渡邊雄太の告白は私に二つの救いをくれたので、今度は私がユータのために祈ろうと思う
渡邊雄太が6年間のNBA生活を終え、来シーズンから日本でプレーすることを発表した。
あっという間な気もするし、ものすごく長い気もする6年間だった。
渡邊雄太のプレータイムは、決して長いものではない。でも1試合1Q1分1秒、全てで渡邊雄太は全力で、私は試合を観るたび「もっと観たい」と思ったし、試合後は毎回、渡邊雄太の出番はあっという間に終わってしまうな、もっと出して欲しいなと思っていた。
ただ、NBA選手全体での選手寿命が4~5年程度であることや、渡邊雄太のキャリアがNBAの王道キャリアであるドラフトではなくツーウェイ契約から始まったことを考えれば、気の遠くなるほど長い6年間だった。渡邊雄太にとって、毎日が生き残りを賭けた戦いだった。
努力・信頼・実力を積み重ねて出来たNBAキャリア
私は田臥さんがNBAでプレーした時はバスケを観ていなかったので、私にとっては渡邊雄太が初めてリアルタイムで観る日本人NBAプレイヤーだった。グリズリーズに入団して、当時サンダーにいたポール・ジョージとマッチアップした時は感動した。こんなに有名な選手と日本人が一緒にプレーしてる姿なんて、渡邊雄太がNBAに行くまでは想像すらできなかった。
ラプターズの渡邊雄太も大好きだ。チームのシステムを完璧に理解するスマートさと、クタクタになるまでコート中を走り回る泥臭さで、ニック・ナースHCの信頼を勝ち取った渡邊雄太。ニック・ナースはDFやチームプレーにかなり厳しいコーチだったので、そんな彼に渡邊雄太が評価されたのは嬉しかった。
アンソニー・エドワーズをブロックしようとしてポスタライズダンクをされ、世間の注目を集めてしまったこともあった。当時の海外からのコメントは酷いものだった。でも渡邊雄太は「100回の内99回ダンクをされても、1回ブロックできるのならブロックに飛ぶ」と言った。かっこよすぎる。そんな台詞、用意してきても言えるもんじゃないよ。
ネッツに移籍した後、ラプターズでもアピールしてきたDF力を発揮しつつ、スリーポイントで貢献しはじめた時は「これが渡邊雄太がNBAで目指すべき最高の形だ」と思った。3ポイントの成功率がNBA1位に浮上し、KDが渡邊雄太にパスを供給しようとコートを探していた(ように見えた)時はさすがに笑ってしまった。そんなことってある!?
そしてサンズからついに念願の複数年契約を勝ち取った。ここまで積み重ねた努力、実力、信頼の証の、2年契約。あまりに嬉しくて、サンズのユニを着て渡邊雄太を応援したくて、私は渡邊雄太の背番号も決まらない内からユニフォームを買ってしまったのだった。
どこのチームでどの一瞬を切り取っても、渡邊雄太は全部がかっこよすぎるし、全てが夢みたいだった。どうしてこれほどの努力を続けられるんだろうと、ずっと思っていた。NBAの世界は本当に厳しい。レブロンやカリー、ドンチッチのようなスーパースターが目立つが、その影には数多くの、日の目を見ずに去っていく選手がいる。解雇、トレードなど日常茶飯事の世界だ。渡邊雄太の境遇を考えれば、全ての時間がアピールタイムで、ひと時も気を抜けないことなど、火を見るより明らかだった。渡邊雄太のNBAキャリアのどこを振り返ってみても、簡単なことなど一つもなくて、渡邊雄太が常に全力で道を切り拓いてきたから、あの夢みたいな瞬間があったのだ。
私はこれは渡邊雄太の才能なんだとも思っていた。ずっと渡邊雄太は笑顔だったし努力を一時もやめたりしなかったから、私は浅はかにも「渡邊雄太はこのプレッシャーさえも楽しんでいて、これがスタンダードなんだ」と思ってしまっていた。そんなことは全然なかった。極限まで自分を追い込んで、あのパフォーマンスを出していたのだ。どうしてそんなことが出来たんだ、ユータ。凄すぎて私には全く想像もつかないよ。
渡邊雄太の告白は、私にとって二つの救いとなった
渡邊雄太の告白は、私にとって二つの救いとなった。
私も仕事でメンタルの調子を崩してしまったことがある。当時の私は休むことがとても怖かった。今でも怖い。そもそも調子を崩したこともうまく受け入れられていなかった。そんな私にとって渡邊雄太の告白は「私のめちゃくちゃ尊敬するユータも調子を崩してお休みすることはあるし、私だって大丈夫だ、休んでもいいんだ」という、お守りになった。これはかなり強力なお守りだ。心が沈んでしまう時にサッと取り出している。ユータはそんなつもりで告白したかは分からないけど、私にとって大きな救いとなる告白だった。そしてとても勇気のある告白だとも思う。心のことは、自分で取り扱うのも周りに伝えるのも本当に難しいから。
もう一つの救いは、ユータがバスケを好きでいてくれたことだ。
私は調子を崩したことをきっかけにその仕事は辞めた。もともと望んでその仕事を始めたけど、もう二度とやりたくない。そしてこれはどうしようもないことだと思ってる。だから、ユータがもしバスケを辞めたいと言い出したとしても、それも仕方ないなとも思っていた。当たり前だけど、ファンにそれを止める権利などあるはずもない。ユータの人生だ。
でも、ユータはバスケが好きだと言ってくれた。バスケが好きだから、バスケのできる環境に行きたいのだと。もっとバスケがしたい、楽しくやりたいのだと。ユータがバスケを嫌いにならなくて、好きでいてくれて本当に良かった。私もバスケが、ユータのバスケが好きだから。これからもユータのバスケを見られることが、何より嬉しい。
ユータに貰ったものは大きすぎて返しきれないけれど、せめて心から祈らせて
ユータ、NBAの挑戦お疲れ様でした。NBAにいるユータを応援できて夢みたいに楽しかったし、やめると決めたユータの気持ちを正直に話してくれて、バスケを好きでいてくれて、本当にありがとう。ユータが私にくれた感動や勇気は大きすぎてとても返しきれるものじゃないけれど、ユータの選んだ道を応援しているし、ユータが健やかにバスケを楽しめるよう心から祈っています。