初めて画廊で絵画を買った話
画廊へ足を運ぶに至るまで
最初に断りを入れておきますが、決して「無理やり展示会に連れ込まれて、クリスチャン・ラッセンの版画を法外な値段で売りつけられた」とか、「エウリアンに言葉巧みに高額ローンを組まされた」といった冒険譚ではありません。あくまで真っ当に商いをしている画廊で、真っ当に絵画を購入した話です。
さて、あなたは画廊という場所に足を踏み入れたことはあるでしょうか。昨年秋に初めて敷居をまたぐまでは、私にとっては仏具屋や競艇場と同じレベルで縁遠い、未知の場所でした。画廊という場所を初めて認識したのは、たしか小学生の時に読んだ「うわさのズッコケ株式会社」だったと記憶している(が、いかんせんうろ覚えなので、間違っていたらごめんなさい。)ものの、家族で画廊を訪れるような家庭環境でもなく、生まれてこのかた足を運ぶことはありませんでした。首都圏近郊の教養と資産のある家庭だとか、数代続く京都の名家とかだと、幼少期から連れられてくるんですかね?よく知りませんが。
そんな私が画廊に足を運ぶことになったキッカケが、山田五郎氏のYouTubeチャンネル。
もともと盟友みうらじゅんとの「本当はカッコ悪い70年代」「男同士」「親爺同士」シリーズなどで親しみがあったことや、美術館での絵画鑑賞は好きだったことから、割と頻繁にYouTubeチャンネルも眺めていましたが、動画内で「絵を見に行くのもいいけど、画廊でアートを買ってみるのもおススメだよー(大意)」という話があった折に、「なるほど、そういうのもあるのか」と井之頭五郎ばりに新たな選択肢の発見があり、比較的自宅から交通の便が良い銀座の画廊に足を運ぶことになったわけです。
初めての画廊、そして購入
初めて画廊を訪れてみて、まず感じたのが、ここはゆっくりと絵画と対峙する空間であること、それが何よりの実感です。通常、1~2組のお客さんがいる程度なので、美術館の企画展などとは比べ物にならないくらい、じっくりと作品に向き合える。そして、スタッフの方も控えめで、時折さりげなく作品や作者の解説を挟んでくれる。無論、冒頭で記した悪質な絵画商法のような強引なセールストークは一切なし。初めて画廊を訪れた帰り道は、言いようのない充実感に満ち溢れていたことを、よく記憶しています。こんな場所があったのか、と。
とはいえ初回の来訪で購入を即決するほどの胆力があるはずもなく、購入に踏み切ったのは3回目の来訪でした。初めて訪れた際に見た藤田嗣治の複製画が忘れられず、3度目の来訪時にダメ元で確認してみたところ、ちょうど在庫として保管されており、めでたく購入の運びとなりました。
購入した作品は、自宅に届いたその日から自室に飾っています。正直、この作品がアート的な見地からすぐれた作品なのか、良い買い物かは分かりません。(複製画なので、将来価格が高騰することはまず無いと思います)
そんなことよりも、自分が心底気に入った作品が生活の中に溶け込んでいることへ、何よりも喜びを感じます。なので、「アートのある生活」という言葉の持つどことなくいけ好かない感じは理解する一方、いざ実際に作品を飾ってみたときに、「なるほどな」と感じる部分もあったり。
思えば最初に画廊を訪れたのは、ほんの些細なきっかけからでしたが、結果として生活に少しの彩りが加わることになった…という話でした。
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