ラブレター

ここに、君が居たらなあ、と思う。

その続きに なにがしたい、とかは思い浮かばないのだけれども。

ここに、君が居たらなあ。

それだけで、今すぐに眠れてしまうような、安心感が、ある。
それだけで、毛布になんて包まらなくてもいいくらいの、ぬくもりが、ある。
それだけで、いい香りのスプレーなんていらないほどの、幸福感に、包まれる。

君が 居てくれたらいいのになあ。

今きっとわたしは、不思議な世界を生きている。

街ゆく人々はみなマスクをしていて、
コンビニやスーパーのレジには 透明のフィルムが吊り下がっている。
人と人の手は 触れ合ってはいけなくて、
あちらこちらに貼り紙が ある。
　
テレビはどのチャンネルも画面が狭く、
青いＬ字の帯には 不穏な文字列が、
　
SNSは、以前より 刺々しくなった。

この先も、生きて、幸せを感じるためには、
今を 耐えなければならない。

君と 来年の桜を見るために、
今年の桜はあきらめた。

コミュニケーションのほとんどは
画面越しになった。

ここまでちゃんと君の顔を見て話したことはなかったなあ とか思ったりした。
　
笑顔を切り取って残しておけるのは、良い。

でも、ただ、言葉などは要らず、
抱き締めてほしい、それだけのことが
できない。
　
くちびるを 重ね合わせて伝えていた愛が 伝えられない。

だから、ちゃんと、言葉にしよう。

会いたいよ。寂しいよ。
でも愛しているから 会わないよ。

大好きだよ、ずっと想っているよ。
　
今度会えたら たくさんたのしいことをしよう。

だからちゃんと、元気でいてね。