
『本日は、お日柄もよく』を読んで。良い言葉を浴びる。
友達が「1年で100冊読むぞー」とSNSで宣言していて、あ、コレはのっかろう!と思い「わたしもー!」とコメント。1年で100冊ということは平均すると3.6日で1冊。ざっくり1週間で2冊読めればいいってことか…などと考えながら、1年後を考えると気が遠くなるので、普通に読んだものをカウントしていって、何冊ぐらいになるのか記録してみよう、と思った。
もうしばらく、原田マハさんが続きます
アート3作の後の『風のマジム』に続き、またまたコメントでオススメされてた『本日は、お日柄もよく』。これはね、すごい本だった。刊行は2010年と、『風のマジム』と同じながら、登場人物たちが、ぐっとアート3作の人たちに近づいてきた感。主人公の「こと葉」ちゃんこそ、まだ、まじむに近い天然キャラながら、スピーチライターの久遠久美、ライバルから伴侶となった、和田カマタリあたりは、『暗幕のゲルニカ』の八神瑤子、『楽園のカンヴァス』の早川織絵に、つつつっと近づいてきた感があった。なんか融合している感じで、面白かった。
スピーチが読みたくて、本を読み進めた
敏腕スピーチライターの久遠久美、自分の特性に無頓着な天然キャラでスピーチライターを目指す、主人公のこと葉、政治から企業再生までを「言葉」のチカラで牽引する広告代理店のコピーライター和田カマタリ、3人の「言葉を使って人の心を動かす達人たち」が、物語の要所要所で、実に良い「スピーチ」を書く。もちろん、物事の進展や結末は、いったいどうなるのだろう?という物語でも読ませるが、結婚式の披露宴、会社の周年式典、お葬式での弔辞、国会の代表質問、選挙演説などの場面で出てくる「スピーチ」が、もう読みたい。物語が進んでいくと、「あ、この後、選挙演説のシーンだな、そこでスピーチがあるから、次の章あたりでスピーチ全文出てくるな」と予測ができるので、物語の進展も気になるけど、その「スピーチ」を読みたくてページを捲り続けた感があった。いや、スピーチを読みたい、というか、スピーチの初っ端、最初の一言を知りたい、そのフレーズや、選ぶ言葉を浴びたい。そんな感じ。
そう、「知る」とか「読む」とかではなく「浴びる」感じ。伝えるメッセージが明確で、選ぶ言葉が的確で、でも、意外性もあって、だから、「あぁ、この一言、この言葉を選んだのか」と、感動してしまう。何度も読みたくなる言葉なのだ。
本を読む、小説を読む、という行為で、これほど「言葉」そのものに癒やされた、と感じたのは初めてだと思う。ストーリーの内容とか、キャラクターへの感情移入とか、そういう感動をしたことはたくさんあるけど、「この状況のこの人の、こういう目的のスピーチで、この言葉を選ぶのか!」ということに引き込まれたのは初めてのように思う。面白い感覚を味わった作品だった。
(めちゃくちゃ心が動いた、言葉の一節だけ、引用します)
困難に向き合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。2日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。
2025年の100冊 004/100