お久しぶりです、はじめまして。
この前稽古場で役者のWさんに
「お久しぶりです。1年ぶりですね?お変わりないですか?」
と挨拶したら、
「体の細胞はどんどん死んで新しい細胞できるだろ?
垢とかフケになって流れていくわけだよ。
前回会った俺とお前は、きっともうここにはいねえぜ?
でも見た目は変わんねえよな?
記憶とか心は続くんだぜ。不思議だよな。久しぶり」
と返ってきた。
Wさんはどう見てもWさんなのだけれど、
1年前のWさんだと認識していた「皮膚」や「髪」や「爪」は「別のもの」になっているわけだ。
今こうして喋っている「声」だって、
「声帯」の細胞は新しいものになって
1年前とは別の楽器から鳴らされているのだ。
「いらっしゃいませーーーーーー」
近所のコンビニで最近見るようになった店員のお姉さんは語尾が伸びがち。
前から来ているこのコンビニだって、
スタッフも商品も日々入れ替わって、「細胞」が入れ替わっているのだ。
僕が去年「美味しそうだな」と思ったおにぎりはこの世にはもうない。
世界は日々生まれ変わって、新しい細胞が出来続けているわけだ。
今日目覚めた僕は昨日の僕じゃないって事だ。
何かが死んで、何かが生まれて、「今日の僕」が続いていく。
蝉が鳴かなくなったなと思ったら金木犀のいい匂いがして、駅前にムクドリの大群がやってきた。
世界も生まれ変わっていく。
毎日誕生日で、毎日が人生最後の瞬間。
そう思ったら今日もスペシャルになりそうです。
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