青森ワッツの報道を見て考えたこと
昨日(3/2)、青森ワッツの経営継続について懸念される状況にあることが報道されました。
要点としては
・筆頭株主(ANEW Holdings、以下AH社)が経営破綻(破産)した
・最悪のケースでは今季中に解散・倒産の可能性
・経営破綻回避には約5,000万円の資金調達が必要
・またB2のライセンス不交付基準の3年連続赤字・債務超過を避けるために3,800万円の債務超過解消が必要
・株主の変更が必要(融資が受けられない)
・リーグの公式試合安定開催融資制度の利用は、利用時に5勝の剥奪があり、プレーオフ進出に影響をあたえることと、存続が保証されないことから利用しない
という内容になります。
実際に2020-21, 21-22, 22-23のリーグから一般に公表されているクラブ財務状況を見た際に気づくことがあります。青森は2022-23シーズンでB2の中で唯一、かつ3年連続法人税支払いがない状況にあります。
Bリーグのクラブ財務状況の帳票はチーム(クラブ)が子会社として存在するケースが多いために、クラブ自体の財務状況を判断する基準として、いわゆる循環取引(親会社ー子会社間の取引、売上高の水増しが可能になるので、IR情報としては除外される)もカウントされることになっており、純粋なクラブの申告状況を見るには法人税の項目を見るほかありません。
これがすくなくとも3年連続0ということは、法人としての申告利益がないか、赤字でかつ最近5年以内に収めた法人税を上回る「マイナス課税」である申告(損益通算が可能なので、過去黒字で課税していても、5年以内に赤字決算をすると戻し税がある。それすらないということ)をしているということで、相当に状況が良くないことを示します。
(所得を利益に修正、損益通算について追記 19:00)
B2の場合平均的なチーム運営費用は年4億円以上でありながら、チケット販売収入が1億を超えるチームは昨季は2チームしかなく、半分以上をスポンサー収入、その過半を親会社からの広告収入名目や増資などで埋めるケースも珍しくありません。
この良くない状況で、かつ親会社が消失したことは問題が非常に大きいことを示します。
ところで、このAH社、昨年夏に9割の株式を取得して筆頭株主になりましたが、こういう報道があったのを覚えていらっしゃいますでしょうか。
プロバスケ青森ワッツ、台湾チーム提携 リンゴ輸出支援(日経 2023/8/24)
青森のりんごを台湾などへの輸出を、同社が事業として行っている中小企業振興として行っていきたい、との内容でした。ということは行政との事業になります。
ここで AH社の代表取締役であった藤田大次郎さんのネットに残った残滓をみてみると、
ほかにもNoteの残滓を見てみると
以下のような記載があります。
また、AH社を離れた(として)チーム運営会社の取締役に入った方の経歴を見ても、ジャパニメーションの海外進出として公的資金が投入された、買い取ってその後何も動いていないように見える企業の社長さんだったり、
つながりを見ていくと東京アパッチを引き継いで、震災で事業撤退したEvolution Financial Groupとつながってる方がいるなど、ああ、久しぶりにEVOってロゴみたなあ。
(サイトの安全性がないようなので、リンクは貼りません)
個人的にも「壮絶な」印象を受けます。
まあ実態が見えないからでもありますが、補助金とかスタートアップでのファイナンスに絡んでくる方が多い印象で、成功していればいいのだけど、そうでなければ…うーん…って見えて仕方ない。申し訳ないですけど。
🐺としてはクラブの承継をなぜリーグが承認したのか?と疑問を持つほどです。
すくなくともリーグは今後、このようなことに責任を持たなくなると認識したほうが良さそうです。
少なくとも、昨年のクラブ運営費用3億円を前提にした場合、5000万円という費用は2ヶ月の運営費用に相当します。6月は外国籍選手の給与が発生しない場合が多いので、実際に影響するのは3~4ヶ月になる可能性があります。Bリーグの会計は7月~6月が一般的なので、早ければ3月末の支払いにおいて「不渡りを2回出した時点」で破綻となります。これが毎月末、もしくは給与支払時に発生する可能性があります。
とは言え、この株主変更自体、銀行主導で行われた可能性が示唆されているだけに新しいところを探すのは難しいかもしれません。そもそも昨季のリーグのクラブ財務状況では、B2が全チームが赤字となったように、B.革新といわれる高くなった下駄に合わせるために、現時点で財布のちいさいチームが無理をし、親会社の援助に依存する絵図でもそのような形です。
この「革新」が(一部のチームは該当しませんが)独立したプロスポーツというよりは、企業チームの持ち合い化を更に進めてしまうという形に事実上なっているようすら見えます。
それが日本の「プロスポーツの形である」というなら否定するものではないですが、そうであれば、より経営と運営の透明性を進めなければいけないとも思います。
ただ、今、良い事業もあります。サッカー女子INACの譲渡先になった大栄環境さんのように廃棄事業の収益性は高いものです。全く可能性がないとは言えません。
とは言え、現状ワッツに旧AH社の関係者が責任者としており、対応せざるを得ない状況自体が本当に厳しい状況と見えます。
これからBリーグの「革新」で、背伸びしきれず、引き継ぎのできない企業に於いてはそういうケースも目立ってくるのかもしれません。
今後ファンもどう対応するのか、考えるのか、逆にむしろリーグは「ファンに考えさせない方向」に舵を切っているようにすら見えるだけに、そうするべきなのか。
まさに全方位に目覚ましが鳴っている状況に見えて仕方ありません。
補足 10:40
こうしたケースでクラウドファンディングが言われますが、手数料率と返礼などの問題もあり、実はクラウドファンディングは対応する工数がより多くなります。(これを多くの人は知らないと思います)
もしwebでのグッズ販売をしているなら、同様の行為を自分の販売サイトで行う方が、手数料も低く、返礼対応なども一元化できるのでおすすめできるかなと思います。
もしくは中期的になりますが、行政とタイアップできるならふるさと納税で代償のない寄附行為というのも選択肢の1つかなとは思います。もしこれがあるなら、🐺は協力すると思います。だって、新体育館建設を引き伸ばしてサイズを小さくした結果、更に30〜50億も余分に税金を使うことにした、市場環境を知らないアレな議会がある市にちょっとでも税金納めたくないですもの。(もし以降を追記。19:00)