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元オタクが語る『慶余年-麒麟児、現る-』2016

作品情報

主演:
張若昀(チャン・ルオユン)
李沁(リー・チン)
陳道明(チェン・ダオミン)
呉剛(ウー・ガン)
辛芷蕾(シン・ジーレイ) 他

原題:『慶余年』/中国古装ドラマ(全46集)
日本語版配信メディア:Amazonプライム+U-NEXT
キーワード:アクション+計略謀略+転生

張若昀は演技力には定評あり
しかし近年は痩せすぎて心配

宮廷モノのドロドロ愛憎劇が苦手でこの頃はすっかり古装劇から遠ざかっていたが、ちょっと毛色の違う古装劇があるよと教えられて本作を見始めたら、予想以上に面白かった。
どこの時代とも言えずどこの国とも言えない古代世界が舞台の架空の物語だが、古装劇のいいところだけを抜き出して現代劇風にまとめている。
主人公の恋愛ももちろん物語の大事な支柱ではあるけれど、それで泣かせに来るようなラブストーリーでは決してなくて、あくまでスパイスとして観る者に癒しを与える程度だ。
設定としては時代を前後するSFであり、全貌としては陰謀渦巻く戦略ドラマであり、ところどころにアクションが満載の武侠ドラマだった。
うん、娯楽としてのバランスがとても良い。
人たらし主人公とくせ者おじさんたちの謀り合いが実に痛快だ。

あらすじ(ネタバレ注意!)

難病を患う現代の青年が目覚めると、なぜか古代世界で赤子になっていた。
生まれてすぐに刺客に命を狙われるところから彼の新しい人生は始まるが、その赤子は発明家であり鑑査院の創立者でもあった母が密かに産み落とした私生児で、片田舎の祖母の元で育てられる。
二人の達人を師匠にスパルタ式で医術と武術を学び、聡く肝の座った男に育った彼の名は、范閑。
母の過去を知りたい・広い世を見たいと、父の招きに応じて京都に出るが、父が望んだのは公主の娘との婚姻だった。
上京の道中に“鶏の足を食べるお嬢さん”に一目惚れしてしまった彼は、この利権の絡んだ政略結婚を完全拒否。
持ち前の豪気な機転と快活な人柄で、敵対するはずの継母を味方につけ、異母弟とも仲良くなり、いつの間にやら父も折れるから痛快だ。
記憶を残したまま現世から転生したという設定だけあって、范閑の考え方や振る舞いは至って現代的で自由そのもの。
いつの日か人々が平等で貴賎の別がない世になれ、と亡き母は願っていたが。
当時としては画期的だった母の遺志を知ることになっても、俺は俺の人生を生きると范閑はどこ吹く風だ。
しかし、母の死の真相も探りつつ一目惚れした“鶏肉の君”を探している間に、謀略渦巻く京都で彼は知らず知らずに権力闘争に巻き込まれていく。
護衛役を買って出てくれた友を目前で殺されたときから、お気楽だった彼の日常は一転。
友の死に報いようと自分を執拗に狙う黒幕を追い始めるが、その黒幕は愛しい人の大事な家族だった。
苦悩する范閑、その范閑を邪魔に思う者と守り助けようとする者。
本人が思いもよらないところで他者の思惑が絡み合い、范閑は気づけば耳目を集める宮廷の中央舞台に押し出されていた。
しかし彼には譲れない思いがあり、命の危険を冒してでも彼は難題を受けて立つ。
その過程で見えてきたのは、彼の出自に関わる驚愕の事実と、長年かけて準備された鑑査院の恐ろしい計略の全貌だった。

このドラマはくせ者ばかりだ
そして呉剛にくせ者役はハマり役だ
陳道明はどんな役でもキマる 
くせ者でもキマるし 何でもイケる
胡散臭さNo.1はこの田雨
このドラマに欠かせない役どころ

衣装も建物も調度品も音楽も、至ってシックで垢抜けている。
なのにところどころダジャレや歴史に残る名言などを盛り込んで、終始コメディタッチで話が進む。
ドローンを使ったカメラワークも鮮やかだ。
全編を通して人の温かみがいつも描かれ、序盤からあっという間にこの作風に引き込まれた。
展開が早く、毎度予想外の方向に話が向かっていくから退屈しない。
登場人物たちのキャラクター設定もみな個性的で魅力的だし、それを演じる役者たちの表現力は期待以上だ。
しかしこのドラマは言葉遊びが多く、成語も頻出するので、中国語学習の教材としてはちょっと難易度が高いと感じた。

李沁は鶏足持っててもかわいい
実際は男っぽい性格と自称している
辛芷蕾は器用な女優
しかしやっぱり強い女が似合う

元オタクが思うに

最後は、新たにまた一つ大きな陰謀が明らかになるところで終わる。
全編を通して、謎が謎を呼ぶ構成だ。
原作はとても長い物語だそうで、シーズン1配信後すぐに続編の製作決定も正式発表されたが、コロナの影響でスケジュールが遅れており、2022年秋にようやくクランクインした模様(一部キャストの変更あり)。
中国人なら誰もが知っている『紅楼夢』がこの作品のキーワードとなる。
生まれ変わったことによって得たもう一つの人生を後悔なく慶びて生きる“慶余年”、しかしそれは『紅楼夢』よろしく夢の中で見た物語の一つに過ぎないのかもしれない。
数多ある中国古装劇の中で、この作品が描こうとしているものは他とちょっと違うようだ、という予感がある。
作品中のあちこちにまかれたその予感の種がどのように回収されていくのか、続編が非常に楽しみだ。

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