「使い古した色」の味
本郷通り沿いに、古い喫茶店「東城」はある。「サイフォンで珈琲を淹れています」が目印。先客がいないときは、私が椅子に座ると同時にクラシックのBGMが流れ出す。
優しい雰囲気のご夫婦が営んでいて、流れる時間もゆっくりとしている。疲れがたまっているときやボーっとしたいとき、私はここに来てホットサンドとカフェオレを頼むのだ。
ブラックコーヒーの飲めない私は、カフェオレとチーズケーキの味でそのカフェのレベルが分かる(と、偉そうに思っている)。東城のカフェオレはとにかく「カフェオレ」なのだ。コーヒーとミルクの割合、上品な味。いろんなカフェオレを飲んできたけれど、ここのカフェオレは大のお気に入り。そして私は、砂糖をたっぷり入れる。
ホットサンドをほおばりながらこじんまりとした店内を見渡す。テーブルや、壁や、サイフォンが使い古した時間を感じさせる色をまとっている。黄色……薄茶色かな。
人って不思議なもので、使い古した色を見て「汚い」と思うときと「味があって綺麗」と思うときがある。このお店で感じるのは後者。ゆったりと流れる時間、照明の暖かさ、BGM、カフェオレの味、店主さんの佇まい……そういう優しいものたちが「使い古した色」とマッチして、東城のお店の「味」を醸し出しているんだろうなと思っている。