混沌の始まり
ラムロワーズは、コート ドゥ ボーンヌとの境目の街、コート シャロネのシャニーあるミシュランの***レストランだ。実はモンラッシェとの出逢いの後、DRCの収穫を観てみたくなり、ブルゴーニュ再訪を考えていた時、ここのリストにモンラッシェが載っているのを知り、宿泊がてら予約した。
「モンラッシェをお望みの方ですね。」
と、恰幅がよくどこかドーンとし、それでいてなかなか機敏なシェフ・ソムリエが言った。そこで私たちがDRCの名を出すと、丁寧に、「私どもではああいったワインは扱っておりません。私どものでよろしければ…」と、一度奥に下がりボトルを手に戻って来た。
ル モンラッシェ ドゥラグランジュ・バシュレ 1985
彼が掲げるボトルからは、不思議とDRCのような威厳を感じない。それでもモンラッシェだからと、頼むことに。やがて「どなたが?」との問いに、ケイコが名乗りをあげ、一口試すとすぐにOKを出す。が、何処か様子が変だ。それじゃ私もと口にし、えっ…。
嘘、これが、本当にモンラッシェ?なんて線が細いの。DRCの時の、あの頭を殴られるような強烈な印象は、あの体の中から抉られるような官能的な刺激は、何処に?
正に、DRCとの出逢いが「衝撃」だとすれば、こちらは「困惑」としか言いようがなかった。後で思えば、ドゥプレさんにまんまとしてやられたわけだが、かくして、私たちの5年に及ぶ混沌の、始まり始まりだった。