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苦しいときをともに過ごしたからこそ
6年間一緒に戦ってきた選手の移籍がリリースされた。
2024最終節が終わった直後の様子やセレモニーでの「キャプテン引き継ぎ」の突然の発表など、覚悟はしていたけれど寂しい。
いちばん脳裏に濃いのは、初タイトルの天皇杯でも、初のACL出場でも、2023リーグ初タイトルでも、今年の天皇杯、リーグ二連覇でもなく、2022シーズンの天皇杯で、鹿島に負けた後の出来事だ。
2022は、とても苦しいシーズンだった。前年、リーグ最高位の3位で終わり、二度目のACL出場権を勝ち取ったチームは、たぶん、想像以上の過密日程に苦しんでいたのだと思う。だからリーグ戦はうまくいってなかった。この年、特に前半は、毎節毎節、勝てなくて、うまくいかなくて、辛かった。しょんぼりと肩を落として帰ることが多かった。このままいくと、ACLで勝ち残ってるのに降格してしまうんじゃないか、また、いろいろと揶揄されるのだろうかと思うと、本当に辛かった。
私なんかでそんな気持ちなのだ。選手の気持ちはたまらないものがあるだろう。
連戦に次ぐ連戦。リーグ戦、カップ戦、天皇杯、ACLと続くなか、水曜日開催の天皇杯ラウンド8。主力選手をベンチに置いてのスタートで、後半途中からの投入も間に合わずの敗戦だった。負けはもちろん悔しかったけれど、このときリーグの順位は17位の降格圏內で、だから、優先順位をリーグに置いて、天皇杯のターンオーバーでの負けは、納得の行く人も多かったのではないだろうか。
試合が終わり、負けた悔しさと疲労感と、混雑を避けるためにしばらくスタンドでぼーっとしていると、後半80分すぎに出場した蛍がコンディション維持のために、ピッチ上をダッシュし始めた(ベンチ選手が、試合後に体を動かすためにこうして走ることはよくあります、いわゆる罰走的なものとは違います)。
スタジアム內は、すでに帰ったお客さんの方が多く、人はまばらで、うっすらと流れるBGMを聞きながら、走る蛍と、蛍に向けて送られる拍手を音を聞いていた。あー。蛍悔しいだろうな。
自分が出て、走りきって、倒れ込んでの負けじゃない試合って、めちゃくちゃ悔しいだろうな。
どのぐらいだったろう、たぶん4〜5往復のダッシュを終えた後、蛍はゴール裏に走っていき、何やら話をし、胸をトンとたたき、手を挙げて、そしてまた走り始めた。ゴール裏のサポーターたちも、わかった、というように返事をし、手を叩き、蛍を送り出していた。
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後から、ツイッターで投稿されてたのを見て知ったのだが、蛍はこの時、ゴール裏に向かって「どんなことをしてでも残留するから信じてくれ」と声を掛けたのだそうだ。私も見ていた。私の席からは、声は聞こえなかったけれど、何かを話し、ゴール裏が応え、また蛍が走り始めたのは、よく覚えている。そういうやりとりがあったのか、と後で知った。
(調べて加筆。9月7日(水)の天皇杯敗戦の後は、土曜日ホームの名古屋戦をスコアレスドローで引き分け、その後5連勝して12位に浮上した。ガンバ戦で勝って残留を決めたのも思い出深い。最後2節は落としたが、13位でフィニッシュした)
私にとっての蛍のベストシーンは、このダッシュかもしれない。FC東京戦、広島戦、C大阪線のミドルシュートは想い出深い。一緒に初タイトルを獲った名古屋戦も良い思い出だ。ああそうだ、蛍が移籍してきたシーズンの開幕節は、アウェイC大阪戦だった。しかもヤンマーの金Jだった。仕事を終えてすぐに向かって、なんとか前半途中に間に合ったのだが、すると、サポーターたちは蛍のチャントをもう作っていて、歌っていた。
向こう側からは、(当然ながら)すごい音量と勢いでブーイングが飛んでくる。それを見越して入団が決まった瞬間にチャントをつくり、応戦した神戸サポーターたちは粋だと思う。
試合は負けてしまったけれど、私たちゴール裏は、蛍を向こうのブーイングから守ることと、しっかり私たちが守っていくよ、ということを伝えたくて必死だったと思う。そして、それはしっかり伝わっていたんだと、今日の蛍のインスタを見てわかった。嬉しかった。
これまでもいろんな選手が移籍していき、そのたびに心が乱れて辛い気持ちになるけれど、私の基本方針は変わらない。対戦するときが来たら、こうなってほしい。
試合前は拍手で迎える。
蛍にも輝いてほしいが、それを上回る活躍を自チームの選手がする。
点を決められても、ブロックされても仕方がないが、それを上回る結果を残させてもらう。
思う存分活躍してくれてOKだが、勝利はこちらがいただく。
そして終われば試合前以上に拍手を送りたい。チャントも歌いたい。
蛍にもゴール裏に来てほしい。
蛍が良いプレイをするほど、こちらの選手が成長できる機会になる。
とはいえ、寂しい。
当たり前のように見ていたあの姿は、もう見られない。
寂しいなぁ・・。。