いっせーのーでっ#1
これをいうのは何回目かになるんですが、小説を書き始めます。
自分のやっていることは正しく、それを信じて同じことを続けるということは非常に難しいですね。
前に書いていた小説をやめ、また新たに始めたいと思います。
タイトル「いっせーのーでっ」
楽しんでいってください。
四等星のファンファーレ
仲村さんは夜みたいに長く、黒い髪をしているからどこにいても仲村さんだとすぐにわかる。うちの高校は髪を染めているやつが多いから、昼間なんかはよく目立つ。そんな中で仲村さんは本当に夜のようだった。
俺は窓枠に肘をついてぼんやり空を眺めてたりしていた。蝉の鳴き声が絶え間なく流れてくる。夏休みが終わったあとの放課後の空は、青よりオレンジが多い気がする。高二の夏休みも熱い恋はなかったし、世界が変わるような冒険があったわけではなかった。俺は大学に行くつもりだから、人生で夏休みがあと五回しかないことを考えると少しゾッとする。
「何してるの日比野。掃除終わらないんだけど。 」
掃除をサボっている俺を、仲村さんは早速叱った。教室では掃除の係じゃないテルシマとその他二人が机の上に座って、大きな声で盛り上がっている。この間ミカがさー、と愚痴を溢すテルシマに、その他二人が浮気はないわー、と絶妙なタイミングで相槌を打つ。
今日は三回目かな?仲村さんに叱られるの。あれ? 少なくない?
「いやぁー、きれいだなーと思ってさ。仲村さんの黒髪。 」
「外見てたでしょ。馬鹿じゃないの。 」
くるっと振り返ると、仲村さんは柄の長い箒を持って丁寧に掃除していた。グレープフルーツの苦い部分だけを眉間に集めてこちらを睨んでいる。夜といっても仲村さんは冬の夜くらい冷たい。嫌われてんのかな、俺。嘘、そんなこと思ったこともない。
「ずっと気になってたんだけど、日比野はなんで茶髪にウェーブなの? 」
サッサと箒を揺らしながら静かに訊く。仲村さんが箒を使うと、箒が夜のススキのようできれいだ。え、ていうかほんときれいじゃない?仲村さんの黒髪。
「いいでしょ!? 菅田将暉みたいじゃない?! 」
誰に似ているかなんて訊いてないんだけど、と冷たく言って集めてたゴミをちりとりで集め始める。仲村さんが今日も冷たい。うん、平和な一日だ。
窓の近くにかけてあった箒を手に取って俺も掃除を始める。同じ箒を使っているはずなのに、俺の箒は仲村さんの箒ほどきれいに見えない。仲村さんが箒を持つと箒も仲村さんもきれいに見えるのに、俺が箒を持つと掃除を習いたての小学生にしか見えない。
窓の外を見る。入道雲が、大きくゆっくり流れていく。