「THE NOAH’S REGENERATION」をレビューしてみる
はじめに
3/29に発売された「THE NOAH’S REGENERATION」。いわゆるエントランステーマ曲集の新譜で、自分も先日購入してから何度も聞いているのだが、これが過去のアルバムと比較しても実に良いのだ。曲ごとのメリハリがあって、聞き出すとつい頭から最後まで聞いてしまう魅力ある作品に仕上がっている。折角の名盤ということで、収録曲について腰を据えてレビューを書いてみたい。ここ最近はアート系の話題が続いていたけど、プロレスといえど音楽の話題でもあるので、まあ広義のアートと言えるでしょう。
1.プロレスリング・ノアのテーマ「BRAVE~2021ver.」
大会開始前、本日の対戦カード発表のBGMとしておなじみのテーマ曲。プロレス団体そのものを象徴するテーマ曲としては、UWFのテーマやみちのくプロレスの「インテグラルハード」、新日本プロレスの「The Score」あたりが有名だけど、いずれもシンセサイザーサウンドが核となった楽曲で、ギターサウンド中心にまとめあげた「BRAVE」はその点で差別化が図られているのかも。
2.清宮海斗のテーマ「REGENERATION」
前エントランステーマの「Explosion Soul」が清宮の爽やかさにフィーチャーし、明るい未来を想起させる楽曲であるとすれば、今作は敗北、挫折、再起を内包した、より多元的でドラマティックな曲に仕上がっている。メロディラインはシンプルながらもキャッチーで耳なじみがよく、中毒性を秘めている。余談だが、イントロ最終盤のガラスの割れるSEは、武藤敬司の「Trans Magic」からのフィーチャーだろうか。曲名のRegenerationは、再建、復興、復活、改革、刷新といった意味。
3.AMAKUSAのテーマ「advent」
天草四郎、隠れキリシタンのイメージをギミックとしたAMAKUSAらしく、宗教的かつ神秘的なイントロから始まるが、一転して憂いを帯びながらも疾走感のあるメロディーラインが心地よい。シンセサイザーとストリングスを核としながらも、要所ではギターとベースが引き締める。そしてさりげなく登場する和楽器の音色が、過去のキャリアを想起させる。曲名の「advent」は、出現、到来、キリスト降臨(こうりん)、降臨節、待降節、キリストの再臨といった意味で、AMAKUSAのキャラクターを反映している。
4.ニンジャ・マックのテーマ「Sound of NINJA」
大作が2曲続いた後で、一転してチープなゲームミュージックを彷彿とさせる一曲。忍者とは全くそぐわない雰囲気だが、そういえばファミコンのソフトに「忍者龍剣伝」ってあったよな…ということをふと思い出させてくれた。箸休めのチェンジオブペースとして。
5.ティモシー・サッチャーのテーマ「交響曲第9番ホ短調「新世界から」-第4楽章[抜粋]」
クラシック調ではなく、本物のクラシック。それもシンセサイザーの打ち込みではなく、大阪フィルハーモニー交響楽団の演奏が収録されてしまった。通常、サッチャーの入場時は有名な冒頭部までで終わってしまうが、いつの日か楽曲のフィナーレ部分まで聴くことはあるのだろうか。それがタイトルマッチの試合後なんかであれば、やたらと感動的な場面になりそうだが。
6.イホ・デ・ドクトル・ワグナーJr.のテーマ「LEGADO」
メキシコ人のルチャドールらしく、ラテン系の楽器をフィーチャーした一曲。哀愁漂う美しいメロディーラインに仕上がっており、ワグナーの選手としての風格、威厳を高めるのに一役買っている。会場で聞いているときは分からなかったが、実はベースラインがやけにカッコいい。曲名の「LEGADO」はスペイン語で、遺産、伝説、レガシーといった意味。名門ルチャドール一家の血筋を表現していると思われる。
7.クリス・リッジウェイのテーマ「equalizer」
ラテン調から一転、今度はHR/HM系の激しい一曲。クリスの冷酷さを前面に押し出したかのような曲調で、イントロからとにかくカッコいい。間奏のギターリフは、どこか関本大介の「CROWN OF WINNER」を彷彿とさせる。曲名の「equalizer」は、平衡装置、野球の同点打といった意味を持つが、俗語として銃の意味もあるらしい。
8.藤田和之のテーマ「wild beast」
藤田和之のエントランステーマといえば、「炎のファイター オーケストラバージョン」が有名だが、CD発売決定のタイミングで(?)、新たなテーマ曲が作られた。クリス・リッジウェイのテーマに続きメタル調だが、こちらはスローテンポ。重厚なギターサウンドが藤田と対峙する絶望感を表現しているかのよう。
9.ジャック・モリスのテーマ「Sublime Every Time」
いきなりボーカルから始まるエモーショナルなロックサウンド。スコットランドの音楽事情には全く明るくないけれど、モリスがスコットランド出身ということもあり、ひょっとしてスコティッシュ・ロック(というジャンルがあるのかも分からないが)をフィーチャーした曲なのだろうか。曲名の「Sublime」は荘厳な、崇高な、雄大なといった意味であり、常にグッドルッキングでかつ雰囲気のあるモリスにふさわしい。
10.ジェイク・リーのテーマ「戴冠の定義 新章」
プロレスエントランステーマの大御所、鈴木修先生の作品。唯一無二のコード進行とシンセサウンドは、聴くだけで作曲者を想起してしまう稀有な存在感。やはりエントランステーマ曲集には、最低1曲は鈴木作品が居てくれないことにはどうにも収まりが悪い。作品の雰囲気としては小橋建太の「GRAND SWORD」や志賀賢太郎の「TRADITION」に近いものがあるかな。
11.稲村愛輝のテーマ「OTAKEBE…!」
スクウェアエニックスの時田貴司とゴールデンボンバーの喜矢武豊がタッグを組んだ異色の作品。冒頭、喜矢武の「お〜た〜け〜べ~!」というボーカルから始まるのだが、全体を通じて妙に声量に乏しい。何とか出来なかったのか、PA。歌詞には無双やGEKITOTZといった稲村のシグネチャームーブが散りばめられており、まさに稲村のためのエントランステーマ。
12.大原はじめのテーマ「creencia」
打ち込み系の都会的な楽曲。大原のテーマと言えば「たたかえ!ムイビエン!」を筆頭に、印象に残る曲が多いけれども、この曲はややおとなしめかな。曲名の「creencia」は、スペイン語で信念の意味。
13.宮脇純太のテーマ「halcon」
引き続き打ち込み系だが、こちらは疾走感のあるユーロビート風。第一印象は「新日本っぽい曲」。NOAHのエントランステーマでユーロビートといえば、丸藤正道の「HYSTERIC」の名前が一番に挙がるが、このテーマも同程度の印象を残せるまでに出世してほしいところ。曲名の「halcon」は、スペイン語で鷹の意味。
14.アレハンドロのテーマ「aleja2」
前2曲とはうってかわって、ギターサウンドが前面に出てくる骨太な曲。改めて聞いてみると、ハイフライヤーのマスクマンであるアレハンドロっぽくないかも。
15.モハメド・ヨネのテーマ「Let‘s Funky」
いきなりのホーンセクションから始まる'70年代ディスコミュージック風の楽曲。ファンキーエクスプレスらしく、前テーマであるアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「Boogie Wonderland」の延長線上にある雰囲気かな。
16.小澤大嗣のテーマ「Dream Catcher」
若手選手らしくシンプルかつストレートなギターサウンドを押し出した一曲。同じく若手の矢野のテーマと比べると、よりどっしりとした重厚感が印象的。ゆくゆくはヘビー級で戦うであろう小澤の未来を暗示させてくれる。
まとめ
というわけでボーナストラックの2曲を除いて、レビューを書いてみた。改めてアルバムを通しで聞いてみて、正統派のテーマもある一方で、クラシックにゴールデンボンバーにディスコサウンドにと、ジャンルの幅広さを実感。音楽的な専門知識はほぼほぼ無いので、表現、内容の不備はご容赦頂ければと思う。
今回のアルバムには残念ながら収録されなかったが、NOAHに定期参戦している他団体・フリーの選手たちにも珠玉のエントランステーマを持つメンバーが何人もいる。今後はそれらを収めた新譜が発売されることを心待ちにしたい。
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