出番です。
生きがいをテーマにしたテレビ番組で、生き生きとした同世代の人が登場してその生き方が紹介されることがあります。こうした映像を見て、「私もできるかも」と意欲を高める人が多ければ、番組は成功といえます。一方で、「この人たちは特別だから」と切り分けてしまう人がいるのも事実です。テレビ画面に映る人は、一般とは異なる印象になりがちなので、かけ離れて感じることもあるのでしょう。番組を見ている視聴者は、生きがいづくりに関心を持って、役立つ情報を得ようとしているところは同じです。ただ、「私も」と思って何かを始めるきっかけにするのと、「あの人は特別」と思ってあきらめるかで、その先の生き方は変わります。
この違いは、自分が主役として登場する姿を想像できるかどうかによります。自分の生き方が紹介されてもいいと思える主役の意識があれば、番組を見て「私も」や「私なら」と思うでしょう。自撮りや動画の投稿に慣れた大学生の世代は、主役の意識をより自然に持っているかもしれません。また、シニアの方にもその意識は潜在しています。大学内の多世代交流のイベントの様子を動画にする時に、参加者の表情に焦点を当てた映像をつないで音楽をつけると、一人ひとりの活躍ぶりが際立ってヒーロー感が増すという効果が実感できます。つまり、日々を生きている私たちは、誰もが主役になれるのです。「特別だから」とあきらめがちな人も、実はちゃんとヒーローになる場面は必ず日々の生活の中にあって、そのことに気づいていないだけだったりします。
生きがいがテーマの番組に、時折コメンテーターとして呼ばれます。その時の私の役目は、視聴者の誰もが主役になれる可能性を示して、自信を高めてもらうことかなと思っています。次はあなたの出番です、というメッセージを短いコメントで伝えられたらと、頭の中でぐるぐると言葉探しをしています。
(京都新聞 随想やましろ 2022年3月25日掲載)
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