藍を吟う銀遊詩人。
『これは君の世界さ』
「盗むの?」
『まだ何も始まっていない。だから、盗めない』
少女は笑った。
『余韻を盗むには、種を蒔かないと。今から、ある村にいく。一緒にくるかい?』
少女は頷き、手を握る。
さぁ、飛ぶよ。
ワクワクする世界へ
ようこそ泥!
(了)
【雑記19】
10日間に渡ってnoteにアップしてきたショートショートの1st Album『WONDERMAKER』の本編ラストの物語でした。
物語単体でも完結していて、アルバムの流れとしてもひとつの軸が生まれるようにことばと向き合ったり、戯れたり、選びながら制作を進めてきました。
映画のプロットだったり、ドラマの展開にも通ずる作り方かもしれません。
余韻の残る映画が好きなので、余韻を奪うことで読んだ方に余韻を残したいというラストに挑戦しました。
物語のアルバム作りをやってみて、手探りしながら、着地点も見えない中、進んできましたが挑戦して本当に良かったと思います。
自分が目指している音楽のような体感できる文章、物語にはまだまだ遠いですが、不器用なりにひとつ形にできたのかなと思います。まだまだやれることばかりですが、とにかく楽しい時間でした!
今日のショートショートは、物語のアルバム作りに挑戦したショートショートの1st Album『ワンダーメーカー』収録、10曲目『余韻泥棒』でした。
昨日の9曲目『ワンダーメーカー』はこちら。
お読みいただき、ありがとうございます!
8月末まで毎日、400字ショートショートと雑記の2本立てnote を投稿することに挑戦中です。
文章で物語で、読んだ方を笑顔に元気にできたら最高です!良かったら、また明日もふらっと遊びに来てください!
文章や物語ならではの、エンターテインメントに挑戦しています! 読んだ方をとにかくワクワクさせる言葉や、表現を探しています!