おじいちゃんフロントの対応力
週末、息子のサッカー進路でとある地方都市にきている。練習開始時間が早いので、夜中に車で出発すれば間に合うものの、そこのコストを渋ってプレイのパフォーマンスが落ちたら意味ないな、と前泊を選択。
三連休ということもあり、なかなか手頃なホテルはなく、ふつーの、新しくもキレイでもないビジネスホテルに落ち着いた。チェックインの際、フロント対応をしてくれた男性二人は70代のおじいちゃんだった。
あー、なるほど。こういう業務もシニア活用してるんだな。
今日もチーム練習はあり練習終わりにそのまま出発し、4時間程度のドライブを終えてチェックイン後、「とりあえず洗濯」とコインランドリーを使うと、洗濯機が故障している。
こまった。明日の高校の練習参加には、チームの移動着で参加したいのだが。
そこで、
あのー、コインランドリー使わせてもらってるんですけど、ぜんぜん、洗濯槽が回らなくて、壊れているのかもなんですけど。
・・・と、フロントに相談に。
あー、そうですか、おくいらお金入れられましたか? 300円ですか。
(くるっと振り向いて金庫から小銭を取り出して)
すみません、まずはこちらをご返金させていただいて。
何階のコインランドリーですか?
7階。
私一緒に見に行きますね。
4階にもあるので、そちら使ったほうがいいかもですね。
と、何も質問も確認もなく、まずはお金を返してくれて、現場を見に行ってくれ、洗濯途中の洗濯物を一緒に取り出して、ビニール袋を用意してくれ、4階のランドリーに案内してくれて、洗濯は無事に終わった。
そして、外に食事に行ってから部屋に戻ってきたところ。
古いホテルなので部屋の鍵にスティック上のものがついていて、それを入ったすぐの電源スイッチのところに差し込んで、部屋全体の元電源がオンになる、という仕組みの部屋なのだが、そのスティックに手があたって折れてしまい、スティックが中途半端にしか刺さらない状態になってしまった。
オンオフが、チカチカと切り替わるような状態で不便なのもあるけれど、スティックを追ってしまったのはこちらなので申し訳ないな、と思いながら、またフロントに。
ランドリーの相談をしたおじいちゃんフロントがいて、折れた鍵のスティックを見せながら、すみません、実は、と事情をお話すると。
あー、よく折れるんです。劣化してるんです、僕と同じで笑
電気はつきますか?ついてればそれでいいんですけど、見に行きますね。
と、部屋に来てくれ、とりあえず、反対側の鍵部分をぐいっと押し込んで部屋の電源は確保して、事なきを得た。
あとは明日、修理に来てもらいますので大丈夫です、ご不便おかけしてすみません。
いえいえ、折ってしまったのこちらなのに、すみません。
そんなことないです、劣化してるんです。よく折れるんです。大丈夫ですから。
と、おじいちゃんフロントは帰っていった。
コインランドリーにせよ、鍵のスティックにせよ、もともと故障しがち、というコンディションではあったものの、「壊れた」「使えない」という状況になったときのお店側の対応として、「原因として、あなたの使い方どうやったん」という気持ちを0%にすることは、ちょっと難しいんじゃないかな、と想像する。でも、このおじいちゃんフロントからは、1ミリもそんな気配を感じなかった、100%ホテル側が悪くて、私が悪いと思われているとは、1ミリも感じなかった。
なんか、これってすごいことだな、と思う。
一般的に言って、「中高年の男性」というのは、基本的には正しくて偉くて間違っていない風の態度を取られる方が多いように思う(半分決めつけてる感もあるけれど、フロントおじいちゃんの対比として許してほしい)。
まさしくその年齢層・性別の属性で、でも、そういうことを1ミリも感じさせない対応ができる、というのがすごい。
実は洗濯機トラブルの時、私はイライラしてたのだ。
夕食のレストランの予約までに30分しかないなかで、コインランドリーの洗濯をやり直すというのは、予約に間に合わない可能性があり、「え? 故障してる?」と気付いた瞬間、300円じゃなくて時間が惜しい気持ちがあった。クレーム気分がむくむくしてたのだ。いやいや、間に合わないやん洗濯。どうしてくれんねん、みたいな。
でも、相談に行ったおじいちゃんフロントが、何も言わずにまず返金、次に様子を一緒に見に行きましょうと行動を取ってくれたことで、私のクレームマインドは、一気にゼロレベルになってしまった、まあ、予約時間少しぐらい過ぎたところで、入れなくなることもないし、と。
勝負の勝ち負けって、意外なところで決まる。
もちろん、これは勝ち負けじゃないけど、強い態度で出ないことで、おじいちゃんフロントは優勝だし、私も、負けた気分はゼロなので優勝。
こういう対応を、こういう属性の人ができるっていうのは、良いことだと思う。