コロナの3年間がいずれ野次文化を排除する
つい先日の交流戦の時期、スタンドからの応援を巡って物議を醸す出来事が立て続けに3件起きた。
それぞれ、ロッテの牽制ブーイング、西武の働けコール、阪神のあと1球コールであり、詳細はリンクの記事を読んでいただければと思う。この場では是非についての言及は脇に置き、なぜ今になって注目を浴びることになったかを考察してみたい。
まず、この3件に関して共通しているのは、昨日今日唐突に始まったわけではないということ。ロッテの牽制ブーイングは遅くとも2000年代には行われていたし、「働けコール」は西武応援団に限らず、不甲斐ない選手に対する、ポピュラーなコールである。「あと1球コール」については言わずもがなである。
ひとつは選手への誹謗中傷や野次を忌み嫌う風潮があるだろう。特例的に使われている一部を除き、12球団でいわゆるアウトコールが絶滅したのも、この影響が強い。
(余談だが、昔のオリックス・ブルーウェーブの「あなたも私も紅茶っちゃ~♪(中略)帰りたいのに帰れない~♪」や、日ハムの「月火水木キン肉マン~♪」のアウトコールが相手チームながらに好きだった。近鉄のも渋くて良かった。)
そしてもう一つの理由としては、こちらの方が大きいと思うのだが、コロナの影響で2020~22年の3年間、声出し応援が出来なかったことが相当に影響しているのではないだろうか。この3年の間に新たにプロ野球に触れ、ファンになった層にとっては、無観客試合や録音の応援歌を流す応援がスタンダードであり、応援団の生のトランペット演奏やファンによる声出し応援は全くの未知の文化なのだ。これまでの「当たり前」を知らない層が、牽制球に対する執拗なブーイングや、選手個人を名指ししての「働け」コールにはじめて触れ、嫌悪感を抱くことは想像に難くない。また、コロナ前からのファン層の中にも、この3年間で社会が疲弊していく中、かつては当たり前だったこれらの文化に対しても「そんなのはもういい。楽しく野球が見たい」と考える人は少なからずいるのではないか。想像するに、今後はアウトコール同様、好むと好まざるとにかかわらず、加速度的に排除されていくことになるだろう。
個人的には関西圏だけでも、「〇〇電車ではよ帰れ~!」の「電車野次」や、オリックスの「はよやれ」コールが時代の遺物として残ってほしいと考えるが…
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